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きょうの社説 2009年4月7日
◎海外誘客10倍増構想 スピードある国際化が必要
石川県が二〇一四年までの達成をめざす「海外誘客十倍増構想」の取り組みが今年度か
ら本格的にスタートした。県が打ち出した数字は、伸び率では政府の訪日外国人旅行者の目標などを大きく上回っている。その意気込みはよいとしても、実現へ向けて重要なのは、他県以上のスピードで「地域の国際化」を進めることである。それなくして目標の達成はおぼつかないだろう。県は当初、〇三年に年間五万人だった外国人宿泊者数を一四年に十五万人に増やす目標 だったが、〇七年に早々と達成したため目標を十倍増の五十万人に引き上げた。一カ月当たり四万人超となる。 このような大きな数字を立てたからには、具体的なイメージを県民が共有できるよう、 実現への道筋とともに、そのときの在るべき姿を示してほしい。県の観光推進組織は観光交流局の中に国際交流課を擁するのが強みである。そこが中心に進めている「県国際化戦略プラン」との相乗効果を引き出す視点も大事である。 世界経済フォーラムの〇九年版観光競争ランキングで日本は二十五位にとどまり、外国 人に対する「親しみやすさ」では百三十三カ国・地域で百三十一位と厳しい評価となった。日本語が外国人の障壁になっているのが大きな理由だが、それは石川県も同様である。 県がこれまで掲げてきた「観光立県」は主に国内観光客を対象にしたものであろう。そ れを「国際観光立県」に変えていくには、ハード、ソフト両面で受け入れ体制を総点検する必要がある。外国語ガイドの養成をはじめ、案内標識、マップ、レストランのメニューなど改善すべき点は多々ある。留学生や在住外国人の知恵も借りたい。 海外誘客は地域の魅力度は言うまでもなく、情報発信力が大きなかぎを握る。国別のニ ーズを見極め、それに応じて他の地域との違いを際立たせ、相手の心をつかむ明快な売り言葉も必要だ。 県民が他の国に関心を持ち、文化や宗教、風俗習慣などを理解することも大事である。 観光関連事業者だけでなく、そうした県民が増えてこそ、本当の意味での国際化といえる。
◎胸張れない一等米比率 北陸産地の競争力が心配
北陸三県のコメの一等米比率が、ここ十年間で一度も上位十位に入っていないという北
陸農政局の検査結果は、「米どころ」として寂しい限りである。消費者にとってコメは食味も大事であり、一等米比率だけでコメ産地の全体評価が決まるわけではないにしても、主産地として胸を張れない状況が続くと、北陸産米のブランド力、競争力が低下することになりかねない。地球温暖化も含め、いろいろな原因が複合的に影響しているとみられるが、一等米比率 を高いレベルで安定的に維持するため、営農指導や栽培技術、品種改良に一層努めてもらいたい。 北陸農政局が二月末時点でまとめた二〇〇八年産米(水稲うるち玄米)の一等米比率は 、富山87・1%、福井86・5%、石川82・5%で全国順位はそれぞれ十四位、十五位、十七位となっている。ベスト10に何度も名を連ねていた一九九八年以前に比べると低迷していると言わざるを得ない。 コメの食味ではひけをとらないという声も聞かれるが、消費者にとって一等米比率は産 地評価の分かりやすい物差しであり、現状に甘んじていては、厳しい産地間競争に遅れをとってしまおう。 コメの品質に影響を与える要因として気象条件や病虫害、肥培管理技術などが挙げられ る。その中で近年、地球温暖化と絡めて問題視されているのは、稲穂が熟する「登熟期」に猛暑に見舞われ、米粒の白濁化など品質が急激に低下するケースが多いことだ。 こうした高温被害回避のため、例年、五月のゴールデンウイークの田植え時期を五月十 日―十五日ごろに繰り下げ、コメの登熟期と高温期が重なるのを防ぐ方法が広がってきている。北陸では富山県がいち早くこの取り組みに本腰を入れ、品質確保につながっているという。兼業農家の多い北陸で稲の遅植えを広げるには、勤務先の理解と協力が欠かせない。 また、中生のコシヒカリ一辺倒のリスクを分散する工夫や、中長期的取り組みとして、 温暖化に対応した新品種の開発にも一段と力を入れてもらいたい。
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