「犯人が逮捕され、ようやくほっとできる」。京都府舞鶴市の府立高校1年、小杉美穂さん=当時(15)=殺害事件で、舞鶴署捜査本部が7日、殺人、死体遺棄容疑で同市の無職、中勝美容疑者(60)を逮捕したことを受け、地元住民の間にはひとまず安堵(あんど)感が広がった。だが、地元の小学校では、事件発生から11カ月を経た今でも集団登下校が続くなど緊張感が続いており、なお不安視する声も。美穂さんの同窓生は「二度と起きてほしくない」とかみしめるように話した。
[フォト]布をかぶり京都刑務所から移送される中勝美容疑者
中容疑者逮捕への動きが報じられた7日朝、捜査本部が置かれている舞鶴署東庁舎には、大勢の報道陣が詰めかけ、近くにはテレビ局の中継車も止められるなどものものしい雰囲気に。周辺住民が遠巻きに様子を見守った。
事件現場に近い舞鶴市立朝来(あせく)小学校では、事件発生を受けて始めた集団登下校を今も続けている。畠中好野校長は「容疑者が逮捕されて、不安が解けるのでほっとする。とにかく子供たちの安全を守らなければならないと思ってきたし、今後も子供の生命を守るために全力で取り組んでいきたい」と話した。
舞鶴防犯推進委員協議会大波支部の杉田進一・支部長は「われわれは事件前から周辺で防犯パトロールをやっていただけに、まさか事件が起こるとは思わなかった。来月で発生から1年となり、時間はかかったが、容疑者が逮捕されてよかった」と語った。
だが、残忍な事件が住民らにもたらした不安は「後遺症」となって今も残っている。
中2女子と小2男児の2人の孫を持つ同市内の女性(62)は「事件後は孫の通学が心配で、夕方になると門の前で帰宅を待ちわびた。(中容疑者が)犯人なら、もう戻ってきてほしくないというのが本心です」。
美穂さんと小中学校が一緒だった府立高校1年の女子生徒(16)は、今も通学時には親に駅まで送迎してもらっているといい、「容疑者が捕まって美穂ちゃんも安心できると思うが、こんな事件はもう二度と起きてほしくない」と話した。
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■取り調べ、可視化すべきだ
事件や犯罪に詳しいジャーナリストの大谷昭宏氏の話「これまでの(京都府警の)捜査手法は極めて異例。大規模な家宅捜索で物的な確証や聞き込みによる有力な情報も得られなかった。逮捕するまでの捜査が極めて遅く、(今回の逮捕に結びつく)防犯カメラの映像解析なども有力な証拠とはいえない。状況証拠の積み重ねで逮捕できても起訴へのハードルは高く、起訴できても公判を維持するのは難しい。今後(捜査当局には)容疑者の自供が頼りとなるが、5月から始まる裁判員裁判をにらみ取り調べは全面的に可視化すべきだろう」
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■裁判員では受け入れがたい
元最高検検事の土本武司・白鴎大法科大学院長の話「逮捕状の発付は、容疑者の身柄拘束に相当の理由があると裁判官が判断したとはいえ、現在の証拠では到底有罪になるものではない。今回の捜査は男が犯人であると明白になったからではなく、逮捕を捜査のスタートにしてこれから自白を引き出したいとの狙いがあるのではないか。捜査当局にしてみれば、捜査をやり尽くしたとの判断もあったのだろう。ただ、こうしたやり方は古い日本の捜査手法であり、5月から始まる裁判員裁判では受け入れがたい捜査手法ともいえる」
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