【ローマ藤原章生】イタリア中部で6日未明に起きた地震について、地震発生前、現地の地震学者が「大地震が来る」と当局に上申していたことがわかった。学者は自家用車のスピーカーで住民に避難を呼びかけたが、「パニックを広げる」と市に自粛を求められていた。
この学者は震源地のラクイラ在住の元国家原子力研究所職員、ジャンパオロ・ジュリアーニ氏。レプブリカ紙によると、同氏は地下の岩盤から放出されるラドンガスの量で地震を予測する仮説を提唱している。それに基づき、同氏は今年2月、ラクイラ市に「住民の避難」を呼びかけていた。しかし市は騒乱を引き起こすと、警告を続けるジュリアーノ氏のホームページを閉じるよう命じていた。
一方、イタリアの災害救助隊によると、ラクイラでは1月中旬から約200回におよぶ微震が確認されている。
ロイター通信によると、ベルルスコーニ首相は6日の会見で「地震予知、対策が不十分だったのでは」と問われ、「今は救援に集中する時で、予知について議論するのは後だ」と防戦に回った。ベルトラソ災害救助隊長も「地震の正確な予知はできない」と応じた。
イタリア半島の中央を走るアペニン山脈周辺は地震の多発地帯だが、今回は、2735人の死者を出した80年の中南部エボリ地震(マグニチュード6.5)以来の規模。
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気象庁によると、情報として価値のある地震予知(起こる時、場所、大きさの予測)は、地震の予測される地域で科学的な観測が十分に行われ、岩盤の伸び・縮みなどの高感度観測装置などによる常時監視体制が整っていることが欠かせない。こうした体制が整っていなければ、直前に予知できるほど科学技術は進んでいないという。【花岡洋二】
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