2009年4月 2日

解説を書いた本 もう一冊

散る。アウト

私は仕事をわりとことわるほうだ。
「自分以外の人がやったほうが世界のためになる」
と心から思えるときは引き受けない。
フリーランスのくせに、
余裕こいた態度と思われるかもしれないけど、
器用でないので適当にこなせないのだ。
文庫解説や帯文は、
ほんとうに好きな作家のものしか引き受けない。
「義理で書いたような文庫解説」
を子供のころに読んで、
子供心に「義理で書いている」とわかったからだ。

以下、
『散る。アウト』文庫解説の冒頭部分。



   解説       枡野浩一(歌人)

『散る。アウト』……変な題名だ。
 エッセイ集なのかもしれないと最初は思い、長編小説と判明してからもどうにも腑に落ちず、私は単行本の中身を少し立ち読みしたあと、買わないことにして書店から立ち去った。
 二〇〇四年の冬のことである。
 少し立ち読みして、つまらなそうだから買うのをやめたのではない。その正反対だ。中国、モンゴル……ちょっとページをめくっただけで地球規模のドラマが展開されそうなことがわかって、心の旅をする元気すらなかった当時の私は、本作を敬遠したのだと思う。
 盛田隆二の本を読むことはいつも、登場人物の人生を生きることに等しい。どんな読書も多少はそういう感触を楽しむ行為なのだろうが、盛田作品は「追体験してしまう世界のリアリティ」がいささか尋常ではないのだ。
 しかもタイトルを真に受けるなら、人生が散ったりアウトになったり【……この続きは実物を!】