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【社説】

厚労省改革 再編も視野に効率化を

2009年4月7日

 厚生労働行政のあり方に関する政府の懇談会の報告書は、一部の

組織改革の提言に終わった。行政効率を高めつつ多様化する行政需要にこたえるには、他府省との再編も視野にいれるべきだ。

 報告書は、少子化が「わが国が直面する最大の問題」と位置付け、雇用均等・児童家庭、職業安定局など複数の局にまたがる少子化部門を横断的に統括したり、正規雇用が前提の労働部門とは別に非正規雇用対策専門の部門の創設などを求めている。

 厚労省は提言を具体化するための工程表づくりを始める。組織を肥大化させず、統合で効率化を図ることはぜひ進めてもらいたい。

 懇談会は当初、厚労省内に設置される予定だったが、改革が不徹底になると指摘されたため官邸に移された経緯がある。これを踏まえるならば、政府全体で厚労行政のあり方を論じ、改革の方向性を示すべきではなかったのか。

 政府の府省は十二あるが、二〇〇九年度の政府歳出八十九兆円の中で、厚労省予算は一般歳出五十二兆円のうちの半分近くを占めるほど突出している。

 年金、医療、介護保険のほか、生活保護、障害者支援、少子化・育児、臓器移植、感染症、医薬・食品安全、救急医療・医師不足、雇用対策など国民生活に直接かかわる問題のほとんどが厚労省の所管に含まれる。トップの厚労相が有能だとしても政策を機動的に打ち出すには限界があるだろう。

 国会でもこれらの問題が衆参の厚労委員会に集中するため審議は常に滞り、論議が深まらない。重要な法案でもたなざらしになる。

 報告書も「現在の厚生行政は守備範囲が広すぎ、内部調整に要する時間やコストが大きくなっている」と認め、他府省との再編について「必要な行政分野への人材のシフトを大胆に進めるべきだ」などと指摘するならば、具体的に踏み込んだ提言が求められる。

 旧厚生、労働省の〇一年の統合で、高齢者・障害者対策と就労、女性の働き方と育児などの分野では行政の一体性が増したが、厚労省全体としては深刻化する雇用問題への対応が出遅れるなど巨大化の弊害が随所で見られる。政府全体で府省の適切な守備範囲を見直すことも必要ではないか。

 健康にかかわる医薬・食品安全部門は、現在の医薬食品局、医薬品医療機器総合機構の二本立ての体制を改め、一本化したうえ厚労省から外すことを求める意見も出ている。検討に値するだろう。

 

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