犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。
犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて
■今昔290をとめ塚・求女塚
高橋虫麻呂が 詠う 伝説歌謡
葦屋(あしのや)の うなひ処女(をとめ)の 八年児(やとせご)の 片生(かたおひ)の時ゆ 小放髪(をはなり)に 髪たくまでに 並び居(を)る 家にも見えず 虚木綿(うつゆふ)の 隠(こも)りてませば 見てしかと 悒憤(いぶせ)む時の 垣ほなす 人の誂(と)ふ時
《芦屋(あしのや)の うないの処女(おとめ) 八(や)つの歳から 年頃までも 隣も見せへん 箱入り娘 見たいもんやと 胸焼き焦がし 引きも切らない 求婚話》
血沼壮士(ちぬをとこ) うなひ壮士(をとこ)の 盧屋(ふせや)焼(や)く すすし競(きほ)ひ 相(あひ)結婚(よば)ひ しける時は 焼(やき)太刀(たち)の 手柄(たがみ)押しねり 白檀弓(しらまゆみ) 靭(ゆぎ)取り負(お)ひて 水に入り 火にも入らむと 立ち向ひ 競(きほ)ひし時に
《血沼(ちぬ)の壮士(おとこ)と うなひの壮士(おとこ) 火花を散らす 嫁取り競(きそ)い かなた太刀提(さ)げ こなた弓 水中(みずなか) 火の中 厭(いと)いもしない》
吾妹子(わぎもこ)が 母に語らく 倭(し)文(づ)手(た)纒(まき) 賤(いや)しきわがゆゑ 大夫(ますらを)の 争ふ見れば 生けるとも 逢ふべくあれや ししくしろ 黄泉(よみ)に待たむと 隠沼(こもりぬ)の 下延(したは)へ置きて うち嘆き 妹が去(い)るぬれば
《優しい処女(おとめ)は 胸痛め 私のことで 人が死ぬ 生きての結ばれ 考えず あの世で待つと 母に言い 本心告げず 旅に出る》
<続きは今昔291>

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葦屋(あしのや)の うなひ処女(をとめ)の 八年児(やとせご)の 片生(かたおひ)の時ゆ 小放髪(をはなり)に 髪たくまでに 並び居(を)る 家にも見えず 虚木綿(うつゆふ)の 隠(こも)りてませば 見てしかと 悒憤(いぶせ)む時の 垣ほなす 人の誂(と)ふ時
《芦屋(あしのや)の うないの処女(おとめ) 八(や)つの歳から 年頃までも 隣も見せへん 箱入り娘 見たいもんやと 胸焼き焦がし 引きも切らない 求婚話》
血沼壮士(ちぬをとこ) うなひ壮士(をとこ)の 盧屋(ふせや)焼(や)く すすし競(きほ)ひ 相(あひ)結婚(よば)ひ しける時は 焼(やき)太刀(たち)の 手柄(たがみ)押しねり 白檀弓(しらまゆみ) 靭(ゆぎ)取り負(お)ひて 水に入り 火にも入らむと 立ち向ひ 競(きほ)ひし時に
《血沼(ちぬ)の壮士(おとこ)と うなひの壮士(おとこ) 火花を散らす 嫁取り競(きそ)い かなた太刀提(さ)げ こなた弓 水中(みずなか) 火の中 厭(いと)いもしない》
吾妹子(わぎもこ)が 母に語らく 倭(し)文(づ)手(た)纒(まき) 賤(いや)しきわがゆゑ 大夫(ますらを)の 争ふ見れば 生けるとも 逢ふべくあれや ししくしろ 黄泉(よみ)に待たむと 隠沼(こもりぬ)の 下延(したは)へ置きて うち嘆き 妹が去(い)るぬれば
《優しい処女(おとめ)は 胸痛め 私のことで 人が死ぬ 生きての結ばれ 考えず あの世で待つと 母に言い 本心告げず 旅に出る》
<続きは今昔291>
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■今昔291をとめ塚・求女塚
<今昔290の続き>
血沼壮士(ちぬをとこ) その夜夢(いめ)に 見取り続(つつ)き 追ひ行きければ 後れたる 菟原壮士(うはらをとこ)い 天(あめ)仰(あふ)ぎ 叫びおらぴ 足ずりし 牙(き)喫(か)み建(たけ)びて 如己男(もころを)に 負けてはあらじと 懸佩(かけはき)の 小剣(をだち)取り佩(は)き ところ葛(づら) 尋(と)め行きければ
《夢でこれ知る 血沼壮士(ちぬおとこ) 遅れてなるかと 死出の旅 後で気の付く 菟原(うはら)の壮士(おとこ) 負けるものかと おっとり刀 あの世までもと 後を追う》
親族(うから)どち い行き集(つど)ひ 永き代に 標(しるし)にせむと 遠き代に 語り継がむと 処女墓(をとめづか) 中に造り置き 壮士墓(をとこづか) 此方(こなた)彼方(かなた)に 造り置ける
《残る家族は 悲しみ集い 処女(おとめ)のお墓を 真ん中に それを挟んで 壮士墓(おとこづか) 悲劇伝えに 造り置く》
故縁(ゆゑよし)聞きて 知られども 新喪(にひも)の如(ごと)も 哭(ね)泣(な)きつるかも
《謂(いわ)れ聞き 見知りの人では 無いけれど 思わず知らず 貰(もら)い泣き》
―高橋虫麻呂歌集―(巻九・一八〇九)

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血沼壮士(ちぬをとこ) その夜夢(いめ)に 見取り続(つつ)き 追ひ行きければ 後れたる 菟原壮士(うはらをとこ)い 天(あめ)仰(あふ)ぎ 叫びおらぴ 足ずりし 牙(き)喫(か)み建(たけ)びて 如己男(もころを)に 負けてはあらじと 懸佩(かけはき)の 小剣(をだち)取り佩(は)き ところ葛(づら) 尋(と)め行きければ
《夢でこれ知る 血沼壮士(ちぬおとこ) 遅れてなるかと 死出の旅 後で気の付く 菟原(うはら)の壮士(おとこ) 負けるものかと おっとり刀 あの世までもと 後を追う》
親族(うから)どち い行き集(つど)ひ 永き代に 標(しるし)にせむと 遠き代に 語り継がむと 処女墓(をとめづか) 中に造り置き 壮士墓(をとこづか) 此方(こなた)彼方(かなた)に 造り置ける
《残る家族は 悲しみ集い 処女(おとめ)のお墓を 真ん中に それを挟んで 壮士墓(おとこづか) 悲劇伝えに 造り置く》
故縁(ゆゑよし)聞きて 知られども 新喪(にひも)の如(ごと)も 哭(ね)泣(な)きつるかも
《謂(いわ)れ聞き 見知りの人では 無いけれど 思わず知らず 貰(もら)い泣き》
―高橋虫麻呂歌集―(巻九・一八〇九)
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