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■ 西松建設違法献金事件3つの疑問 ■

民主党の小沢代表の公設第1秘書が東京地検に政治資金規正法違反容疑で逮捕され、漆間巌官房副長官の「自民党への波及はないだろう」という趣旨の発言が問題となり、民主党幹部から「国策捜査」発言までがとびだした西松建設の違法献金事件。衆院選への影響や小沢代表の進退も含めて国民の多くが強い関心を寄せ、またマスコミもこれを大きく取り上げています。
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 私はこの事件といいますか捜査が、強気の姿勢を示す小沢氏が言うように「これは国策である」というのは、ちょっと無理があると考えています。
 検察庁にしても警察庁にしても国の行政機関です。極端なことを言えば窃盗や殺人事件、あるいは交通違反などで被疑者の捜査・取り調べを法律に基づいて行う、これらの行為も国策の一環ということになります。「国策である。だから対決する」という発言の意味がちょっと分かりかねる部分があります。
 ただ小沢氏は、薫陶を受けた田中角栄元首相が米国ロッキード社の航空機売込みに関してワイロを受取ったという、あの「ロッキード事件」の公判の全てを1度も欠かさずに傍聴していますから、そのときの印象があまりにも強いので、国策などという発言に繋がったのではないかとも思います。
 そしてロッキード事件がどのようなものであったかを知れば、小沢氏の発言を頭から否定することもできないようにも思えてきます。私は今でも、あれは違法な裁判であったと考えているからです。
 いずれにせよこの捜査が仮に国策であったとしても、検察側の言うことが事実であるなら小沢氏は敗北ということになるでしょうし、そのような事実がないのであれば、また違った進展を見せることになるでしょう。
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 ロッキード裁判については、渡部昇一氏が論文を書いています。これを読めば、国策捜査それも違法な国策捜査が行われたことが分かります。
 例えば法廷に証拠として提出された田中元首相あての五億円の領収書ですが、これはアメリカ側から日本の検察当局へ提出されました。領収書を受取った側から押収されたなら分かります。ところがアメリカから領収書が出てきたというのですから摩訶不思議。こんなおかしな話はありません。
 また捜査は法律で定めた手続きに従って行わなければなりません。「違法収集証拠排除の法則」というルールがあって、法手続きに反して集められた証拠は裁判で使うことができないのです。ところがあの裁判では「罪は問わないから」という条件付きでアメリカで嘱託尋問された贈賄側のロッキード社コーチャン副社長の「ワイロをおくりました」という証言が証拠として採用されました。
 このような尋問のやり方は米国では法的に認められているのですが、我が国にはありません。日本の法律で認められていないにも拘わらず、贈賄側に免責を与えた上で国外で行われた証言を証拠として採用したのです。
 さらにロッキード裁判では、被告である田中元首相からの反対尋問は受け付けられませんでした。あの悪名高い東京裁判ですら「却下」されたことはあったものの「反対尋問」は認められていました。反対尋問のない裁判など、これはもう裁判とは言えないと思うのですが、当時の日本のマスコミは、このことを一切報じることはありませんでした。
 このあたりが小沢氏の国策捜査という強気発言の背景にあるのでしょうが、これは的外れ。今のところ検察側がこのような違法な捜査をしているとは思えません。
 小沢氏は、オバマ政権発足直後に来日して会談を希望した米国のクリントン国務長官に対し、「その必要はない」と面会を拒絶しました。さらに「アメリカの政策は中国べったりである」また拉致問題について「北朝鮮とは金で解決するしかないだろう」などと発言しました。
 そして今、このような米国にとって癪にさわる一連の発言をした小沢氏は西松建設違法献金事件が明るみに出たことで窮地に立たされています…
 状況証拠は何もありませんし、これは私のまったくの想像でしかありませんが、もしかしたらアメリカが「やれ!」と働きかけたからではないかと考えることもあります。アメリカが凄めば動かざるを得ない我が国ですから全く考えられないことではありません。
「まさか、そのようなことが…」と思う人も多いでしょうが、否定はできません。一応、疑ってみるべきではないかと思います。
 
 今回の事件で逮捕された大久保隆規公設第1秘書の仲人はこの私です。結婚したのは28歳くらいでしたでしょうか、当時は東日本ハウスの社員でした。
 そんなことから人並み以上の関心をもって事件の推移を見つめてきたのですが、どうも最近の当局のやり方は違法とまでは行かないまでも、違法スレスレという気がしてなりません。というのは操作段階での詳しい情報や内部でしか分からない話がすぐに紙面となって明らかにされるからです。新聞記者にリークする。意図的に情報を流している気がしてならないのですが、果たしてこれは正常な姿と言えるでしょうか。
 検察や警察が被疑者を逮捕するために捜査を行うのは当然ですが、その様子が逐一紙面を飾るとなれば、裁判が始まる前にすでに「有罪だろうな…」というムードが形成されることもあります。これは「知る権利」や「悪いことをしたのだから当然だ」とは異なる次元の話であると思います。世論操作に繋がります。
 今朝(3月15日)の新聞には「西松建設がダム工事受注のため、複数の政治家に献金した旨の供述をしていることが捜査関係者の話で分かった」と書いてありましたが、当局広報担当官が会見発表したこととは別の情報を、なぜ「守秘義務」が課せられている捜査関係者が記者に伝えるのでしょう。これが即違法行為であると断定できないかもしれませんが、「おかしい」とは思いませんか。
 要は、意図的に情報を流して、先ず世間に「悪いことをした」というイメージを植え付ける。その後は多少強引であってもマスコミや世論の後押しを背景に強気で証拠固めや取り調べをして送検しようとする… 最近の当局の姿勢は、こんな傾向があるように思えます。今回の事件でも明らかにリークと思える情報が多すぎて、鼻についてなりません。
 まことに「おかしな時代」になってしまった。そんな気がしてならないのですが、皆さんはどのように考えますでしょうか。


漁火新聞 2009年4月号