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[WSJ] 違法DL 3回でネット切断――仏「スリーストライク法」可決へ近づく

違法ダウンロードで警告を3度受けたユーザーはネット接続を切られ、ブラックリストに載せられて別のISPに移行できなくなる――そんな法律の制定がフランスで進められている。
2009年04月07日 07時30分 更新

パリ(ウォール・ストリート・ジャーナル)

 音楽、映画、テレビ番組を繰り返し違法ダウンロードしたユーザーに対し、最高で1年間インターネットを切断する「スリーストライク法」の可決に、フランスの議会がまた一歩近づいた。

 仏国民議会は4月2日、同法の主要な条項を投票で承認した。早ければ今週にも同法が可決される可能性が出てきた。可決すれば、仏政府は世界で初めて、著作権侵害者のインターネット接続を切断する対策を導入することになる。

 同法では、ISPは違法コピーの容疑者に関するデータを政府に提出することを義務付けられる。ISPはユーザーに2回警告し、3度目の違反で最高1年間インターネット接続を遮断する。3度違反したユーザーはブラックリストに載せられ、別のISPに移行したり、新しいアカウントを取得したりできなくなる。

 同法に違法ダウンロード抑制の効果があれば、エンターテインメント業界は勢いづいて、ほかの国でも同様の法律を推進するかもしれない。同様のアプローチを実験しているのはアイルランドとニュージーランドだけだが、政府が直接関与しているわけではない。

 スリーストライク法が成立すれば、ニコラス・サルコジ仏大統領にとっては勝利となる。大統領は同法を、フランスの「文化の豊かさ」を守る手段として支持している。同法は、仏Vivendi、書籍・音楽販売のFNACを傘下に持つ高級ブランドPPRなどの大手エンターテインメント企業の1年あまりにわたるロビー活動の集大成でもある。これら企業は、違法コピーはフランスでの事業に打撃を与えていると主張している。同国でのCD売り上げは2003年以来およそ半分に減り、年間6600万枚となっている。

 多くのインターネットユーザーはスリーストライク法案に激怒しており、またFrance Telecomなどのブロードバンド企業は加入者の密告を強要されることを望んでいない。

 「根本的に愚かな法律だと思う」とブロードバンド、テレビ、電話のパッケージを販売する仏第2位の事業者Iliadの創設者ザビア・ニール氏は言う。「悪用されるだろうし、本当は違反していない人のインターネット接続を切断してしまう恐れもある」。反対派は、違反者の回線を接続するのではなく、罰金を科すことを提案している。

 これまで音楽・映画産業は、10年にわたる違法コピーとの戦いで、ほかの戦術を取って失敗してきた。2003年から米国の裁判所で約3万5000件の著作権侵害訴訟を起こしているが、ユーザーの行動を変える効果はほとんど見られない。

 最近、米国のエンターテインメント業界は新たな戦略を採用した。全米レコード協会(RIAA)は、違法ダウンロードをしている疑いのあるユーザーに警告を送るという自発的プログラムでISPと協力しようとしている。RIAAはプログラム参加に同意した通信業者を明らかにすることを避けた。

 アイルランドでは、1月に音楽レーベルが地元の通信大手Eircomと提携、海賊行為の疑いのあるユーザーに2回警告し、3回目に回線を切る取り決めを結んだ。Eircomは、EMI Records、Warner Music、Universal Music、Sony Musicから違法コピーの「ほう助と教唆」で訴えられてからこのプログラムへの参加に同意した。レーベルはほかのアイルランドの企業とも同様の提携を結ぼうとしている。

 ニュージーランドは先に、プライバシー保護と実施方法についての懸念から、スリーストライク法案を延期した。

 フランスの法案では、音楽レーベルと映画会社がファイル交換サイトを監視し、著作物を違法にダウンロードしているコンピュータを特定する。そのコンピュータのIPアドレスを政府の委員会に提出し、政府はISPにそのIPアドレスを使っている人物の身元を特定させる。

 1回目の侵害で、ユーザーに電子メールで警告を送る。侵害行為が続けば、郵送で警告を送る。それでも違法ダウンロードをやめなければ、1カ月から1年の間、インターネット接続を切断する。

 政府委員会は接続を切られたユーザーとその住所のリストを保持し、リストに載ったユーザーがほかのISPに登録するのを防ぐ。フランスには大手ISPが4社しかないため、こうした管理は比較的しやすい。

 批判派は、この法律ではISPが加入者のWebサーフィン記録を政府に提出しなければならないため、プライバシー侵害につながると懸念している。「エンターテインメント業界がインターネットの警察のように振る舞うことを許してはいけない」と同法に反対するインターネット活動家のジェレミー・ジマーマン氏は語る。「人民の基本的自由に対する裏切りだ」

 批判派が指摘するもう1つの問題は、1人の子供の違法ダウンロードで家庭全体に罰が及ぶ場合や、近所の人が無線LANにただ乗りした場合だ。エンターテインメント業界は、政府委員会は国民のオンラインプライバシーを守るとして、このような懸念を退けている。

 「結局、論点は1つだ。すべてのものが違法コピーされたら、誰が芸術の創作に金を出すのかということだ」とUniversal Musicで同法のロビー活動を担当する責任者パスカル・ネグレ氏は言う。「フランス革命のときに、知識人たちは芸術家の権利、すなわち著作権という概念を作った。われわれは常にこうした問題を気にしており、著作権のために戦い続けなければならない」

[Leila Abboud,The Wall Street Journal]


この記事はダウ・ジョーンズとの契約の下でアイティメディアが翻訳したものです。翻訳責任はアイティメディアにあります。

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