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野球は世代を越えた“共通語”…今年は巷の熱気感じる

清水満「SPORTS BAR」

 淡いピンクの花びらが心をかき立てる。この季節、桜はいい。週末の土曜日、石神井川のほとりを歩いた。人があふれ、あちこちで宴会である。桜は二の次…。お酒がメーンで宴が続く。ちょっと異変があった。

 「おっ、勝ってるよ」「ホント?」。宴の主役が携帯電話のワンセグ・テレビ。あっちもこっちも…。プロ野球、巨人−広島戦の中継に一喜一憂である。終盤の逆転に「ったく、ヤケ酒だぁ〜」。去年も同じようなルートで夜桜見物したが野球の話題はなかった。桜見物の前に東京ドームに行った。近辺のベースボールカフェ、ファンが歓喜している。熱気があった。

 開幕した金曜日、東京・赤坂の鮨屋に行った。店主は仕事の合間にリモコンを握りしめてのザッピング(チャンネルを頻繁に切り替えること)…。「(プロ野球開幕の)この季節が待ち遠しかったですが、今年はお客さんの“感度”が全く違う。“開幕、いつだっけ”っていうの、結構、多いですもの…」。店主も“熱気”を肌で感じていた。

 同席した赤坂の大手芸能プロダクションのK西取締役ら4人で芋焼酎を1升以上も空けた。かなり酔ったが、野球談義は心地いい。「野球はね、日本人に根付いているんだよ。サッカーのジャパンもいいけど、野球は老若男女、世代を越えての“共通語”だよ。コミュニケーションのツールとして、これ以上ないね」とK西取締役は力説した。

 テレビの視聴率低下に野球不人気が取りざたされるが、地上波に限定される。BS、CSにワンセグは、電波の多様化、個人化でいまや、何百万人もが視聴しているのが現実…。さらに開幕戦はどこもチケットは完売状態だった。不況は底が見えないが、球界は“上昇傾向”にある気がする。

 先のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本は世界一の連覇を果たした。“侍JAPAN”が日本中を歓喜させた。閉塞感漂う暗〜い不況ニッポン。疲れ切った人々に「やればできる」という勇気を与えてくれた。野球というスポーツがくれた精神的効果は、ある意味大きい。

 WBC世界一のリーダーだったマリナーズのイチローが、胃潰瘍(かいよう)で開幕から故障者リスト入りという代償を払った。「あれ(WBC)が過酷じゃないわけないじゃない」という体を張ったプレーがファンを再び野球へと誘う。落選組のソフトバンクの松中が快打を放ち、和田が快投…。途中参加の広島・栗原が原監督の前で恩返し弾…。メジャーリーグも5日(日本時間6日)に開幕。こんなドラマチックがたまらない…。

ZAKZAK 2009/04/06

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