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公と民のはざまで 指定管理者制度はいま【2】 運用
- 2009/04/06
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こだわった原則論
横浜市は昨年9月、市救急医療センター(同市中区)の指定管理者である「市病院協会」(吉井宏会長)に対し、指定取り消しの処分を出した。それは、市内912施設(昨年末現在)の指定管理者で、初めて押された不名誉な烙印(らくいん)だ。経営破綻(はたん)などに伴う取り消しの事例は全国にもあるが、不祥事が発端で取り消された例は珍しく、県内ではもちろん初めてのケースだ。
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指定取り消しを決めた際、市はことし7月1日を処分日と定めた。その間、9カ月余。当時、市医療政策課は「余裕を持って(次の管理者を選定できる)スケジュールを立てた」と自信をみせていた。
県内の医師会や救急告示病院など延べ約2百カ所に応募を呼び掛けた。ところが、「医師不足」を主な理由に応募はなかった。2度の公募が空振りに終わると、公募にこだわる市の姿勢にも疑問の目が向けられるようになった。
ある若手市議は「物理的には医師会しかできない中、市は出来レースと思われることを嫌ったのでは」と指摘。「次の担い手探しこそ急務なのに、原則にこだわり過ぎ。優先順位があべこべだ」と批判する。
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同課は「指定管理者を選定する上で公募が原則のため」と強調する。確かに、総務省は「複数の申請者に事業計画書を出させることが望ましい」としている。しかし、同省行政課は「原則を示しただけ。置かれた状況も自治体ごとに違う。自由な発想で自治体の主体的な考えを尊重してもらうため、条例で対応できるよう、運用は自治体に任せている」と話す。
実際、市救急医療センター条例でも「特別の事情」があれば非公募での選定が可能としており、同市の912施設のうち、福祉、保健分野などの211施設は、非公募で指定管理者が選ばれている。
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3月3日に開かれた「市救急医療センター指定管理者選定委員会」。外部有識者で構成するメンバーは、次の指定管理者について、公募せずに市医師会を指名する方針を決めた。
混乱が収束しつつある中、ある委員が不満を漏らした。「現実として、市はどうしたいと考えているのか」。選定委に結論を委ねるかのような議論に、いら立ちを浮かべた。必要な手続きを踏んでいるとはいえ、市民のセーフティーネットをめぐる混乱を主体的に収束させようという意思が、市に感じられないといわんばかりだ。
別の委員がつぶやく。「医師は不足している。市場原理が働かない分野なのだから、もともと公募はなじまないんだ」