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Rudolph The Red-Nosed Reindeer
ルドルフ・ザ・レッドノーズド
レインディア

Johnny Marks (c) 1949



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Rudolph The Red-Nosed Reindeer


ダッシャー、ダンサー、
プランサー、ヴィクセン、
コメット、キューピド、
そして、ドンナー、ブリッツェンをご存知でしょう。
でも、覚えてますか、
一番有名なトナカイの名前を・・・。


ルドルフは赤い鼻をしたトナカイ
ピカピカしてるお鼻
一目見たなら
輝いてるって思うでしょう
他のトナカイはみんなして
それを笑って、悪口言って
かわいそうにルドルフは
遊びの仲間に入れてもらえない

そしたら、霧のクリスマス・イブのこと
サンタさんが来て言った
キラキラお鼻のルドルフよ
今夜、ソリの先頭を走ってくれないかい。
それからは、みんなルドルフが大好きになって
歓声を上げて言ったものさ
「赤い鼻したルドルフ
きみは歴史に残るトナカイさ!」
 

<訳:野上絢>
 


memo

Rudolph The Red-Nosed Reindeer

作詞/作曲:Johnny D. Marks、1949

サンタクロースの橇を引く「空飛ぶ9頭のトナカイ」の名前はもうよくご存知だと思います。先頭がこのルドルフで、以下ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、ドンダー(ドンナー)、ブリッツェン、キューピド、コメットと続きます。他の言語でまた違った呼び方もあります。

この並び方にも諸説があって、そのうちの一つでは、先頭から、

ブリッツェンキューピドダンサーヴィクセン

 ソリ 
 
ドンダーコメットプランサーダッシャー

という並び方になっているそうです。ルドルフはどこかって?もちろん、この先頭にいてみんなを先導してるんですよ。

ブリッツェンは足が速く、キューピドは群で一番のおちゃめさん、ダンサーはついステップを踏んで走ってしまうクセがあるという、陽気なチームです。サンタさんの言うには全員インターネットが大好きだというお話です。

ルドルフを除く8頭のトナカイたちの名前がアメリカ文学に最初に現れたのは、1823年、クレメント・C・ムーア(Clement Clark Moore)という人の書いた A Visit From St.Nicholas」という詩で、アメリカでは知らない人はいないほど有名です。副題の「The Night Before Christmas」という題名でよく知られていて、日本でも紹介されています。

この中にサンタクロースがトナカイたちの名前を呼ぶ部分があって、それをベースにして書かれたのがこの歌です。ムーアの詩には出てこなかった「9頭目のトナカイ」を知ってますか?と語りかけてルドルフのことを伝える心憎い演出になっています。


9頭めのトナカイの登場!

それでは、ムーアの詩には出てこない、この「ルドルフ」というトナカイはどこからやってきたのでしょう。

お話は一気に百年後のアメリカに飛びます。

1930年ごろ、シカゴにボブ・メイ (Bob May) という人がいました。(BobRobert の愛称です。)ボブはシカゴにある通信販売会社、モントゴメリー・ワード (Montgomery Ward) の宣伝原稿を書く仕事をしていましたが、暮らしは貧しく、安い給料で遅くまで働かなければなりませんでした。それは、非常に厳しい時代でした。ちょうど、ウォール街で株価が大暴落をし、恐慌に世界があえいでいた頃です。

彼には、二つの宝物がありました。それは、若い妻のエヴリン (Evelyn) と生まれたばかりの娘のバーバラ (Babara) でした。この二人のために、ボブは一生懸命働いていたと言ってもいいでしょう。家族はシカゴの片すみで身をよりそわすようにして生きていました。

バーバラが2歳になったとき、エヴリンが寝込むようになりました。悲しいことに、エヴリンは癌に冒されていたのです。ボブは妻の治療費を得るために八方手を尽くしました。しかし、得られた金額は僅かなもので、少しあった蓄えも妻の治療費で消えて行きました。それでも、エヴリンの容体は日増しに悪くなり、とうとうベットから起きることも出来なくなりました。

ある12月の夜、4歳になった娘のバーバラが、ふとボブに尋ねました。

「ねえ、パパ。私のママは、どうしてみんなのママと同じようじゃないの」

バーバラは子供らしい好奇心で、寝たきりの母親のことを尋ねたのでしょう。すでに、暮らしはぎりぎりのところに来ていました。ボブは思わずバーバラを抱きしめました。

せめて、この子を幸福な気持ちにしてやらねば。何かを言ってやらなきゃ。幸せな気持ちになれるような何かを。けれど何を?何を言えばいい?

ボブは小さな娘の体を抱きしめたまま考えました。
思い出したことは、自分の幼い頃のことです。ボブは、身体が弱く小柄な少年でした。小さな子は、残酷なことを無邪気にしてみることがあります。彼のクラスメートは、彼が痩せているのをはやしたて、彼を泣かせて喜んでいました。その級友たちは、ほとんどが大学へ進み、貧しかった彼は進学することが出来ませんでした。安い給料で働き、借金にまみれ、もう33になっていました…。

ボブは呼吸を整え、顔を上げました。自分の中からありとあらゆる想像力と勇気を集めました。それから、娘に向かって話しはじめました。

「むかしむかしのことだよ。ルドルフ、って名前のトナカイがいたんだ。ルドルフは、世界にただ一頭しかいない不思議なトナカイだった。それはね、ルドルフは、なんとでっかい、真っ赤なお鼻をしてたんだ!
あだ名はもちろん『赤鼻のルドルフ』さ!」

神様に創られた生き物は、たとえそれらが普通の人や動物と違っていても、いつかきっと奇蹟が起こり、幸せになることが出来る、ボブはそれを言おうと思っていました。娘のために、病と闘っている妻のために、そして、自分自身のために。

「でもね、ルドルフは幸せだったと思う?ほんとは、ルドルフはそのお鼻のことでとっても悩んでいたんだ。だって、みんなは自分を見て大笑いするし、そればかりか、お父さんもお母さんも妹たちまで馬鹿にされてたんだもの。悲しくて悲しくて仕方がなかったんだ。」

バーバラは瞬きもしないで聞いていました。

「ところがね」と、ボブは声を明るくして続けました。
「あるクリスマス・イヴのことだった。サンタさんが橇をひくエスキモー・トナカイのチームを迎えに来た!知ってるだろう?ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン…。クリスマスの夜に世界中を駆け巡る、有名なトナカイたちだよね。他のトナカイは全員集まって、この素晴らしいメンバーに惜しみない歓声をあげてお祝いをした。
ところが、いざ出発というとき、深い霧が広がり始めたんだ。
サンタさんは、思わず眉をひそめちゃった。っていうのは、霧が深いとエントツを探すことが出来ないって分かっていたからさ。

と、突然、サンタさんの頭にルドルフのことが浮かんだ。
サンタさんは、ルドルフのことをよーく知っていた。その真っ赤なお鼻のこともね。
サンタさんが辺りを見回わすと、群の後ろで見送りに参加しているルドルフが目に入った。なんとそのお鼻は、いつも以上にきらきら輝いていたんだ!
サンタさんはすぐさま決心した。黙ってルドルフに近づくと、橇のところへ連れて行き、チームの一番先頭にルドルフを立たせたのさ。ルドルフはもう、夢を見ているような気持ちだった。そのルドルフの耳に力強いサンタさんの声が聞こえた。

『さあ、行こう、仲間たち!!世界の空へ!!子供たちの夢へ!!』

トカナイたちはいっせいに身を躍らせた。ルドルフのお鼻がひときわ明るく輝いた。もうそれはまばゆい光になっていた。

9頭のトナカイは、空へ駆け上がった。霧の中にルドルフの輝きがすうっと線を描いて消えたんだ。

後に残ったトナカイたちはずっとそれを見送っていた。みんな、恥ずかしいような、苦しいような、それでいてとてつもなく嬉しいような、いろんなものが混じった不思議な気持ちに包まれていたんだよ。

その夜、ルドルフはサンタさんの橇を立派に先導した!
霧も、雪も、吹雪も、ルドルフがついていたら平気だった。どんな家も、どんなエントツも、見逃すことはなかった。だってそのお鼻はまるで灯台のように輝いていたんだから!

そうして、ルドルフはもっとも有名な、みんなに愛されるトナカイになったのさ。ずっと昔、恥ずかしくて隠したくなった真っ赤な大きなお鼻は、今ではみんなから一番羨ましがられるものになったんだ!!」

バーバラは、輝くような笑みを浮かべました。喜びで表情が変わってしまいました。けれど、それからが大変でした。小さなバーバラは、毎晩ボブにそのお話をねだり始めたんです。ボブは娘を寝かしつけながら、ほとんど毎晩のようにそのお話をして、時には半分寝込みながら話すこともあるほどでした。

やがて、ボブに素晴らしい考えが浮かびました。お話を本にして、クリスマスに娘にプレゼントしてやろう、というものでした。貧しい暮らしでは満足なプレゼントは買ってあげられません。しかし、手製の本となると事情は違います。紙とペンがあればどんな本だって作れるんですから。

ボブは毎晩娘が眠ってから、遅くまで「ルドルフ」のお話を詩にし、綺麗な本に仕上げる作業に没頭しました。丁度、ムーアが「セント・ニコラスの来訪」を書いたときのように・・・。

ルドルフの本も仕上げの段階に入ったとき、悲劇がこの家族を襲いました。妻のエヴリンが亡くなったのです。昔の楽しい暮らしを取り戻したい、というボブの望みは打ち砕かれました。もうボブの宝はバーバラだけになってしまいました。悲しみにつつまれながらも、ボブは毎晩、がらんとしたアパートの机に向かい、バーバラの「ルドルフ」を作り続けました。

バーバラが、ボブ手作りの「ルドルフ」を見て歓声を上げた数日後、ボブは会社のクリスマス・パーティに呼ばれました。ボブは気が進まなかったのですが、会社の組合がそれを強く要請していました。仕方なくパーティに出席した彼は、余興として自分の書いた詩を持って行き、それをみんなに読んで聞かせました。はじめガヤガヤしていた仲間たちは、その詩を大笑いしたりしながら聞いていましたが、次第に話し声が聞こえなくなってきました。会場は静まり返り、詩を読むボブの声だけが響きました。そして、詩が終わるや、いっせいに拍手が湧き起こりました。

これは1938年に起こったことです。1939年、ボブの詩は会社から「赤鼻のトナカイ("Rudolf the Red-Nose Reindeer")」と題され、デンバー・グレン(Denver Gillen)の挿し絵付きで発売されました。それから、この「赤鼻のトナカイ」という曲が出来る1949年のクリスマスまでに、この詩は6百万部を売るベスト・セラーになりました。真っ赤なお鼻のトナカイ、ルドルフを宣伝や商品に使いたい、という申し出が相次ぎました。物語の素晴らしさも相俟って、教育関係や文化学者たちは、かならずや「ルドルフ」は、クリスマスの伝統の中核の一つ、「歴史に残るトナカイ」になるだろう、と予言をしました。

長い苦しく不幸な年月を過ごし、愛妻と悲しい別れをし、そして、ルドルフを通してこの上ない成功をおさめたボブは、クリスマスが来るたびに心静かに思い返したといいます。

「あの夜、愛するバーバラがあの質問をしてくれなかったら、ルドルフはこの世には生まれなかっただろう。なんと不思議な瞬間だったのか。私は神とエヴリンとバーバラに心から感謝している」
● ボブが最初にこの詩を書いたとき、トナカイの名前はルドルフではなく、ロロ(Rollo)だったとも言われています。しかし、出版の段になって Rollo ではピンと来ない、ということになり、レイノルドなどいろいろな候補が考えられました。最終的にルドルフとなったのは、ボブの娘バーバラの意見だったとも言われています。
1949年、Gene Autry がこの詩のミュージカル・ヴァージョンを歌いベスト・ヒットとなりました。それ以来、この「赤鼻のトナカイ」という曲もクリスマス・ソングの代表曲となり、わずかに「ホワイト・クリスマス」に一位を譲るのみという人気を博しています。


Donner? Donder? 名前騒動

ところで、この歌の冒頭に列挙される七番目のトナカイの名前は、一般には上のように Donner となっています。先のムーアの詩でもそうなっていたのですが、これに対して、「Donner ではない、Donder だ」というクレームがつきました。

ワシントン・ポストという新聞がこれについて調査をし、詳細な報告を1994年1月11日の紙面に掲載しました。それによると、ムーアのオリジナル原稿ではたしかに Donder となっていて、これはオランダ語で「雷鳴」を意味しており、同じ意味のドイツ語でスペルの似ていた Donner にいつの間にかすりかわってしまった、というのが真相のようです。

ブリッツェン(Blitzen) はドイツ語で「稲妻」なので、それとの連想で Donder をドイツ語の Donner にしてしまったのでしょう。

* ちなみに Donner はチュートン伝説の「ニーベルングの指輪」に登場する雷神でもあり、ワーグナーの同名の楽劇にも登場するので、こちらの名前の方が Donder よりもずっとよく知られていたのでしょう。

<絢>

A Visit From St.Nichalas (The Night Before Christmas)
上にあげたクレメント・C・ムーア(Clement Clark Moore)の詩の全文とその対訳を掲載しました。

link (別ブラウザで表示されます)

● The Donder Home Page
[ Diane Walter's Homepage][ 該当サイト]
結局上の「7番目のトナカイの名前騒動」は、Donder説の勝利で幕がおりました。これから作られるサンタクロース関係の映画では、7番目のトナカイの名前をどうするか、いろいろ動きもあるようです。

「たかがトナカイの名前」という人もいますが、「オリジナルの文化遺産を守るべきだ」という主張を行っている人もいます。このサイトはその代表的なものでしょう。その名もズバリ「ドンダー(ドンデル)・ホームページ」です。

ことの顛末を伝える、ユーモアたっぷりのワシントンポストの記事も全文掲載されています。興味がある方はのぞいて見てください。(英語)
 
 




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