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シリーズ 「農薬の安全性を考える」 |
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「土壌活性剤」から殺虫剤を検出 |
◆本山教授が現地で事実関係を調査 佐賀県神埼市のアグリコマース(株)が輸入販売していた土壌活性剤「ニームオイル」(注)から、海外では登録があるが日本では登録されていない(申請中)殺虫剤アバメクチン(放線菌が生産するマクロライド系殺虫剤)が検出されたと3月29日の「第53回日本応用動物昆虫学会大会」(札幌)で、本山直樹東京農業大学客員教授が発表した。 ◆アザミウマに即効的な致死効果があったと生産者
調査の結果、馬上氏は本山教授が分析に使用したものはアグリコマース社が販売した商品であることを確認した。B社は帳簿上中継ぎをしているだけで、商品はアグリコマース社からC社に直送されていること。C社では、当初は社名・住所の入ったラベルが貼付された商品が送られてきて、それをD社を通じて農家に販売していたが、途中からラベルと容器が別々に送られてくるようになり、アグリコマース社からラベル下部(社名・住所の部分)を切り取ってボトルに貼るよう要請されそのようにしたと証言した(写真参照)。ここでも本山教授が分析したのはアグリコマース社の商品だと確認された。 ◆高い殺虫活性と魚毒性を示した分析結果 そこで本題に戻って、分析結果をみてみよう。本山教授は持ち込まれた「ニームオイル」についてまず「殺虫活性」と「魚毒性」の検定を行った。その結果は表1から表3の通りだ。表1は8つの容器ごとの殺虫活性だが、いずれも高い殺虫活性を示している。表2はLC50(半数が死亡する濃度)を算出するために、No.1容器のみ濃度範囲を広げて検定したものだが、その結果コナガ幼虫に対するLC50は6665倍希釈液と即効的な殺虫活性を示した。表3はNo.1容器のニームオイルでヒメダカに対する毒性を検定したものだが、ここでも24時間後のLC50は7万2890倍希釈液というきわめて高い魚毒性を示した(表4)。 ◆アザジラクチンやpboに即効的致死効果はない 一般的にインドセンダンという樹木の種子から抽出された精油成分である「ニーム油」は、昆虫に対して摂食阻害効果を示し、主成分のアザジラクチンは成長抑制(IGR)効果を示すが即効的な致死効果はない。農薬としてのアザジラクチン開発をしている研究者に聞くと、「2週間くらい経たないと効果はみえない」という。魚毒性についてもニーム油もアザジラクチンもA類(>10ppm)だ。 ◆主要殺虫活性成分はアバメクチンと判明 それでは何が高い即効的致死効果をもたらしたのか。本山教授はこれまでの経験からアバメクチンが混入されているのではないかと予測し分析した結果、ニームオイル中のアバメクチン濃度は、表7ののように900ppm(No.7)から2200ppm(No.4)の範囲にあり、平均は1700ppmだった。さらに、ニームオイルから検出されたアバメクチン濃度と800倍希釈液でえられたコナガ幼虫に対する殺虫活性の関係をみたのが図1だが、この結果はアグリコマース社の「ニームオイル」の主要殺虫活性成分は「アバメクチン」であることを示していると本山教授は結論した。 ◆100倍も感度が違う検査方法 前回も指摘したが、かっては化学合成農薬が混入されることが多かったが、最近は生物由来農薬が混入される傾向にある。なぜなら、生物由来農薬は一斉検査などでは検出されにくいからだ。本山教授は農水省が発表した個別分析の検出限界<0.02%=200ppmではアバメクチンの検出は難しいのではと推察している。また、このような分析の信頼性を判断するのに必要な添加回収率の情報が公開されていないことを指摘する。本山教授が分析したHPLC分析の検出限界は、20ng/10μl=2ppmで、感度が100倍も違うことになる。添加回収率も104%と良好なことを確認している。
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(2009.3.31) |
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