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精神障害者保健福祉手帳を所持するデメリット

この文章は「SATOYASU 心の blog」大阪で精神障害者保健福祉手帳を所持するメリット・デメリット(2) [2005/06/21] を元にしています。

精神障害者保健福祉手帳を所持するデメリット

正直なところ建前としては精神障害者保健福祉手帳を所持すると言う事は障害者としての社会的援助を受ける為の権利行使の手続きですので言葉を誤れば誤解を招きかねないデメリットについてはあまり説明したくないのが本音です。

実際ホームページなどで精神障害者保健福祉手帳を取得してもデメリットは全くありません。と断言している所も少なくないです。

私は基本的には精神障害者福祉手帳を取得できるような症状になった場合は申請すべきというのが基本的な立場です。

しかし現実を見た場合残念ながらデメリットは存在しますし。
あまり気分の良い作業ではありませんが簡単に解説してみたいと思います。

まだまだ根強い精神障害者への差別偏見

以前と比べると精神障害者に対する露骨な差別を口にする人が少なくなったと思います。
しかし他の障害者と比較しても差別と偏見は強く特に精神障害者を排斥使用とする意識が非常に強いと思います。
基本的には保健福祉手帳を申請してもその情報が行政機関の他の部署に知られる事もありませんし警察や税務署など他の機関に知られる事もありません。
しかし色々なサービスを受けようとすれば日常的に持ち歩く事になり落としたり利用している所を目撃されたりして職場や近所の人に知られるリスクは多少高くなります。
現実にはその様な事は確率的に非常に低く心配する程ではないのですが持ち歩いている者の立場では「うっかりしてバレるかも知れない」と言う大きなストレスを背負い込む事になります。

手帳を申請するうえでの大きなデメリットの一つが手帳を所持する事のストレス、「精神障害者」と認定される事への抵抗感でしょう。

手帳所持が知られて「精神障害者」である事がバレてしまうリスクは多少大きくなりますがそれがあまり気にならないのならメリットを重視して申請。「精神障害者」である事がだれかに知られてしまうのが心配でストレスになるのなら無理に申請しなくても良いのではないかと思います。

理解しているはずの人でも簡単には拭い去れない偏見と差別

では実際に精神障害者手帳を所持している事がバレてしまった場合どうでしょうか。

ある程度理解も広がり「私は精神障害者に対する偏見は持っていない」と言う人も多いでしょう。
しかしそのように断言している人であっても安心はできません。
あなたは自分自身が精神障害者のことを理解し偏見は持ってないと思っているとしましょう

しかしあなたがもし会社の経営者や人事担当者の場合
障害者手帳を所持している人が入社を希望してきた時全く気にしないと言いきれるでしょうか。
かなり理解があると思われる人であっても、いざ自分の会社に入社となると
「突然切れて何かを起こしてしまうのではないか」と言う不安を抱かない人はごく少数だと思います。

マンションなどに住んでいて家族に小さい子供がいる場合など同じ階に精神障害者手帳所持者が引っ越してきたと聞いた時子供に対して何の心配もしないでしょうか。

正直な所このような色々な状況設定を考えていくと私も自信がないです。

精神病者の犯罪率はそうでない人より少ない事などはかなり常識として広まっているのですが精神障害者に対する正しい理解が広まっていないので客観的な統計的な数字を理解しながらも「それでも精神障害者は突然切れて何かを起こしてしまうかも知れない」との偏見は根強く厳しい差別・偏見が存在します。

私の場合は「精神障害者手帳制度は差別を助長させるではなく支援するのが本来の目的だ」との信念とメリットが案外と多いと判断し申請しました。

現状では精神障害者手帳を所持している事は親しい人でも隠して置くのが無難と言えます。
と書きながら私の場合結構色んな人に手帳を見せていますがその事でいやな思いをした事は今のところありません。

しかし私の聞こえないところで色んな事が噂されている可能性大です。こんな噂はすぐに広まります。
エレベータでたまたま私と2人きりになった時恐怖に怯えている人がいるかもしれませんね。

「血筋」へのこだわりが問題を生み出す親類関係

こんな私でも親類関係では非常に気を使います。母親とか直接の家族以外にはうつ病である事も内緒です。親族の中にその様な人間が存在する事は結婚への影響など非常に不都合な事なのです。

あなたの親族が「血筋」等にこだわる場合など、うかつに手帳所持の事を言うと親族全体に動揺をもたらします。精神科等に通院している事も隠しておいた方が無難でしょう。
そうでないと親族からあなたの親が責められたり親族なかで微妙な立場に立たされる可能性があります。

実利的な問題等 - あるスクール

ある人から聞いた話ですがテレビでも頻繁にコマーシャルで宣伝しているパソコンスクールに入学手続きに行った時もしかしたら障害者割引があるかも知れないと思って精神障害者手帳を見せたら即入学を断られたと言う事があったそうです。

実利的な問題等 - 生命保険

生命保険などは現在の健康状態についての告知義務があります。
最近 大阪府民共済に 問い合わせてみた事があります。

「私はうつ病で心療内科に通院して精神障害者保険福祉手帳2級を所持していますが条件付でも構いませんが生命保険や医療保険で加入できる物はあるでしょうか」と質問しました。

予想通りですが「申し訳ございませんがお客様の加入できる保険は御準備できません」との回答でした。
私が「問題になるのは2級の手帳を持っている事でしょうか。それともうつ病の治療を受けている事でしょうか」と質問したところ「精神科領域の疾患」で「向精神薬」を服用し治療しているのが問題になってくるとの事でした。
「向精神薬と言っても他の診療科の薬と比べても特に問題のある物は少ないと思うのですが・・・」
としつこく聞いたら
「高血圧症の方が血圧の治療薬を服用されている場合も同様の扱いになっています。それと同様と御理解下さい」との事でした

また「それではうつ病であっても完治して薬も全く飲まなくなって医者の証明があれば保険に加入できるのでしょうか」と確認したところ
「その場合は加入していただけますが5年間の経過時間が必要です」
との回答で直っても5年間入れないのは少なからずショックでした。

ただ精神科で受診して数週間で直っていく人も居る訳で、そんな人まで5年間保険に入れない事はないだろうし・・・と思いながら電話を終わりました。
検索で調べたりしましたが詳しい事はよく判りません。保険会社に直接問い合わせて資料等入手するのが間違いないのでしょうがそこまでは調べていません。

少なくとも生命保険関係では手帳の所持以前に精神化領域の病気になり向精神薬を服用する事が問題とされるようです。

【 追記 】
改めて「保険 うつ病」などで検索してみると質問サイトでの回答など精神疾患にかかった場合の保険加入の可否についての情報が多く見られました。

やはり精神疾患にかかって治療を受ければ軽い場合でも生命保険や医療保険は加入できないとの情報が多いです。
また、ガン保険の中には加入できる物もあるとの情報もありました。

私自身が保険会社に実際に問い合わせた情報ではないのでこれ位に留めておきます。
さらにお知りになりたい方は同様に検索して見て下さい。

( 参考 )アリコジャパン よくあるご質問
うつ病の病歴があるのですが医療保険には加入できますか。
[2008/02/14]

実利的な問題等 - 資格

資格を取得するのに制約を受ける時があるようです。ただし、精神障害者手帳を所持している事を明かさなければ、ほとんどの場合は試験が通りさえすれば資格の取得はできるようです。

運転免許の場合を例に説明します

長くなりますが道路交通法等から引用します。

道路交通法

(免許の拒否等) 第九十条  公安委員会は、前条第一項の運転免許試験に合格した者(当該運転免許試験に係る適性試験を受けた日から起算して、第一種免許又は第二種免許にあつては一年を、仮免許にあつては三月を経過していない者に限る。)に対し、免許を与えなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する者については、政令で定める基準に従い、免許(仮免許を除く。以下この項から第九項までにおいて同じ。)を与えず、又は六月を超えない範囲内において免許を保留することができる。
一  次に掲げる病気にかかつている者
イ 幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの
ロ 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの
ハ イ又はロに掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
二  アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
三  第六項の規定による命令に違反した者
6  公安委員会は、第一項第一号から第三号までのいずれかに該当することを理由として同項ただし書の規定により免許を保留する場合において、必要があると認めるときは、当該処分の際に、その者に対し、公安委員会が指定する期日及び場所において適性検査を受け、又は公安委員会が指定する期限までに内閣府令で定める要件を満たす医師の診断書を提出すべき旨を命ずることができる。

道路交通法施行令
(免許の拒否又は保留の事由となる病気等)
第三十三条の二の三  法第九十条第一項第一号 イの政令で定める精神病は、精神分裂病(自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈しないものを除く。)とする。
2  法第九十条第一項第一号 ロの政令で定める病気は、次に掲げるとおりとする。
一  てんかん(発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの並びに発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)
二  再発性の失神(脳全体の虚血により一過性の意識障害をもたらす病気であつて、発作が再発するおそれがあるものをいう。)
三  無自覚性の低血糖症(人為的に血糖を調節することができるものを除く。)
3  法第九十条第一項第一号 ハの政令で定める病気は、次に掲げるとおりとする。
一  そううつ病(そう病及びうつ病を含み、自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈しないものを除く。)
二  重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
三  前二号に掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気

という事になってます。

法律文は必ずしも精神障害者は免許が取れないと言う表現にはなっていませんが
免許取得の時や免許の更新の時に手帳を提示したりすると手帳には病名、症状等書いてないわけですから。

公安委員会が指定する期日及び場所において適性検査を受け、又は公安委員会が指定する期限までに内閣府令で定める要件を満たす医師の診断書を提出すべき旨を命ずることができる
の部分が適用される羽目になりかねません。

また現場の意識としては精神障害者には免許を取らせたくないという意識は強いようですから免許が取れない、更新できないと言う可能性は低くないと思われます。

ですから、免許の取得、更新時に、手帳は見せないで下さい(義務はないはずです)。私は見せていませんし他の精神病で免許を持っている人も見せていないようです。自分から申告しない限り手帳所持がバレる事はありません。
ただし症状が良くない場合は運転はしないと言うのは当然でしょう。

実利的な問題等 - 就職

職業安定所に行って手帳を見せると、否応なく障害者雇用の窓口に回されます。そして医者に専用の診断書用紙に「就労が可能である」と書いてもらうよう言われます。
その診断書を提出して初めて職業安定所に登録してもらい仕事の斡旋がしてもらえます。この場合はっきりと障害者として登録され斡旋の時も障害者として斡旋されます。障害者への求人票は非常に少ないですが一般の求人票からも探す事はできます。

それと定期的に安定所に行っていると障害者雇用の担当者はあちこち営業活動もしているようで担当者からこんなところはどうかと紹介を受けれる場合もあるようです。

職業安定所で手帳を提示した場合のメリットは最近、障害者の雇用促進法に精神障害者も含まれましたが障害者に対する就労支援の制度がフルに使えるという事です。
障害者を雇用すると事業所にも一定期間、賃金の援助を受けられる等のメリットがあります。また、障害者である事を承知の上で雇用する以上、配慮を受けられる可能性も高くなります。

私は少々時間がかかっても手帳を開示してそれを承知の上で雇用してくれる所を見つけたいと考えています。

職業安定所に手帳を提示した場合のデメリットは障害者である事を開示する為、雇用してもらえる事業所は非常に限定されます。特に精神障害の場合、非常に厳しい現実があります。手帳を提示して就職活動をした場合ある程度理解のある職場に就職できる可能性が高い一方で選択肢が極端に減ります。
つまり安定所で手帳を開示するとメリット・デメリット両方があります。

運転免許と同様、手帳を提示せずに職業安定所で求職したり新聞、求人誌等で仕事を探す事はできます。自分から提示しない限り手帳が安定所にバレる事はありません。ただし、いったん就職したらどんな親しい友人ができても手帳を所持している事は隠しておくべきでしょう。
すでに述べたように一見理解がありそうでも精神障害に対し強い偏見を持っている人は多いです。
手帳を所持している事がバレたらすぐに会社を首になるという覚悟で臨む必要があります。
また病気を隠しているのですから容赦なく仕事が与えられノルマが課せられたりします。病状が仕事をこなせる状態でなければ手帳を見せる見せない以前の問題として仕事が続きません。

なんとかこなせる適当なバイトなどを見つけても特に男性の場合はいつまでこんなバイトを続けるのかなどとしつこく聞かれたりします。
手帳以外にも、昼食後の薬を処方されている場合など注意が必要です。同僚から何の薬を飲んでいるのか聞かれたりしますし薬のシートをうかつにゴミ箱に捨てたりすると変に知識や興味を持っている人がそれを拾って帰って薬品名をインターネットで検索すれば精神病の薬である事は簡単にばれます。

手帳だけでなく気を使う事は一杯あります。
また、手帳所持のメリットである税金の控除申請も会社を通してはしにくくなります。

会社に在籍中に発病し、会社がある程度理解をしている場合は少し状況は違ってくるでしょう。

【 追記 】
「手帳を所持している事がバレたらすぐに会社を首になるという覚悟で臨む必要があります。」の記述について

これは、障害者なら会社が解雇できると言う事ではありません。
入社時に手帳を持っている = 障害者である事を隠していた事が問題になるという事です。
また、手帳を持っていなくても精神疾患の治療を受けている事を隠していて、それが会社に知られた時も同様と思われます。
何故なら重大な健康上の問題との認識が一般的ですから隠していれば健康状態の詐称となり法的に争っても難しいのではないかと思われます。

入社後に発病した場合は精神疾患や手帳所持だけを理由に解雇はできません。
しかし、これも建前上の事で退職を迫られるケースもある様です。
現実問題として会社と争うのは困難を伴いますので泣き寝入りせざるを得ないと言うのが実情ではないでしょうか。
[2008/02/14]

手帳を持つ事による精神的な影響

最初に「「精神障害者」と認定される事への抵抗感」と書きましたが、手帳を所持する事による精神的な影響も大きいと思います。

私の場合ですが、手帳を申請する時点でも自分に「障害」があるとの認識は全く無く「自分は病人」と思っていました。
手帳の申請についても「制度は利用するもの」と割り切っていたつもりでした。

しかしいざ表紙に「障害者手帳」と書かれた手帳を手にした時「本当に自分は障害者なのか?いや、手帳を取得した以上、障害者である事を受け入れないといけない。でも・・・」と自問自答を続け、しばらくは「ついに一般の人間ではなくなってしまった」みたいな、あきらめのような思いに囚われていました。

そんなこだわりも実際に手帳を利用しているうちに「慣れ」で無くなって行きましたが、単なる「慣れ」ではなく徐々に覚悟と言うか以前とは違う社会的立場に居る自分を受け入れて行った様に思います。

手帳は活用すればする程、第三者に提示する機会が増えます。その都度、私が「障害者」である事を社会が認知し「障害者」として待遇する訳です。

この「障害者」と社会的に認定される事の精神面への影響は個人差がかなりあると思いますが、大きな課題であると思います。
メリットを感じつつもこの「障害者」と認定される事に抵抗を感じためらっている方は少なくないと思います。
デメリットとは少し違いますがこの精神的な障壁が大きなマイナス要因になっているのではないでしょうか。
[2008/02/14] 追記

最後に

以上デメリットについて色々と書きましたがこちらの面についての知識はあまりありませんし勉強不足です。気がついた点があれば修正して行きたいと思います。

間違った記述があればメールや掲示板で指摘していただければありがたいです。
[ 2006/04/13 ]

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