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第1編   
第1部  少子社会を考える−子どもを産み育てることに「夢」を持てる社会を−
第2章  自立した個人の生き方を尊重し,お互いを支え合える家族
第3節  夫婦
4  離婚・再婚


図2-54 離婚件数および離婚率の年次推移

表2-55 有配偶者に対する離婚率(女性)

表2-56 同居期間別離婚割合

図2-57 「結婚しても相手に満足できないときは離婚すればよい」という考え方について

図2-58 「子どもがいれば夫婦仲が悪くなっても分かれるべきではない」という考え方について

表2-59 離婚調停の夫婦別申立て件数

図2-60 夫婦別申立て動機(割合)

図2-61 有子離婚件数の年次推移と親権者

表2-62 養育費の受給状況

図2-63 別れた子との面会頻度

図2-64 我が国の離婚制度と件数

図2-65 性別,離婚者の再婚の意思

図2-66 離婚した人の再婚割合の推移

図2-67 高齢者の望ましいとする異性との関係

■ 子連れ再婚 ■

 名古屋市に住む山田武雄さん(48歳)光子さん(37歳)は,7年前,女の子一人ずつを伴って結婚。翌年,二人の間に長男が生まれ,5人家族となった。今,長女16歳,次女12歳,長男6歳。楽しい笑い声に満ちた家庭である。

 ふたりは共働き。光子さんは,勤務先から駆け込み,ぎりぎりの時間に保育園に長男を迎えに行く。そして今度は大急ぎで夕飯の支度と慌ただしい。仕事が忙しく,保育園の送り迎えを光子さんに頼っている武雄さんは,「罪滅ぼし」とばかりに,休みの土日には家族を遊園地に連れて行ったり,料理を作ったり,と懸命に家族に家事にと関わっている。

 結婚したばかりのころは,長女と次女,それぞれと父母の関係をいかに理解し合えるものにするかに心を砕いた。まずは子どもの意見をよく聞くことにした。何が疑問なのか,不満なのか,不安なのかをしっかり聞いて問題点を見極め,親の判断をかみ砕いて伝えた。また,小学生以上になったら,家の手伝いをさせることも子どもたちに納得させ,やらせている。

 「楽しみは家族全員で味わうもの」とは,武雄さんが繰り返し口にしてきた言葉だが,いつの間にか家族みんなの心の中に,大切な家族の合言葉として根を下ろしているようである。「もう中部地方はいいから,来年は北陸ね」と,早くも家族の間で,毎年恒例となった泊まり込みの家族忘年会の計画が進められているそうだ。(文中仮名)




4-1  離婚件数は戦後最高を記録し,熟年夫婦の離婚が占める割合が増加している。

 我が国の離婚率(人口千人対比)は,1963(昭和38)年に0.73と戦後最低を記録した後,上昇傾向に転じ,1975(昭和50)年代後半から婚姻件数が減少したこともあり,一時低下傾向を示したものの再び上昇し,1996(平成8)年には離婚率1.66,離婚件数206,955件と,いずれも戦後最高を記録している。

 全離婚件数に占める同居期間が20年以上のいわゆる熟年夫婦の離婚件数割合を見ると,1975年には5.7%に過ぎなかったが,1996年では15.8%を占めるに至っている。

 長年連れ添った熟年夫婦の離婚は,子どもが成人し自立した後,家庭の中で目標を失った妻が,仕事一筋で家庭を顧みなかった夫との二人の老後生活に希望が持てずに離婚を決意し,一方,夫は子どもの教育費用やマイホームのため,つまり「家庭」のため精一杯働いてきたつもりなのに離婚を切り出されるのが理解できない,といった事例が多いといわれる。役割分業の行き過ぎによる夫婦間の対話や交流の欠如が招いている現象と見ることができる。


4-2  離婚に対する意識は,近年,急速に寛大になってきている。

 離婚が増加している背景には,女性の就業機会の増大などの要因のほか,離婚に対する意識の変化が指摘できる。

 「相手に満足できないときは離婚すればよい」という考え方に賛成する者の割合は,1970年代には男女とも20%程度に過ぎなかったのが,年を追うごとに増加し,1997(平成9)年には,男女とも半数を超えるに至っている。このように,従来は,離婚に対して否定的な意識が強かったが,近年は,急速に寛大になってきている。

 このような離婚観の変化の背景には,恋愛結婚志向が強まったことも関連していると考えられる。つまり,「人柄」など相手本位の選択が行われるようになると,相手とうまくいかなければ別れればよい,という考え方につながりやすくなる。

 しかし,「子どもがいれば夫婦仲が悪くなっても別れるべきではない」という考えには,男女とも半数以上が賛成し,欧米諸国と比較してかなり高くなっている。


4-3  離婚申立ての理由は,性格の不一致が過半数を占めている。

 我が国の離婚は,当事者のみの合意で成立する「協議離婚」が全離婚件数の約9割を占めており,裁判離婚が大半を占める欧米諸国と比べ,大きな特徴になっている。

 家庭裁判所への離婚調停の申立ては,妻からのものが約7割を占めている。また,離婚調停の申立て理由は,1970(昭和45)年,1996(平成8)年のいずれにおいても「性格が合わない」が最も多いが,その割合は38.2%から51.4%に増加し,過半数を占めるに至っている。

 これを夫婦別に見ると,1970年では,妻は「異性関係」を,夫は「性格が合わない」が最も多かったが,1996年では,夫婦ともに「性格が合わない」が最も多くなっている。


4-4  離婚について,破綻主義を支持する割合は半数を超えている。

 現行の民法においては,裁判上の離婚原因として,配偶者に不貞行為があった場合など有責主義に基づく離婚原因を定めているほか,婚姻を継続し難い重大な事由があるときという破綻主義に基づく離婚原因も定めているが,裁判上は,有責配偶者からの離婚請求は認めない取扱いがなされてきた。

 これに対し,夫婦の関係が悪化した原因がどちらにあるかには関係なく,別居などによって,夫婦としての関係がなくなっている状態が一定期間続いた場合には,原則として離婚を認めてよいと考える者は,1996(平成8)年で54.7%と半数を超えている。

 こうした考え方等を背景に,1996年2月に法制審議会が法務大臣に対して答申した「民法の一部を改正する法律案要綱」においては,裁判上の離婚原因について,破綻主義の考え方を明記した上で,その具体例として「夫婦が5年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき」を追加することとされている。


4-5  離婚の際は,子どもの利益を図るための十分な努力と配慮が求められる。

 離婚件数の増加に伴い,親の離婚に巻き込まれる子どもも増えている。有子離婚件数は,1960(昭和35)年の40,452件から1996(平成8)年には124,490件と3倍以上に増加している。

 離婚に際しては,父母のどちらか一方を親権者と定めることとなる(民法819条)が,子の監護については,子の監護をすべき者その他監護について必要な事項を当事者間の協議によって定め,その協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が定める旨が民法に規定されている(766条,771条)が,「その他監護について必要な事項」の具体的内容は明示されていない。

 離婚後の親権者には,1960年には父親がなる場合が47%で母親がなる場合を上回っていたが,その後逆転し,1996(平成8)年には有子離婚件数の78%は,母親を親権者としている。こうした中で離別した父親から養育費を受け取っている母子世帯は,近年増加傾向にあるものの,1993(平成5)年においてわずか14.9%であり,かつて養育費を受け取ったことがある者を加えても31.3%にとどまっている。

 また,離婚後の親権者と定められた親以外の親と子どもの面接頻度を見ると,45.8%が全く会っておらず,ほとんど会っていない場合を含めると64.2%になっているのに対し,月に1〜2回以上会っているのは34.2%にとどまっている。

 離婚するしないは当事者間の自由意思に委ねられるべきものであることは当然であるにしても,有子離婚の場合には,離婚によって大きな影響を受ける子どもについて最善の利益が図られるよう,協議離婚の場合であっても当事者において十分な努力と配慮が求められる。

 離婚の際,親権者とならなかった親も親権者となった親とともに,その能力と資力の範囲内において,子どもの発達に必要な生活条件を確保することについて私法上の責任を有しており,とりわけ母子家庭の置かれた経済状況を踏まえれば,離別した父親からの養育費の支払いが適正に行われることが,母子家庭の自立と子どもの福祉の増進という観点から重要である。このため,離婚の際の子どもの養育費の問題について,協議離婚の場合であっても当事者間の十分な話し合いに基づく養育費の取り決めが行われ,かつ履行が確保されるよう,制度的な枠組みづくりを含めた環境整備が今後の重要な課題である。

 また,親権者とならなかった親と子どもの交流についても,夫婦間の感情的なしこりを超え,子どもの「親に会いたい」という自然な気持ちを尊重した,十分な話し合いによる取り決めがなされることが求められる。

 なお,1996年2月に法制審議会が法務大臣に対して答申した「民法の一部を改正する法律案要綱」においては,「監護について必要な事項」の例示として,「父又は母と子との面会及び交流」「子の監護に要する費用の分担」を加えることとされている。


4-6  離婚経験者のうち,男性の約7割,女性の約6割が再婚している。

 1995(平成7)年現在,離婚経験者のうち,男性の約7割,女性の約6割が再婚していると推計される。また,子どもの親権を持つ離婚者の再婚の意思の有無を見ると,男親の場合は4割以上が「機会があれば再婚したい」と考えているのに対し,女親では2割弱にとどまっており,男女で大きな差が見られる。

 また,60歳以上の者を対象とした調査によると,男性の94%,女性の70%が異性との間の愛情や性的関係を望んでおり,死別の単身高齢者同士が再婚を望む事例も少なからず出てこよう。しかし,本人同士の合意があっても相続などの問題で子どもたちが反対する場合もあるといわれている。相続問題を含めた地域における相談活動の充実などが望まれる。


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