|
きょうの社説 2009年4月6日
◎北ミサイル発射 日米韓で高い代償払わせたい
国際社会の非難をあざ笑うかのように、北朝鮮が「人工衛星」と主張する長距離弾道ミ
サイルを発射した。ミサイルは日本上空を通過し、直接被害を及ぼすことはなかったが、明白な挑発である。衛星か否かにかかわらず「ミサイル関連のすべての活動停止」を定めた国連安保理決議に違反している。世界の平和と安全を損なう暴挙に強く抗議する。ミサイル発射を受けて政府は国連安保理の招集を要請した。緊急会合がきょうにも始ま り、日米による新たな対北朝鮮決議案が提出される見通しである。新たな制裁には、中国やロシアなどが難色を示すと見られるため、新たな制裁の追加ではなく、現在の制裁を徹底させる妥協案も検討されており、決議案の文言調整を含めた駆け引きが行われることになろう。 北朝鮮に対してクリントン米国務長官が発した「高い代償を払うことになる」との警告 通り、ミサイル実験は失うものが多く、得るものは少ないと、北朝鮮首脳が骨身にしみて思うところまで追い込む必要がある。経済制裁の実質的な強化に向けて日米韓が固くスクラムを組み、温度差のある中国やロシアを説得したい。 北朝鮮は、安保理がミサイルを議題にした場合、核開発の再開を示唆している。ミサイ ル実験が、米政府に融和路線への転換を促す狙いなのは明らかだ。ミサイル発射から核実験へ至る過程で、米国が融和路線になびいた過去の過ちを繰り返してはならない。日米韓の連携は六カ国協議を再開させるためにも重要である。 政府はミサイル防衛(MD)システムで迎撃する方針を決め、自衛隊法に基づく破壊措 置命令が発令された。落下物への迎撃は行われなかったが、北朝鮮ミサイルに関する多くの情報を入手し、発射の誤報騒ぎも含めてさまざまな教訓を得た。北朝鮮の挑発にひるまず対処できたのは、MDシステムの整備に地道な努力を重ねてきたからこそである。 ミサイル発射は、国民が安全保障についてじっくり考える機会にもなった。東アジアの 平和について、地に足のついた論議が深まることを期待したい。
◎金沢・タテマチ 若者の街の個性に磨きを
北陸随一のファッションストリートで知られる「金沢・タテマチ」の通りにも空き店舗
が目立つようになり、隣県からも若者を呼び込んだ集客力に陰りが見えてきた。危機感を持った竪町商店街振興組合が地盤沈下に歯止めをかけるため、自前の空き店舗対策に取り組む。「若者の街」という個性を磨き直し、活気を取り戻してほしい。金沢市商工振興課によると、このタテマチに空き店舗が目立ち始めたのは昨年十月ごろ からで、約二百のテナントの一割に当たる二十テナントが空いている状態だ。世界的な景気後退下では、空きを埋める次が容易に見つからない。ここ数年、相次いで開業した大型商業施設の影響や、昭和四十年代や五十年代に建てられたビルが多いという老朽化の問題もある。 自前の空き店舗対策の柱は、上限五十万円の内装費補助制度の創設と、不動産情報の管 理一元化だが、タテマチは片町とともに市の「かなざわファッションストリート創出補助事業」の対象となっている。タテマチに限らず、恐ろしいのは何と言っても心理的な敗北感であろう。これにとらわれてシャッター通りになった例はいくらでもあるのだ。 タテマチの個性を生かした活性化には若者像のとらえ直しが不可欠だ。たとえばの話だ が、可処分所得は大きくないが、恋人がほしい。その恋人ができれば、交際費がかかる。あれやこれやで、安いもので間に合わせようとするのが若者だ。こうした若者をどうやって満足させるかである。 金融危機によるドルの力の揺らぎで円高基調が続くとみられている。円高を武器に海外 から若者向きのブランドを仕入れ、廉価販売で成功した試みがある。タテマチでも取り入れたいことだ。ファッションだけでなく、美大生などと組んだイベントや、音楽家が集う場所もつくりたい。詩や文学の朗読会、映画会などにも挑戦したい。金沢の「食」の魅力も独創的に展開したい。 出直しの気概で結束を強め、斬新なアイデアで展望を切り開くときである。
|