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北朝鮮ミサイル:北東アジアに脅威 「非核化」後退も

 北朝鮮による今回のミサイル打ち上げで深刻なのは、06年10月に核実験を強行した北朝鮮が、核弾頭を遠方に飛ばす高度な運搬技術を獲得してしまうことだ。今後北朝鮮が米国を相手に「核の恫喝(どうかつ)」を強めれば、6カ国協議を舞台にした朝鮮半島の非核化プロセスは不透明になり、北東アジアの平和と安全が一層脅かされる。

 日本政府が今回の危機管理で第一義的に腐心したのは、制御不能になった北朝鮮のミサイルが日本の領土・領海に飛来し、国民に被害が及ぶのを避けることだった。日本列島のはるか上空を通過したことで、ミサイル防衛(MD)システムを初発動させての迎撃という最悪の事態は免れたが、これで脅威が去ったわけではない。

 むしろ朝鮮半島の非核化は、今回の「実験成功」で一歩後退する危険性がある。米本土までにらむような長距離弾道ミサイルの開発に自信を得た北朝鮮が、強気で米国との2国間交渉に臨むと、6カ国協議の空洞化が進んでしまうためだ。今後、米国がブッシュ政権末期に見せたような対北融和の姿勢に出た場合、日米関係にも悪影響をもたらす。

 国際世論を無視して発射に踏み切った北朝鮮の狙いは、発足間もないオバマ米政権の関心を自国に向けさせ、米朝の直接交渉に持ち込むことだとみられる。ミサイル技術を背景に「核保有国」の立場を誇示し、「金正日体制の保証」を最大の目標に米国から譲歩を引き出したいところだろう。98年8月の「テポドン1号」、06年7月の「テポドン2号」各発射も米朝交渉に結びつけた実績がある。

 日本にとっての直接的な脅威は、すでに北朝鮮が実戦配備し、日本全土を射程に入れている中距離ミサイル「ノドン」だ。北朝鮮が核の小型化に成功し搭載可能になれば脅威は一層深刻になる。テポドン2号改良型とみられる今回の発射は、米国の関心を長距離ミサイルにシフトさせ、結果的にノドンの危険性を固定化してしまいかねない。

 オバマ大統領の国際舞台へのデビューである第2回金融サミット(G20)と、それに続く北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の直後に発射を強行した北朝鮮は、地域情勢を緊迫化させることで、自国に有利な交渉に向けて布石を打った。その「瀬戸際外交」に振り回されないためには、日米韓3国が結束したうえで中露両国との連携を失わず、6カ国協議の空中分解を防ぐ必要がある。【編集委員・古賀攻、北京・西岡省二】

毎日新聞 2009年4月5日 21時08分(最終更新 4月5日 22時38分)

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