米アップル製の携帯音楽プレーヤー「iPod」を使った授業を、埼玉県松伏町の町立松伏第二中学校(金沢勝幸校長、生徒数625人)が始めた。アップルジャパン(東京)から42台を無償で借り、教師が考えた教材を使って授業をする。デジタル世代の生徒には「集中できる」と評判は上々だという。
訪ねた日、1年4組の5時間目は地理だった。38人の生徒が見つめるiPodの画面には、東北の白地図があった。青森県の部分が点滅すると、3秒後、「青森」と県名が浮かび上がった。50分間の授業のうち、生徒は20分程度、iPodを使っていた。
以前まで北海道と沖縄しか答えられなかったという伊藤萌さん(13)は「関東地方を中心に16都道府県が分かるようになった。地形が浮かぶと記憶に残る」。伊東龍之介君(13)も「イヤホンをしているので集中でき、頭に入る」と話していた。
取り入れようと発案したのは、大西久雄教頭(50)ら4人。日ごろの授業でクラス全員に学習のポイントを説明しても、理解できない生徒が少なくない。iPodで音楽を聴いたり、映像を見たりしていた大西教頭らは、授業で使って楽しんで勉強できるようにできないか、と考えた。
各教科の教諭が教材ソフトを作成。美術なら、水彩画の下書きから色塗りまで各パターンをナレーションで説明。数学の計算問題を解く場合は文字で解き方を解説し、英語では動画を見ながら聞き取りをする。保健体育を除く全教科のソフトを収め、全校17クラスが交代で使いながら学んでいる。
授業を見学した保護者の中には「集団で学ぶ本来の姿ではない」との声もあったが、大西教頭は「生徒に評判がいいだけでなく、どうやったら興味を持たせられるか、ソフトづくりを通して教師の意識改革にもつながる」と話す。 アップルジャパンによると、同中への無償の貸し出しは特別なケース。貸し出しは新年度の1学期までのため、同中によると、その後はPTAが約40台購入予定という。(高田純一)