雑誌記事古いハッブル画像から惑星を発見ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト4月 3日(金) 12時25分配信 / 海外 - 海外総合
画像から星の光を除去する新技術を使って1998年にハッブル宇宙望遠鏡で撮影された画像を調べ直したところ、“隠れていた”惑星が見つかった。 研究を主導したカナダにあるトロント大学のデイビッド・ラフレニエール氏によると、この惑星はペガサス座の方向約130光年の距離に位置する若い恒星HR 8799の周りを公転しているという。 昨年9月、ラフレニエール氏の研究チームは太陽系外惑星系の直接撮影に初めて成功した。その惑星系ではHR 8799の周りを3つの大質量惑星が回っており、今回再調査されたハッブル宇宙望遠鏡の画像にはその最も外側を公転する惑星が映っている。 今回の発見は以前から知られている惑星を新しい技術で確認したにすぎないが、過去にハッブル宇宙望遠鏡で撮影された多くの画像を再調査すれば、さらに多くの未知なる惑星が見つかる可能性が示唆された。 「彼らはハッブルの古い画像を掘り起こして惑星を発見した。素晴らしいことだ。この成功を聞いて、世界中の天文学者が古いハッブル画像の調査に乗り出すだろう。未知の惑星を探し出す激しい競争が始まる」と、カリフォルニア大学バークレー校の天文学者ジェフ・マーシー氏は言う。 現在、太陽系外惑星の直接観測例はほとんどない。これまでに300以上の太陽系外惑星が確認されているが、そのほとんどは間接的な証拠に基づくものだ。例えば質量の大きい惑星の場合は、その重力が原因となって親星の発する光に“ゆらぎ”が生じることになる。そのような間接的な証拠から、木星規模の太陽系外惑星がいくつか見つかっている。 また、恒星の重力場は巨大レンズのように背景光を増強する性質を持つが、その周りを惑星が公転している場合、その増強効果は定期的にわずかな増大を見せる。これが証拠となって発見された惑星もある。さらに、地球から見て恒星の前を惑星が通過(トランジット)するときに、恒星の光が一時的に弱まることになる。 太陽系外惑星を直接撮影した画像は、2004年に初めて天文学者により公開された。その惑星は褐色矮星という薄暗い星の周りを公転しているため、確認が比較的容易だったのである。 前出のラフレニエール氏が過去の記録をさかのぼって惑星を探し始めたのは、HR 8799の周りを公転している可能性のある惑星を探すため、1998年のハッブル画像が科学者によって調査されたというニュースがきっかけだった。しかしその調査では何も成果が出ていない。 星の光を除去する手法について同氏は、「まず用意するのは、同じ装置、同じ波長で撮影された異なる恒星の複数の画像だ」と説明する。それらの画像がコンピュータープログラムによって結合され、調査対象の恒星と光が類似している模擬恒星が作られる。対象の恒星の画像からその光を差し引くことで、惑星が公転していればそれが明るい点として見えるようになる。 カリフォルニア大学バークレー校の天文学者ポール・カラス氏は、フォーマルハウトという恒星の周りにある“ちり”の環を撮影した2005年のハッブル画像を比較分析し、太陽系外惑星を発見した。これが初の可視光による太陽系外惑星の直接観測となった。 天文学者はその位置に惑星が存在することを1980年代から推測していたが、その存在を確定するにはさらなる観測が必要だった。最終的に発見が発表されたのは2008年のことである。 「ある天体が、背景にかすかに見えている恒星ではなく惑星であることを証明するには、その天体が恒星と一緒に移動していることを示す証拠が必要となる。ハッブルの過去のデータに当たれば、惑星の候補を見つけることはできる。しかしそれが惑星であると断定するには、その後の観測が不可欠だ。背後にある遠くの恒星との相対的な位置関係がずれた後の様子を観測する必要がある」とカラス氏は説明する。 惑星を確実に発見するには、宇宙望遠鏡で撮影された過去の画像と地上の観測で得られた新しいデータの両面からアプローチする必要があるだろうと同氏は考えている。 Victoria Jaggard for National Geographic News 【関連コンテンツ】 ・ ハッブル宇宙望遠鏡 (プロフィール) ・ ハッブルが写す宇宙 (写真集) ・ 太陽系外の巨大惑星「スーパーアース」を発見 ・ 系外惑星HD 189733bの想像図 ・ ハッブル宇宙望遠鏡 (動画)
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