◇与えた大人にも責任
「携帯に依存したり、縛られる子供は少なくない。医学的には『依存』とは、不適切な場所で使い、なくなると探索行動に出ること。授業中に使うのも依存症の傾向がある」。戸田市で不登校やうつ状態の中高生を大勢カウンセリングしてきた小児神経医の平岩幹男さんは語る。
平岩医師が約2年前に診察した中学2年の女子生徒は、携帯のメールから人間関係がこじれ、うつ状態に陥り不登校になった。メールの返信が遅れ友人との関係が壊れることを恐れてさらに携帯を手放せなくなったが、心の休養のため、話し合って約2カ月持たないことにした。再び登校してからは、学校に協力してもらい、クラスで夜9時〜翌朝7時は互いにメールをしないというルールを作ってもらった。女子生徒は少しずつ元気を取り戻したという。
平岩医師は「うつなどの子供の相談のうち、携帯が関係したものは年30件くらい」と話す。未明まで携帯に熱中し、生活リズムが狂い不登校になったり、「すぐメールを返信しなくちゃ」と、風呂まで持ち込んだりする子もいる。
埼玉医科大で児童青年精神医学を担当する横山富士男准教授も約1年前、携帯電話を長時間使う不登校の中学2年の女子生徒を診察した。部屋にこもり、メールやブログを見続ける。無理に取り上げると状態が悪化する可能性もあり、親と相談して使用時間を管理しようとしたが、「肌身離さず持ち、隠れて使う。指導が難しかった」と振り返る。
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「アウトメディア」。携帯電話やテレビ、ゲーム漬けになりがちな子供たちに、接触時間を自分でコントロールすることを覚えさせる取り組みを、蕨市の教育関係者はこう呼んでいる。
夏、冬の長期休みに、子供がテレビやゲームを「一日中しない」「時間を決めて使う」などと目標を決め、家族ぐるみで達成を目指す。5年前から市内の一部の小学校で始まり、08年度は市内の公立小、中学校全10校が参加した。
市立第一中学では冬休み、約8割の生徒が挑戦した。担当した和田敏子・養護教諭は「テレビやパソコンを一日中見ないでいられても、携帯は無理だったという感想があった。目標を達成できなくても、日ごろそれだけ使っていることを実感するのが大切」と語る。
最初に取り組みを始めた市立塚越小の成田弘子教諭は「携帯電話もゲームも、大人には子供に与えてしまった責任がある。使い方のルールや限度をどう教えるのかは、家庭と学校の共通の課題です」と話す。【桐野耕一】=つづく
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4月4日朝刊
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