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時評コラム

松浦晋也の「宇宙開発を読む」

近づく「テポドン2」打ち上げ

北朝鮮のロケット開発者は追い詰められている?

 ここからは私の推測になる。

 北朝鮮のロケット開発関係者はかなり追いつめられた状況にあるのではないだろうか。開発を急かされ、成功を要求され、その一方で開発に必要な資金、人員、設備などのリソースは十分ではないのではないか。

 1998年のテポドン1号は衛星の打ち上げに失敗した。北朝鮮は衛星「光明星1号」の打ち上げに成功したと宣伝したが、世界中のどこも衛星からの電波を受信できなかった。光明星1号は第3段のトラブルによって太平洋に落下したと推定された。2006年のテポドン2号は、打ち上げ直後に爆発し、破片となって日本海に落下した。

 トラブルが続いているにも関わらず、北朝鮮はトラブルシューティングを行って同型機の再打ち上げに挑むのではなく、より大型のロケットである、今回の「銀河2号」の開発へと進んでいる。明らかに政治の側が「核弾頭を搭載可能で、長距離の射程を実現するロケット技術」を早急に要求しているためだろう。それに対して技術者達は開発のリソースをロケットの大型化に集中することで応えているのではないだろうか。

 結果として追跡船のような確実な技術開発に必須の要素が後回しになっており、その状況下で少しでも成功確率を上げるために真東への打ち上げが選択されたと考えると、一応の筋道は通っている。

 いずれにせよ、今回のロケット発射の試みは、北朝鮮のロケット技術の水準を知るチャンスでもある。政治面のみならず技術面においても、徹底した情報収集が必須だろう。

松浦晋也(まつうら・しんや)
ノンフィクション・ライター。 1962年、東京都出身。日経BP社記者として、1988年~1992年に宇宙開発の取材に従事。主に航空宇宙分野で執筆活動を行っている。著書に『われらの有人宇宙船』(裳華房)、『国産ロケットはなぜ墜ちるのか』(日経BP社)、火星探査機『のぞみ』の開発と運用を追った『恐るべき旅路』(朝日ソノラマ)、スペースシャトルの設計が抱える問題点を指摘した『スペースシャトルの落日』(エクスナレッジ)などがある。
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