7.天体写真はケータイでも撮れる
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 星にあこがれる人には、肉眼で見る星ではなくて、写真に撮られた星から入っている場合も多いでしょう。まぁ写真なら、いつでもどこでも見れますから。
 そこから「星を実際に見てみたい」という方向ではなく、「自分でも星の写真を撮ってみたい」という方向に向かう人もいます。
 しかし、あくまで初心者ですから、どうやれば写真が撮れるのか、よくわかりません。わかってたら初心者では無いでしょう。まぁ初心者向けの解説書ももちろんありますが。

 ときに、天体写真を撮るには、カメラ(当然)と、なぜか天体望遠鏡が必須だと考えている人が非常に多いです。
 仕上がりは後回しにして(初心者ですから)、月やアンドロメダ銀河、オリオン大星雲などの撮影には、天体望遠鏡は必須ではありません。カメラレンズ(300mmくらいの望遠)があれば、それで何とかなります。
 右側の「天の川銀河中心部」の写真は、デジタル一眼に50mmの標準レンズで2分間露出しただけです。望遠レンズすら使っていません。

 天体写真には大きく分けて2種類あり、ひとつは望遠レンズや天体望遠鏡などを使って、大きく撮る拡大撮影、もうひとつは標準レンズから広角レンズ、あるいは魚眼レンズなどを使って、天体というより”星空”を撮る星野撮影です。右の写真も、星野撮影に分類されます。

 まず、長時間露出できるカメラがあれば、すぐにでも始められる、星野撮影について説明してみましょう。
 星野撮影にもまた2種類ほどあって、普通の三脚にカメラを載せて撮影する固定撮影(静止撮影)と、モーター等による日周運動追尾の赤道儀に載せて撮影する追尾撮影(ガイド撮影)があります。上の天の川が追尾撮影、その下の天の川が固定撮影です。
 固定撮影の場合、露出時間に応じて、日周運動で星が線のように写りますが、一緒に写し込んだ地上風景・地上物はピッタリと止まったまま写るので、特殊な風景写真のようになります。ISO感度を上げて露出時間を短めにするとか、より広角のレンズを使えば、星の流れはあまり目立たなくなりますが、そのへんは撮影意図好みで、いろいろやってみて下さい。

 長時間露出のできるコンパクトデジカメでも、ある程度までは写りますが、ボディの大きい一眼レフと違って、CCDもかなり小さいものが搭載されています。もしデジタル一眼と画素数が同じだとしたら、単純に考えてもCCDセンサー1つが受ける光の量は相応になくなるので、同じようには写りません。ただし、追尾撮影の場合であれば、何枚も同じ構図の写真を撮影して、後でパソコンで重ね処理をする事で擬似的に感度を上げると共にノイズを減らす事が可能かもしれません。(カメラが内蔵しているハード・ソフトの特性、空・光害の状態、写真の写り具合によるので、一概には言えませんが)
 追尾撮影は、最近はもっぱら小型軽量な写真用赤道儀(ポータブル赤道儀)を使います。(普通の望遠鏡を載せる赤道儀でも構いません)
 写真用赤道儀として有名なのは、ケンコーのスカイメモR、ビクセンのGPガイドパック、最近ではより小型で簡易なアイベルのCD−1などがあります。
(※GPガイドパックはかなり強度の高い専用小型三脚とセットですが、スカイメモ、CD-1は三脚は別売りです。よく使われるのは、マンフロットの#410ギア雲台+三脚ですが、ヘタをするとGPガイドパックより重装備になるので、考えて選んで下さい。)

 流星の撮影も基本的には星野撮影と同じです。ただ、どこに流れるかわからない流星をうまく写野に収めなくてはならないので、できるだけ広角なレンズを使った方がいいですが、あまり広角すぎるレンズを使うと、今度は流星の像が小さくなりすぎて、流れた筈なのに写っていない、という現象が発生し始めます。カメラの星に対する感度にもよりますが、経験上では35mm換算25〜40mmあたりが失敗が少ない様です。(16〜8mmの魚眼レンズでは「流れたのに写ってない」現象が多発しました)

 もし赤道儀が用意できる(あるいは写真を撮ると割り切って赤道儀を買う)のであれば、ものは試しで、望遠レンズで適当な星雲や星団に向けて、数分間、追尾しながら露出してみましょう。右の写真のオリオン大星雲は、オリオン座が見えていれば肉眼でも簡単に見つけられるので、いい練習対象になります。
 この方法の場合、追尾は基本的に赤道儀任せになるので、赤道儀の極軸合わせは、できるだけ厳密に行う必要があります。三脚もしっかり・きっちりと設置しないと、風でブレたりします。

 それでも、どうしてもモーターやギアの精度の関係で追尾にゆらぎが出る事があるので、可能であれば、小さめののでいいので望遠鏡を一緒に赤道儀に載せ、望遠鏡で何か見やすい星を見ながら、追尾がズレていないか確認しつつ露出を行ったりします。(ズレがわかる様に、十字線・レティクルが入っていて、線が光るガイドアイピースやガイドアダプタと呼ばれるものを使います)
 モーターに頼らず、手動で頑張って追尾する方法もあります。根気のいる作業ですが、必要なのは根気だけなので、音楽でも聴きながら、諦めて追尾して下さい。経緯台を物干し台にひっかけて極軸方向に傾け、手動で追尾撮影した、という有名な彗星の写真もあります。

 望遠鏡を使う拡大撮影(や直焦撮影)も、この方法に準じます。
 カメラを取り付けた望遠鏡と、追尾のズレを確認・修正するためのサブスコープです。サブスコープを使わず、ひたすら赤道儀を信じて祈る方法や、サブスコープにCCDカメラを取り付けて、赤道儀のコントローラとの間に制御装置を付けて、自動で追尾補正をする方法もあります。

 いずれにしても、撮影した後、何らかの画像処理は必要になってきます。
 天体写真専用に作られたアストロアーツステライメージというソフトもありますが、プリンタなどのおまけで付いてきたフォトショップエレメンツや、使い方次第ではフリーウェアでも処理自体は可能です。

 これらの他に、月や惑星などなら、コンパクトデジカメや、携帯電話のカメラ機能でも撮影できる方法があります。
 望遠鏡を人間の目で覗き込むのと同じ方法で、カメラのレンズで覗くようにして、そのまま撮影します。これをコリメート撮影、と呼びます。
 コリメート法自体はたいして珍しいものではないのですが、「伊○家の食卓」では、双眼鏡を使ったコリメート撮影で、授業参観や運動会の子供を拡大して撮影する、という”裏技”が紹介され、あまつさえ、それが賞金を取ってしまいました。世の中間違ってます
 コリメート撮影には本来、正しいルールや作法という物は無いのですが、先のアイピースの項目でも触れた、レンズにかなり近寄らないと見えないアイピースより、メガネをしたままでも覗けるようなアイピースの方が、難易度は低い様です。
 カメラのレンズを慎重に近づけて、うまくカメラが像を結べる位置を探し、ポイントがわかったら、ブレないようにシャッターボタンを押す、です。(アイピースとカメラの組合せによって、レンズをべた付けした方がいい場合と、少し浮かさないといけない場合があります。)
 使用するカメラは、一眼レフの様なものより、それこそ携帯デジカメの様にレンズの小さい物の方がやりやすい筈です。
 オートフォーカスも効く筈ですが、このあたりは経験して慣れておくれ、としか言い様がありません。最初は昼間の地上物で練習してみて下さい。

 一時期、テレビショッピングに望遠鏡が出る事がありました。今でも出てるかもしれませんが、「使い捨てカメラでも天体写真が撮れるアダプタをセットにして〜」なんてやってました。これも、単なるコリメート法です。
 コリメート撮影をやりやすくするアダプタは、もちろん現在でも天体写真用品として存在します。

 最近は、特に惑星の写真で、ビデオで動画を撮影して、画像データをステライメージやRegistaxでコンポジット処理する方法が主流になってきてますが、これも(仕上がりは後回しにすれば)ビデオカメラでのコリメート撮影で可能です。月なら、そのまま観賞用に耐える撮影はできます。
 ビデオカメラの取り付けは、↑のコリメートアダプタでがんばる方法と、撮影アダプタや撮影用アイピースに切られているネジに、ビデオカメラのレンズ部分のフィルター用ネジを(場合によってはステップアップ/ステップダウンリングなどを介して)取り付けます。
 但し、その場合はメモリーカード記録式、あるいはそれに準じる大きさ・重さのビデオカメラを使用しないと、自重でレンズ部分から破壊しますので注意して下さい。
 作例は少数ですが、コンパクトデジカメの動画撮影機能でも成功例があります(ファイル形式の変換が必要な場合があります)。

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