鳩山邦夫総務相が3日、日本郵政の西川善文社長に、かんぽの宿などのオリックス不動産への譲渡問題で不適切な点があったとして、業務改善を命じた。
かんぽの宿が国民共有の財産であるという認識が欠如していたという基本認識のもと、収益改善努力の不足や、一括で約109億円の譲渡価格の不当性などを指摘し、6月末までの改善策提出を求めた。
この業務改善命令は総務省が日本郵政に提出を求めたかんぽの宿譲渡に関する資料を検討分析し、16の問題点を洗い出した上で決定した。かんぽの宿職員の雇用確保が十分なものではなかったことや、オリックス不動産が取得した場合の譲渡禁止が実際には尻抜けだったことなどが明らかにされている。日本郵政は応募者に入札条件や手続きを随時、変更や撤回できることにもなっていた。
純粋の民間企業なら、あまり問題にならない論点もあるが、日本郵政は民営化されているとはいえ、現段階では国が100%株式を保有している法律に基づく会社である。郵便局会社などグループ各社も同様だ。また、政府は郵便事業や郵便局ネットワークは将来的にも維持していくことを約束している。
利潤動機最優先で動く民間企業とは異なる。そうした企業の保有するかんぽの宿は広い意味で国民の資産とみるべきなのである。
政府の規制改革に長年かかわってきた宮内義彦氏が率いるオリックスグループのオリックス不動産への譲渡断念が、政治的判断のみならず、譲渡への国民の批判の高まりに配慮したことは間違いない。
政府や日本郵政には郵政民営化を国民利益に沿ったものにする責任がある。この視点に立てば、今回の問題指摘には有益な点が多い。透明性が高く、公正な国民的財産の処理手続きができていなかった点や、日本郵政内での意思決定など企業統治が十分でなかった点は、早急に改善しなければならない。日本郵政の第三者委員会で検討が進められている資産売却のあり方にも踏み込んだ内容にしなければならない。
当然のことではあるが、資産売却などに当たっては一点の疑いもない手続きが求められる。今回のような「出来レース」の疑いの生ずるような売却方法は論外である。
いま、日本郵政が求められていることは郵便事業のサービス内容や質の維持・向上である。そのための経営体質の強化は国民の望むところである。政府もそのための支援は惜しんではならない。
総務省はなぜ、今回の不適正な譲渡をチェックできなかったのか。体制の立て直しが必要だ。
毎日新聞 2009年4月5日 東京朝刊