酒席で飲まずに仲間を送る人を決めて飲酒運転を防ぐ「ハンドルキーパー運動」を広めようと、福岡県飯塚市の近畿大産業理工学部の学生3人が市内11の飲食店に協力を呼びかけ、運転役のハンドルキーパーに店が特典を提供するキャンペーンを実現させた。この運動は06年8月の福岡市での3児死亡事故を機にスタート。特典をつける飲食チェーンなどは増えているが、学生が主導する取り組みは珍しいという。
3人は同大でデザインを学ぶ3年生の黒川友紀奈さん(21)、原絵美子さん(21)、福田昌悟さん(21)。
昨秋、授業で飲酒運転撲滅のポスターを作った。その後の話し合いでハンドルキーパー運動が話題になり「はじけたいから1人だけお酒を飲めないのはいや」と否定的な声が出たのがきっかけ。「ハンドルキーパーをするとお得」を合言葉に取り組むことになった。
キャンペーンは、運転役を務めると11店共通の台紙にスタンプを1個押し、3個たまると500~1000円分のソフトドリンクなどのサービスがある、というもの。
3人はスタンプを押す台紙のほか、運転役の目印として箸袋に付ける帯、協力店に張るステッカーを製作。オリジナルのロゴもデザインした。年明けからは飛び込みで協力店探し。「酒を飲みに来る客に頼みにくい」と断る店もあったが、飲酒運転防止を訴えて回るうちに、協力してくれる店も増えていった。
ハンドルキーパー運動は全日本交通安全協会が06年10月から始めた。特典をつける店も広がり、飲食チェーン「ウエスト」(本社・福岡市)は焼き肉店の大半で運転役にソフトドリンク1杯をサービス。「今は店員が尋ねなくても自分から『車を運転するので酒は飲まない』という人がほとんど」と話す。
警察庁によると、全国の飲酒運転事故は00年から減少を続けているが、3児死亡事故後の07年は前年より約35%も減り、08年は約18%減の6219件。
飯塚市でのキャンペーンは5月初めまで。参加する飲食店「たらふく亭」の井上直美さん(59)は「以前からこの運動に取り組んでいたが、学生の提案には感心した。応援していきたい」。原さんは「これをきっかけに運動がもっと広がってほしい」と期待を込めた。【井上元宏】
2009年4月4日