UPDATE6: 白川日銀総裁記者会見の一問一答

2009年 03月 18日 19:53 JST
 
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ような認識になる」

 

 「長期の資金供給を選んだ理由については、中央銀行は金融市場に対して資金を供給していくという時に、短期の手段と長期の手段、両方を合わせ持つことが必要だと思う。もし、短期の資金供給手段だけでは、毎日膨大な量のオペレーションを繰り返さなないといけないということである。個々の市場参加者からみると、あまりにも日々の供給金額が大きい。その金額について確実に調達できるかどうか不安が残るということは、やはり市場にとってマイナスだというように思う。他方、長期の資金供給手段だけでやると、中央銀行からすると資産サイドが固定化されてしまう。短期、長期のバランスを考えて、先々の銀行券と国債のバランスを考えて、今回決定した金額であれば、そうしたバランスが達成できると判断した」

 

 ──長期国債買い入れ増額分4000億円の意味を聞きたい。長期国債買い入れで、長期金利を安定させたいとか、それにより景気の下支えをしたいとの意図もあるのか。

 

 「4000億円増額については、先ほどからの返事に尽きている。長期金利の水準に影響を与えることを意識してるかといえば、そうした意識はない。例えば10年の金利を考えると、先行き10年間、経済がどの程度成長するか、物価はどの程度上がるか、ということに基本的に依存する。成長率や物価上昇率の予想についての不確実性が上乗せされてくるわけだ。もちろん、市場は、日々いろいろな材料で上がったり下がったりするが、結局、ならしてみると、そうしたことで長期金意の水準が決まってくると思う。もし日銀が物価安定を目指した金融政策でなく、それ以外の目的に焦点を絞ったかたちで金融政策を運営していくと、あるいは、そういうふうなオペを日銀が運営すると皆が見始めると、多分それは長期金利にとってむしろマイナスになる、長期金利が上がってしまうということになる。考えてみると、この10年近く、日本の国債残高は増えたが、長期金利は安定しているわけだが、その安定はどこから来ているかというと、政策との関係でいくと、日本銀行の政策運営に対する信頼が維持されているということだと思っている」

  

 ──海外の中央銀行が長期国債を買い入れる動きと、今回の日銀の増額との関係は。

 

 「ほかの国の中央銀行の金融政策についてコメントするのは変だが、われわれ自身の判断は、先ほど申し上げたことに尽きる。どの国の中央銀行も経済・金融情勢が厳しい。その中で最適な政策を考えている。その結果、イングランド銀行は先般、長期国債を含めてCP、社債の買い入れを決定した。イングランド銀行の場合は、オペレーション上はイングランド銀行が買っているが、それに伴う損益は政府が負担する。純粋にイングランド銀行のオペレーションと言っていいかわからない。FRBについては、きのう、きょうとFOMCが開かれており、私がコメントするのは変」

 

 ──今後、一段と経済が悪くなるリスクがある。そうした時に日銀券ルールを見直すことになるのか、それとも堅持へのこだわりがあるのか。

 

 「日本銀行の使命は、日銀法に定められた物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資する、金融システムの安定に貢献するという2つ。この2つに照らして仕事をやっていくということに尽きる。その上で、具体的にどのような政策がいいかは、その時点で考えていく。金融市場の安定は非常に大事な仕事。金融市場、金融システムの安定は中央銀行にとって非常に大事というのは、このポストに就く以前からの堅い信念。金融市場の安定を実現していく上で、いろいろな方法があると思う。今回の国債買い入れの増額は、円滑な金融調節を行っていく上で必要と判断した。金融市場の安定は、さまざまな措置によって実行されるもの。長期国債オペをやるか、やらないかで金融市場の安定についての熱意が測られるという関係ではない。長期国債オペも必要な手段の1つ」

 「日銀券ルール、どの政策もそうだが、その時の政策委員会のメンバーが決める。私がきょう申し上げていることは、きょう議論に参加した政策委員会メンバーの意見を踏まえて発言しているということ」

 

 ──長期国債増額に対する政策委員の意見のばらつきはなかったのか。

 

 「全員が4000億円(増額)が適当との判断だった」

 

 ──長期国債買い入れだが、だんだん額を増やしてきて、今残高が46兆円だが、日銀が長期国債を保有するリスクをどうみるか。将来減らすということは可能なのか。

 

 「国債は買い入れて満期を迎えると、償還される。毎年年末に翌年の国債の償還の扱いを日銀は公表しているが、基本ルールは、オペで買った国債が満期になったら短期国債に乗り換えて、短期国債が償還を迎えたら、現金で償還するというふうに行っている。満期を向かえたら、基本的にはなくなっていくということだ。銀行券の先々の姿をみながらコントロールしており、もし銀行券を上回って国債を買っていくということは、逆にいうと、これはインフレになっていくことを意味するわけだが、その時は、そうならないように、短期のオペで資金を吸収するとか、あるいは長期国債の残高を少しずつ減らしていくということを、少し長い姿をみながら、コントロールしていく。いきなりコントロールすると、それは市場に対してショックが大きくなる。いつもオペの運営については極力、予測可能性を高めた運営が望ましいといっているのは、そういう趣旨である。中央銀行の決算が赤字になるというのは、頻繁ではないが、時々他国でも起きている。日銀でも、昭和46年に円の切り上げがあった時に、赤字になったように記憶している。中央銀行は仮に単年度で赤字になっても、基本的には銀行券を出し、国債などを運用するので、収益が上がってくる組織ではあるが、あまり赤字が大きくなってきて、例えば極端な話、債務超過になりそうだとなってくると、いろいろな意味で金融政策運営あるいは通貨の信認に悪影響が及んでくる可能性がある。だから中央銀行はそれぞれの自己資本をしっかり持っている。われわれとしてリスクをコントロールしていくことは必要だ。ただし、日銀のリスクコントロールが最終的に、中央銀行の目的を遂行するために必要なことであるし、そのリスク管理がすべてに優先するわけではなく、政策目的を適切に遂行するためにリスク管理をしっかりやっていくということだ。国債のオペというものは、本質的に、そういう意味でリスクがあると思っているわけではない」

  

 ──日銀券ルールを見直すことは考えていないというのは、白川総裁や今の政策委員会メンバーが在籍中は見直しはあり得ないということでいいか。

 

 「日銀の今回の決定は、銀行券ルールに従って行っている。金融調節の必要性に基づいて長期国債オペを運営していくということ」

 

 ──長期国債買い入れ増は金融市場の安定確保ということだが、債券市場の安定という要素はあるのか。

 

 「金融市場は全て連関しており、債券市場を除く金融市場という概念はない。どの市場と特定したかたちではなく、これだけ経済・金融情勢が厳しい中で潤沢に資金を供給することが、金融市場・金融システムの安定に必要ということ。その際、日銀が資金を供給するパイプとして短期のオペと長期のオペ(があり)、そのバランスという意味で長期のオペ手段をより活用しようということ」

 ──長期国債買い入れの増額で短期オペが減額される可能性があるのか。減額さればなければ当座預金残高が増えるが、その狙いがあるのか。

 

 「金融市場の安定を確保していく目的を実現していく上で、市場で流動性需要が高まれば、それに対して当然、量を供給していかなければならない。今この時点でどの程度の流動性需要が増大するのかわからないが、もし流動性需要が増大すれば、総額として供給量が増えてくる。さきほど申し上げた短期と長期のバランスは総量一定の下でのバランスだが、流動性需要が高まれば全体としての供給量が増える。それはあくまでも安定を実現する結果として量が増えていくということ。短期オペの金額がどうなるかは全体の姿に依存する」

 

 ──政府と日銀の意思疎通をどうみるか。政府がやるべきこを日銀が肩代わりしているのではないかと思われる政策もなきにしもあらずと思われるが。

 

 「一般的な政府と日銀間の意思疎通については十分はかっていると思う。例えばCPとか社債とか、いろいろな信用リスクを負担する政策にもっと踏み込むことの是非というようなテーマでよく議論される。昨日は劣後ローンの発表したが、今朝の新聞のコメントは2つの相反するものがあり、ひとつは、迫力不足、もっと踏み込めというもの。もうひとつは、こんなに踏み込んで大丈夫か、日銀の財務の健全性は本当に良いのか、というもの。2つの議論がでるのは当然と思うが、われわれは物価安定と金融システムの安定という目的遂行のために、どういうことが良いのかを一方で考える。しかし、その結果、損失を大きく計上する場合には、国民から通貨を発行するという権限を預かっているという立場なので、その結果、通貨を管理・コントロールしていく能力自体が疑われると、国民に迷惑をかけてしまう。そのバランスの中で、最適な政策を常に模索しているということだ。日銀は今6兆円の自己資本があるが、これをどう使うのが最適であるのかということを常に考えている。仮に万一損失が発生した場合には、勿論できるだけ発生しないようにしているが、中央銀行として自己資本復元の努力をしていく。つまり納付金の減少を行うのが基本となるが、そうしたことについて政府の理解を得てい

 
 

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