「不安で心が押しつぶされそうです」。新年度に再出発を期する人がいる一方で、就職が決まらないまま大学を卒業し、将来に希望を見いだせない若者も少なくない。採用が決まっていた企業から内定辞退を強要された関西在住の女性(22)もその一人。毎日新聞の取材に応じ、不安と怒りがあふれる胸中を明かした。企業は補償もしていない。女性は割り切れない思いを抱えながら、厳しさを増す就職戦線に再び挑む。
3月まで関西の私立大の学生だった。接客の仕事がしたいと、07年末ごろからホテルや外食などサービス業を中心に就職活動を始めた。約60社の試験や面接を受け、昨年夏、大阪市内の和食チェーン店経営会社に内定。大好きな和服が仕事着であることに魅力を感じ、春からの新生活に夢を膨らませていた。
暗転したのは昨年末。企業の採用担当者から電話で「業績が悪化した。グループ内の別会社に移ってほしい」と告げられた。しかしその後、企業から連絡は途絶え、女性が電話をしても担当者は出なくなった。
両親にこれ以上金銭的な負担をかけられないと思い、就職先が決まらないまま女性は今春、大学を卒業した。4月1日はアパートの部屋で入社式のニュースを見た。これからは両親からの仕送りもない。
アルバイトを探しながら就職活動を続ける。
「企業は内定を取り消したことを謝ってほしい。そうでなければ前を向けない。次は安定したしっかりとした会社を見つける」と話した。【日野行介】
毎日新聞 2009年4月4日 15時00分(最終更新 4月4日 15時00分)