偏見一掃へ　冊子手作り

　那覇市に住む新田宗哲さん（５５）が統合失調症への偏見一掃や症状への対処法、薬や医師とのつきあい方などをまとめ、発信している。短い文章に自分で撮った写真を付けた小冊子は「当事者ならでは」の視点で、病への正しい理解と回復へのヒントであふれている。「税金（生活保護）をもらっているから、社会にお返ししたい」という気持ちが活動の支えだ。（与那嶺一枝）

　新田さんは名古屋で大学浪人をしていた２１歳のときに発症。沖縄に戻って闘病生活を送り、約５年後には病院内での清掃作業ができるまでに症状が安定した。

　しかし、一般企業への就職活動では面接さえ拒否され、就職しても病名を明かすと同僚の態度が一変した。そのとき、４０代半ば。「まだ若い後輩たちに同じ体験をさせたくないから闘おう」と気持ちを固めた。以降、新聞投書やデイケア仲間へのアドバイスなどを小冊子にまとめて医師やケースワーカー、患者に渡している。

　小冊子のうち２冊は、長年悩まされてきた幻聴について書いた。幻聴は自分だけが知っていて、触れられたくないことが聞こえてくるから驚き、パニックに襲われると説明。「幻聴の言うことを否定すること。その結果、何も起こらないことを理解する。命令されたら後でやるからと答える」などと具体的に記述。新田さんはこうした自分なりの対処法を実践、今ではほとんど気にならなくなった。

　投薬に対する考えも明確だ。「幻聴が縁」で１３年前に結婚した妻の智恵子さん（５４）は以前、１日に計２４錠もの薬を飲んでいた。智恵子さんから「目がチカチカする」と聞き、薬の副作用とみて医師に相談。計５錠までに減らした。

　「だるいのは薬の副作用もあるが、患者は医者に症状を言うと逆に薬が増えると思って悩みを話さない」と指摘。当事者として病に詳しいことから「私たちも病気（統合失調症）のプロ」と語っている。