きょうのコラム「時鐘」 2009年4月4日

 北の空を仰いで緊張する日がやってきた。初めて事前予告があったせいで、北朝鮮のミサイルは発射前から上を下への大騒ぎである

映画の予告編は面白い。話の筋が伏せられていても、テンポのある映像に目を奪われる。予告編制作は助監督の仕事である。能美市出身のシナリオライター、佐々木守さんは助監督の経験があり、予告編も手掛けた。「厄介なんだよ」と、聞かされた

予告編に興奮し、本編ではがっかり、ということが時折ある。監督の顔に泥を塗る出来の良過ぎる予告編はまずい。が、普段あごで使われる助監督にとって、予告編は才能発揮の好機である。認められて監督昇進の話がやってくるかもしれない。だから、と、佐々木さんは続けた。「監督に気を使う振りをしながらも、助監督は予告編に血眼になった」

ミサイル劇の予告編で、国際社会の複雑な駆け引きの一端は見えた。ハラハラ、ドキドキの緊張感も味わった。これが瀬戸際外交の演出の1つというのなら、かの地に優秀な助監督がいることはよく分かった

後は、本番である。凡庸な監督が、赤恥をかいてくれればいい。