経済 あなた発
体験、疑問、意見をお寄せ下さい
「独白 金融危機編」も連載中
| 【社会】誤報騒ぎ列島混乱 北ミサイル 『一体何を信じたら』2009年4月4日 夕刊 
 北朝鮮による「人工衛星」名目の長距離弾道弾の打ち上げが予告された四日、上空通過が予測された東北地方では、自治体職員が発射確認の際の住民への伝達や不測の事態に備える態勢を敷いた。防衛省では幹部や職員が朝から出勤して警戒した。しかし、政府は飛翔(ひしょう)体の発射を伝えた数分後に「誤探知」とする訂正を出した。秋田県でも誤った発射情報を出すトラブルが起きた。 ◆首都圏政府によるミサイル発射の誤情報。首都圏の自治体や市民からは「仕方ない」との声も聞かれたが、「混乱させるだけ」との批判も聞かれた。 埼玉県庁には四日午後、エムネットで発射情報が流れた数分後に誤探知との情報が届いたという。待機していた危機管理課の担当者は「市町村に情報を送ろうとしたが、誤探知情報が来たので、急きょとりやめた。県は情報が欲しい立場なので、誤探知も仕方ない」と話した。 神奈川県では「市町村からの問い合わせはなく、特に混乱はない。なぜ誤情報が流れたのか分からず、今の段階では何も言えない」とした。 横浜市南区の無職神谷行男さん(76)は「慌てて不確かな情報を流しても混乱するだけ。これでは、戦時中の空襲警報と一緒。国は危機管理体制をもっとしっかりして」と話した。 東京都新宿区の男性会社員(23)は「日本は北朝鮮の発射行動に対し、いろいろ手を打っていたのに肝心なところで間違ってしまって」と批判。台東区の主婦(29)は「政府が出す情報を信じていたのに。いったい、何を信じたらいいのか。原因をきちんと解明してほしい」と不安げ。 東京・有楽町で三重県四日市市の主婦福島泰子さん(70)は「法事で上京する新幹線内でも(発射を)気にしていた。誤報はとんでもない。政府には慎重にやってほしい」とあきれ顔。茨城県取手市の主婦阿部滝子さん(58)は「東京は心配なさそうだけど、東北地方や漁業に従事する人は生活にかかわってくる。不安を増やさないでほしい」と話した。 ◆防衛省 突然の速報驚き広がる「北朝鮮による飛翔体発射」の一報がテレビで伝えられた四日午後零時十六分、防衛省では驚きが広がった。ミサイルの発射熱を探知する米の早期警戒衛星による第一報は防衛省に届く。防衛省に何の連絡もないのにテレビが速報したからだ。 首相官邸から自治体に一報を伝える緊急連絡網「エムネット」を通して「発射」と伝えたこと自体が誤報だったとみられる。これを政府は「誤探知」と公表したが、エムネットにミサイル探知能力はない。政府は発射情報をめぐり、混乱した。 防衛省では北朝鮮が「人工衛星」として発射する長距離弾道ミサイルの予告時間、「四日午前十一時」を過ぎ、じりじりした空気が広がった。「なかなか撃たないなあ」と幹部。「神経戦か」と話す職員もいる。 ◆東北地方 秋田でも『発射』住民伝達直後に訂正北朝鮮が四日、ミサイル発射を「間もなく」と発表したのを受け、上空を通過するとされる東北地方では緊張が一気に高まった。各自治体は落下を念頭に警戒態勢を強化。誤報騒ぎも起き、住民からは不安の声が上がった。 「間もなく打ち上げられる」。午前十時すぎ、テレビでテロップが流れると、岩手県の総合防災室に詰めた職員らが大声で内容を読み上げ、食い入るようにニュースに見入った。秋田県の災害対策本部では幹部が「気持ちを引き締めて」と訓示した。 地対空迎撃ミサイル「PAC3」が配備された陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)。日本海に向けられた発射機の先端がのぞく。隊員らが門の前に鉄条網でバリケードを作り、警戒に当たった。 陸自秋田駐屯地近くの飯島南町内会長神尾隆一さん(70)は「大丈夫だと言い聞かせるしかない」と話した。 「北朝鮮なので絶対に落ちない、とは言えない」(秋田県八峰町職員)。同町はミサイル発射前に「発射された」と住民に伝達、県が直後に打ち消す混乱も。 青森県・深浦漁業協同組合の森長保組合長(68)は、集団操業中の漁船の位置を確認するため、何度も電話を手に取るが「漁の最中だから、なかなかつながらない」と心配そうな表情。漁を終えて秋田県・八森漁港に戻ってきた男性(58)は「今はメバル漁の書き入れ時。漁を休むことは考えなかった」と話したが町に流れるアナウンスを気にかけていた。 盛岡市で通勤途中の会社員佐々木寛子さん(25)は「陸上に落下した場合の対応が詳しく伝わってきてない」と不安げ。団体職員男性(42)は「なぜ発射を断念させられなかったのか」と政府の対応を批判した。 
 |