2009年4月3日11時52分
宇宙で太陽エネルギーで発電し、地上に送って電力利用する「宇宙太陽光発電」の技術開発に、日本が乗り出す。5月に策定される政府の「宇宙基本計画」に盛り込まれる見通しになった。3〜5年後を目標に小型の人工衛星を打ち上げ、発電や送電の技術を確かめる実証試験に入る。
3日にあった政府の宇宙開発戦略本部(本部長・麻生首相)の専門調査会で基本計画の骨子案が示され、「宇宙太陽光発電」を環境・エネルギー対策の先端的研究に位置付けた。小型衛星による実証試験後、経済性などを見極め、実用化に向けた検討に入る。
人工衛星に取り付けた太陽電池パネルで発電し、大気や雲に吸収されにくい電磁波に変えて地上に送る案が検討されている。宇宙空間は天候に左右されず、昼夜を問わず安定した発電が可能。このため、地上の5〜10倍の効率で発電できると試算されている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が中心となって基礎研究を進めてきた。
宇宙太陽光発電は欧米でも検討されているが、人工衛星を打ち上げて試験する段階には達していない。
実現には、太陽光を効率的に電磁波に変えたり、それを地上に安全に送ったりする技術開発などの課題もある。
一方、月への有人探査について、骨子案は、1〜2年程度をかけて意義・目標などを改めて検討するなどとし、具体的な目標時期は示さなかった。月探査は、当面は二足歩行ロボットによる無人探査を優先する方針を示し、20年ごろの実現を目指すとした。
戦略本部の事務局が3月上旬に示した素案には「25〜30年ごろにロボットと宇宙飛行士が連携した本格的な探査計画」という表現が盛り込まれたが、有人探査には巨額な資金がかかり、人命のリスクも伴うため、専門調査会で「弾力的に考えた方がいい」といった意見が出ていた。(行方史郎)