県立こども病院(安曇野市豊科、宮坂勝之院長)は3日、これまで心臓移植でしか救命できなかった乳児(1歳以下)の拡張型心筋症に対し「ペースメーカー治療を5例実施し、4例で成功した」と発表した。全国に先駆けた治療で、宮坂院長は「国内では15歳未満への臓器移植が法律で規制され、(国際移植学会は)移植臓器の『自給自足』を各国に求める状況の中、新たな治療法で閉塞(へいそく)感を打開したかった」と述べた。
病院によると、拡張型心筋症の乳児患者は10万人に約2・6人で、心臓が収縮できず血液を送れなくなる病気。04年9月から先月までに2~13カ月の男女児5人に施術し、4人が成功し既に退院した。
治療には循環器科や心臓血管外科、麻酔科など各科が協力する「チーム医療」が不可欠。ペースメーカー(縦4センチ、横4・5センチ、厚さ約8ミリ)を開腹・挿入し、心筋に電極を縫合して心臓の働きを助ける。術後は月1回検査し、5~8年で電池を交換する。成長に伴う再手術は不要で、磁気の影響や激しい運動などを避ければ日常生活に支障はないという。
安河内(やすこうち)聡・循環器科部長(52)は年内に全国調査を実施予定で「全国の約40施設でこの治療が可能だろう。導入する施設が増えれば入院し薬物治療を続けている患者が退院できる」と語った。【渡辺諒】
毎日新聞 2009年4月4日 地方版