北朝鮮の「人工衛星」名目による長距離弾道ミサイルの発射準備を受け、防衛省が今週に入り、航空自衛隊の新型地上レーダー「FPS−5」を実戦モードに移行させたことが31日、分かった。探知・追尾能力を大幅に向上させたレーダーで、北朝鮮全域の上空を監視できる。すでに展開したイージス艦、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)と合わせ、迎撃に向け、自衛隊が保有するミサイル防衛(MD)システムはすべて準備が整った。
FPS−5は試験用レーダーとして平成15年度に完成し、千葉県にある防衛省施設で運用研究に使われている。18年度に解体予定だったが、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威を念頭に存続させた。20年度から23年度にかけて全国の4カ所に正式配備する予定で、3月31日には鹿児島県の下(しも)甑(こしき)島に初号機を配備した。
高性能の「SPY1レーダー」を搭載したイージス艦とともに、FPS−5は弾道ミサイルに対処するレーダー網の中核。正確な迎撃には不可欠なため、試験用を実戦転用する。今週から「弾道弾サーチモード」に入り、ビームを絞り照射距離の長い状態でミサイル発射に備えている。
FPS−5は、高速で落下して反射面積も小さい弾道ミサイルを探知・追尾できるよう性能を向上させたのが特徴。探知距離は従来型の「FPS−3」の倍近い。運用研究ではさまざまな飛翔体の追尾に成功しており、「ミサイルが日本上空に飛来すれば、必ずとらえられる」(自衛隊幹部)と信頼性は高い。
下甑島に配備されたFPS−5は情報伝達システムへの連接が未定で、北朝鮮がミサイルを発射すれば独自に航跡を確認する。全国7カ所にあるFPS−3も探知・追尾を行う。
地上レーダーでは米軍が青森県に配備している「Xバンドレーダー」も稼働する。FPS−5よりもさらに探知距離が長く、遠方監視に優れる。ミサイルの形状まで識別できるが、雨や雲で電波が減衰して探知能力が低下するため、天候の影響を受けにくいFPS−5と能力を補完し合う。
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