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エコノなび

東京〜大阪間 高速・夜行バス…脱「格安」で集客合戦

豪華シートで快眠可能/女性車両投入

 東京〜大阪間の交通手段として、若者やビジネスマンを中心に根強い人気があるのが、高速道路を走る高速バスや夜行バスです。飛行機や新幹線と比べて、料金は格安で、最近は豪華なシートで快適性を高めた車両も登場しています。記者が実際に乗車しながら、業界事情などを探ってみました。

(平井久之)

体験


夜行バスに乗り込む会社員や若者ら。価格の安さだけでなくサービスも多様化してきた(JR東京駅八重洲口のJRバス乗り場で)=平井久之撮影

 午後10時を過ぎたJR東京駅・八重洲口の夜行バス乗り場。大阪行きの最終の新幹線はなくなったが、大きな荷物を抱えた若者やスーツ姿のサラリーマンでにぎわう。大阪市内の男性会社員(42)は「仕事が長引いた時に、深夜バスを利用します。ホテルに泊まると予算オーバーなので」と苦笑した。

 記者は、取材で頻繁に東京に出張するが、新幹線がほとんどで、夜行バスは初体験だ。

 今回乗車したのは西日本ジェイアールバス(大阪市)とジェイアールバス関東(東京)共同運行の夜行バス「プレミアムドリーム号」。片道9910〜9310円と、バスでは“超高価格”ながら「快適な眠り」をPRして人気を集めている。

 平日の午後11時20分、八重洲口を出発。28の座席は、ほぼ満席で、半数程度はサラリーマン風の人だ。

 「クレイドル(ゆりかご)シート」と名付けられた大ぶりの座席は、背もたれと連動して座面が動き、最大156度のリクライニング機能がある。窮屈なイメージを持っていたが、身長178センチの記者でも、楽々と足を伸ばせる余裕がある。

 各席にはパック入り緑茶とぬれタオル、簡易スリッパ、毛布が用意され、1階席には、地上デジタル放送が見られるテレビがある。

 静岡県内のサービスエリアで1回の休憩を挟み、翌午前7時50分、JR大阪駅前に到着。約8時間の乗車だった。

 路面の段差の突き上げ感や揺れは、慣れるまで多少気になった。それでも、予想していたほど疲労感はなかった。

安さ

 東京〜大阪間をバスで移動する人は、全輸送機関のうち1%台に過ぎないとされる。主流は新幹線、飛行機だが、バスは「出張族」だけでなく、レジャー需要も多い。「車中泊」を取り入れた東京ディズニーリゾートツアーなどは、その代表例だ。

 バスの最大の魅力は、何と言っても料金の安さにある。

 東京〜大阪間で、新幹線(のぞみ指定席で通常期1万4050円、ネット予約なら1万3200円)や飛行機(普通運賃2万600円)の料金に対し、バスなら4000円台は珍しくない。

 「時間はかかっても安ければいい」という若者、「出張旅費を節約したい」といった会社員らの利用につながっているようだ。


規制緩和

 料金体系を含めて、バス業界に大きな影響を及ぼしたのは、旅行会社がバスを手配して輸送する「ツアーバス」の急増だ。

 2000年2月の規制緩和で貸し切りバス事業が免許制から許可制になって、新規参入が容易になったことが背景にある。

 利用者を増やそうと、多くは「片道3900円」などと安価な料金を前面に打ち出した。

 価格競争の結果、近鉄バスは「料金面では太刀打ちできず、影響をまともに受けた」という。近鉄バスの06年度の大阪〜東京・新宿間の乗客数は約1万2000人で、ピーク時の02年度から40%以上減った。さらに原油高が経営を圧迫し、担当者は「燃料の軽油価格が年3割のペースで急騰し、東京〜大阪間の路線は『体力勝負』です」と嘆く。

競争

 価格競争を避けて、独自色を打ち出して集客につなげる動きも出ている。

 高級志向はその一つだ。西日本ジェイアールバスの小川喜一営業部長は「バスは窮屈で疲れるという先入観を払しょくするため、クレイドルシートには従来の2倍の費用をかけています。結果的に高齢者や女性など利用者のすそ野は広がりました」と話す。

 同社は、新幹線や飛行機よりも遅い発車時間を生かし、深夜まで仕事が続いたり、翌日の朝早くから出張先で仕事があったりするビジネスマンらの需要も狙っている。ツアーバスの攻勢で、関東〜京阪神間の05年度の乗客数は85万人と、04年度(91万人)を割り込んだが、06年度は93万人に増えた。

 ツアーバスを含め、各社の戦略は多様化している。

 女性専用の車両、インターネット予約システム、乗車日までの早期購入割引など、サービスをアップして幅広い顧客を開拓しようという取り組みが目立っている。

 価格競争も一段と激しくなっている。

 「満席の場合は、東京〜大阪間は補助席利用で2100円」。こんな耳を疑うような料金も登場している。

 ツアーバスなどを巡っては、低料金をうたう業者に対して、安全性を疑問視する声も強まっています。07年2月、大阪府吹田市内で起きたスキーバス事故を契機に、国土交通省は安全対策の強化に乗り出しています。競争に伴う料金の値下がりは確かに朗報ですが、安全第一が前提にあるのは言うまでもありません。利用する際には、価格ばかりに目を向けず、サービスを含めた様々な点から業者を選ぶのが賢明です。

2008年01月31日  読売新聞)
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