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社説:G20サミット 地球規模の解決へ前進

 グローバルな危機はグローバルな解決策でしか克服できない--。金融サミットの議長を務めた英ブラウン首相が繰り返し唱えてきた言葉である。危機が地球規模で深まる中ロンドンに集った20カ国・地域(G20)の首脳は、地球規模の解決に向け、共に歩を進めることができた。トンネルの出口はまだ見えないが、さらなる一歩につなげてほしい。

 昨年11月のワシントン会議に続く2度目のG20サミットである。この間、事態は良くなるどころか、米国発の金融危機から地球規模の不況へと、急速に悪化した。今やどの国も深刻な失業問題を抱えている。他国を非難したり、「自国さえよければ」と保護主義策に走りたくなる誘惑は、5カ月前よりむしろ強まった。

 そんな中、最終的に対立を回避し、G20に参加していない新興国・途上国に配慮した総額1・1兆ドル(約110兆円)の資金支援策をまとめた意義は大きい。

 サミットを前に、独仏と米国との間に生じた亀裂が関心を集めた。金融危機の震源地となった米国が追加的な財政出動を他国に求めたとして、独仏が反発したものだ。しかし、今回の危機で最も犠牲になっているのは新興国や途上国である。彼らを支援することは主要国の責任であると同時に、自らの回復のためにも必要なことである。小さな一国であっても危機に陥れば影響が連鎖するのがグローバル化時代だからだ。

 サミットは参加国に宿題も残した。国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事が強調しているように、先進国で金融機能が正常化するまでは世界経済の本格回復は見込めない。不良資産の抜本処理と銀行の資本増強を早急に実行することが、何より世界経済のためになるということを忘れてはならない。

 国際会議デビューとなったオバマ米大統領は、柔軟な外交でG20の結束に貢献したようだ。不透明な金融取引の温床とされる租税回避地の扱いが最後まで対立点として残ったが、オバマ大統領が仲介する形で合意にこぎ着けたと伝えられる。大統領は会議後の会見で、世界経済の複雑な結びつきを強調した。世界最大の経済であってもグローバルで複雑な依存関係の中にあるということだ。それを忘れずに今後の経済外交や国内の政策にあたってもらいたい。

 気になるのは薄れる日本の存在感である。金融サミットを契機に、今後、地球規模の重要課題を議論する場がG8からG20に軸足を移していく可能性もある。利害がより複雑にからみあう中で、発案力や交渉力、調整能力がますます試されよう。

 転換点にあるのは世界経済だけではなさそうだ。

毎日新聞 2009年4月4日 東京朝刊

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