「ミサイル発射」に過剰反応 日本政府の対応は北の“思う壺”


 
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全周囲(360度)の脅威を自動追尾するイージス艦のレーダー「SPY−1D」 |
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「人工衛星と称するミサイル発射」の実態は、“ミサイル性能向上のための人工衛星打ち上げ”のはず。
「ならず者国家」「瀬戸際外交」…独裁国家・北朝鮮を指弾する言葉は数多い。
それでも、今回のミサイル発射問題に関する日本政府やマスコミの報道は、北の喧伝、謀略に欺かれたというほかない。
日本では、北が国際民間航空機関(ICAO)と国際海事機関(IMO)に、「人工衛星」と称する長距離弾道ミサイルを4月4日から8日の午前11時から午後4時にかけて発射すると通告したことを受け、過剰ともいえる反応を示している。
政府は3月27日、ミサイルが日本の領土や領海に落下する場合、MD(ミサイル防衛)システムで迎撃することを決め、浜田靖一防衛相が自衛隊に「破壊措置命令」(自衛隊法第82条の2 弾道ミサイル等に対する破壊措置)を発令した。
迎撃命令は、莫大な費用を投じて配備したMDシステムの必要性を強調するばかりか、迎撃に成功すれば、低迷する麻生政権の延命にも寄与するはずだ。
しかし、軍事や北朝鮮問題に精通するジャーナリスト・惠谷治氏は「北が打ち上げるのは人工衛星以外に考えられない。ロケットの発射を傍受したり落下物を調べることは、性能を把握する絶好のチャンス。その機会を失ってしまうことになる迎撃の可能性はない」と話す。
ミサイルと人工衛星の違いは、先端に搭載されているものが「爆弾」か「人工衛星」かということ。北の保有する弾道ミサイルは、「スカッド」(射程300〜500キロ)、「ノドン」(同1,300キロ)、「テポドン」(同6,000キロ)の3種。それぞれの射程から標的となるのは「スカッド」が韓国(在韓米軍)、「ノドン」が日本(在日米軍)、「テポドン」が米・アラスカになる。「テポドン2号」は射程が長すぎるため、日本を狙うことはできない。
これまでにも北は「テポドン」の打ち上げに失敗しており、巷間報じられている「人工衛星の打ち上げを名目とした弾道ミサイル発射」の実態は、「技術的に未完成である弾道ミサイル(テポドン2号)の性能向上を目的とした人工衛星の打ち上げ」である可能性が濃厚。
にもかかわらず、海上自衛隊はイージス艦に搭載されるSM3(スタンダード・ミサイル3)の発射による大気圏外での迎撃、さらに地上からは航空自衛隊のPAC3(地対空誘導弾パトリオット・ミサイル3)を発射して迎撃を計画している。
北からすれば、政府のこうした措置は「日本がミサイル発射に恐れをなしている」と内外に喧伝できる好機にほかならない。万が一、人工衛星が迎撃された場合でも、国際社会に自国の正当性を主張できるばかりか、日本からさまざまな外交カードを引き出す材料になり得るものだ。
北の謀略は決して座視できないが、「テポドン2号」の脅威よりも、結果として北を利するかのように振舞っている日本政府の対応こそが、日本の安全保障を損ないかねない脅威である。










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