goo

実録・連合赤軍

若松孝二監督の「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」が、日本映画批評家大賞の作品賞を受賞した。若松さんには昔、仕事でちょっとお世話になったので、まずはおめでとう。

しかし映画の出来は、残念ながらそれほどのものとはいいがたい。若松さんの連合赤軍への「思い」が過剰で、彼らを客観的に突き放して見ていない。特に最初の学生運動の経緯を資料フィルムで追う部分は、説明的で冗漫だ。殺し合いのシーンの演出も説明的でアップが多く、テレビのホームドラマみたいだ(ビデオ撮影というせいもあるが)。

最近の若者が見ると、こんな凄惨な殺し合いが行なわれたという事実に驚くようだが、私が大学に入ったのはこの事件の翌年で、東大駒場では2年間に5人が内ゲバで殺された。そのうち4人が私と同じサークルだったので、この映画の世界は他人事ではない。なぜそういうことが起こったのかもよくわかる。それはこの映画で美化されているような崇高な理想ではなく、ただのカルトだったのだ。

殺された友人のうち2人は誤爆だったが、2人は革マルの活動家だった。彼らの共通点は、地方の高校から出てきて、大学に友人がいなかったことだ(灘や開成の連中は、この種の党派には入らない)。2人とも党派にリクルートされ、「地下」に潜って大学へ出てこなくなった。たまに出てくると黒田寛一や梯明秀などを口まねした呪文のような話をするようになり、他の党派を「殲滅」することが最大の闘いだと主張した。そのくせ自分が殲滅されることは警戒しておらず、2人とも生協の前で演説しているところを白昼、襲われて殺された。

1960年代に世界的に学生運動が盛り上がったのは、ベトナム反戦運動がきっかけだった。それが先鋭化した末に衰退したのはどこの国も同じだが、こういう近親憎悪が激化したのは日本だけだ。私の印象では、その原因はイデオロギー的な党派性というより、自分たちのムラを守る意識だったと思う。だから党派が細分化されて小さくなればなるほど憎悪が激しくなり、内ゲバは激化した。

こうした「日本的」な中間集団の性格は、今も変わらない。都市化して個人がバラバラになると、人々は自分の所属すべき集団を求めて集まる。それが学生運動が流行したころは極左の党派であり、その後は原理であり、またオウムだったというだけだ。創価学会や共産党も同じようなもので、さらにいえば会社も中間集団だ。この意味で団塊世代は、学生運動というカルトが挫折したあと、日本株式会社という巨大なカルトに拠点を移しただけともいえる。

しかし今、日本の会社はほとんど連合赤軍状態だ。浅間山荘のような袋小路に入り込んでにっちもさっちも行かないのに、誰も軌道修正しようと言い出せない。連合赤軍からは逃亡できたが、沈没する日本からは誰も逃亡できない。このまま日本経済は、団塊世代とともに玉砕するのだろうか。
コメント ( 14 ) | Trackback ( 1 )
前の記事へ 次の記事へ
 
コメント
 
 
 
ロシアの社会科学者の意見 ()
2009-04-03 15:05:19
私の知り合いのあるロシアの社会科学者は、トロツキズムは大きなスターリン主義にすぎない、トロツキーの言う世界革命は大きなロシア革命でしかない、結局、トロツキーとスターリンの差は程度の差でしかない、と言ってました。それが、どうもロシアの社会科学者たちの共通認識にもなっているようです。彼らはそれなりにしっかり研究した上でそのような判断を下していると思います。私としては、勉強するのが面倒なので、それを素直に信じているのですが、どんなものなんでしょうねえ、、、
もっとも日本は、そういった議論もないまま二十一世紀に突入してしまいました。日本は、社会科学上の経験や知識が蓄積されない空間なのかもしれません。
 
 
 
Unknown (tmp)
2009-04-03 17:20:30
陸軍でも冷静な意見を言うと軟弱者扱いされたと聞きますが
極端な方へ突き進んだ者が勝ち、というルールで動いていたように見えます
 
 
 
Unknown (Unknown)
2009-04-03 17:38:35
>最近の若者が見ると、こんな凄惨な殺し合いが行なわれたという事実に驚くようだが、

自分が生まれたのが浅間山荘事件のさなかだったので、出産のために産科に入院していた母親はよく当時を振り返って「怖かった」と言う。

「あんた事件の最中に生まれたのよ。古くて暗い病院の廊下で、テレビを見ていて怖いったらなかった。警察が突入するときもどうなるんだろうって思ってた」って(笑)。

怖いも何も遠いし、関係ないじゃんと思うけど、そのころの日本の女には心底「怖い」事件であった(らしい)ことはコドモのころから同じ話を何度となく母に聞かされたのでわかった。

 
 
 
帰属意識 (老耄爺)
2009-04-03 18:23:12
もう10年程前に亡くなったが私の隣家に某大手コンピューターメーカーの役員が住んでいた。社長、会長を経て当時は相談役で、週2回迎えの車で出勤していた。彼の奥さんが私の家内に、若い人に嫌われるから会社に行くのはよしなさいと主人に言ってるのにきかないんですよ、と話をしていたそうだ。相談役のままで亡くなったので会社の社葬とされた。

ホンダやソニーの創業者なら理解出来るが、元サラリーマン社長が死ぬ迄会社に顔を出す心境は私の理解を超える。私の周りにも定年で会社を辞めたら何をしたらよいか分からないと悩む人が非常に多い。死ぬ迄帰属するところが会社しかないというのはなんと侘しい人生であろう。退職後の20年位の余生を今までの仕事と全く関係のない自分の趣味や社会奉仕に打ち込めないのだろうか。

先進国の中で日本人は最も宗教に無関心である代わりに、少なくとも団塊世代迄は会社が精神的な寄る辺と成って来た。会社が頼りにならなくなった今、日本人は精神的な根無し草となるのか。若い世代にナショナリズムが強くなってきた傾向も分かるような気がする。
 
 
 
Unknown (kk8n53m)
2009-04-03 18:56:47
日本の会社はムラであって、貨幣と利益という抽象化の上に載ったものではないですから、経営という概念もないんですよね。売ることも潰すこともできない・・・
 
 
 
沈没するつもりはないでしょう (ベンチャー業界より)
2009-04-03 19:11:46
>連合赤軍からは逃亡できたが、沈没する日本からは誰も逃亡できない。このまま日本経済は、団塊世代とともに玉砕するのだろうか。

30代、静かですよね。「受難の世代」なんて言われて。
この国の高齢者・利権志向はもう絶望的だから黙っているんです。

医療崩壊が参考になると思いますが、医者は「大病院から黙って逃げた」訳ですが、これは立ち去り型サボタージュと呼ばれています。

僕らも黙って逃げると思います。
それは租税回避かもしれないし、ニートかもしれないし、起業かもしれないし、財政破綻を期待するインフレ待ちかもしれない。

「学生闘争」の向こうには何も無かったわけですが、別のところに経済大国がありました。団塊世代は陣地を移して逃げたといえましょう。
この国の若い世代も同様で、今まさにその逃避先を探している状況ではないかと思います。
それは意外と「軍隊」だったり「農業」だったり「規制緩和期待」だったりするかもしれないんですが、何か出てくるんじゃないかと考えているのではないでしょうか。

かつての戦争のように「一回ガラポン」でも良いのです。焼け野原の後には再建がありますからね。

ただこの閉塞感、長引いて欲しくないなぁ。。江戸時代は100年以上閉塞してましたから、これは最悪のシナリオでしょう。
 
 
 
Unknown (痴本主義者)
2009-04-03 19:29:30
創価学会は外国の宗教団体、とくにアメリカの新教系キリスト教団と似たような性格を持っていると思います。だからとりわけ日本的という感じはしません。もっとも、アメリカと日本だけに特徴的とは言えるかもしれません。
日本共産党は経営者と仲のいい組合に逆らっている人たちやそもそも組合のない人たちの駆け込み寺になっていると思われます。いわゆる「体制」に異議を唱える同様の団体が他に存在しなくなっているからです。(特に地方)日本的中間集団というより、ヨーロッパなどによくある目的性の強い団体だと考えます。
 
 
 
ベンチャー業界人殿 (老耄爺)
2009-04-03 20:16:33
敗戦でも経済再建し世界第2位の経済大国になれたのは、負けた相手が米国だったからです。ソ連に占領されていれば、今頃は北朝鮮並みだったかもしれない。戦争になれば貴方自身が生き残れないかもしれない。今度日本が戦争するとすれば相手が米国のように気前の良い国である可能性は少ないと思います。

250年間の平和な江戸時代は政治的には閉塞し経済成長率も低かったが、都市の消費経済は発達し、歌舞伎、相撲、浮世絵、出版、花見、植物園等の文化はおおいに発達しています。これは19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパを席捲したジャポニズムに反映されてます。この当時の日本の都市の消費経済はアジアでは群を抜くもので、隣の朝鮮では全く見られなかったものです。
 
 
 
趣旨ちがいですね (ベンチャー業界より)
2009-04-03 20:41:25
>。戦争になれば貴方自身が生き残れないかもしれない。

別に戦争期待ではなく、今度は経済崩壊かもしれませんな。「ガラポン」を言っているのであって、対象は戦争ではないです。明治維新でも同様の議論ですよ。

>この当時の日本の都市の消費経済はアジアでは群を抜く

事実関係を争うつもりはありませんが、江戸末期は高齢化が進み、やはり人口減少がおこった暗い時代だったそうで、そういう認識ですね。指しているのは幕末前です。
19世紀初頭最大の経済大国はちなみに中国であり、インドです。
 
 
 
Re:沈没するつもりはないでしょう (ベンチャー業界より)2009-04-03 19:11:46 (左巻きノイズ系イナゴ)
2009-04-03 20:50:50
>連合赤軍からは逃亡できたが、沈没する日本からは誰も逃亡できない。このまま日本経済は、団塊世代とともに玉砕するのだろうか。

>30代、静かですよね。「受難の世代」なんて言われて。

30代です。学生紛争の頃だって当時の若者が本当に何か真剣に考えて行動していたのか否か怪しいですよ(笑)。私から見れば70年代学生紛争とは、ほとんどの連中は付和雷同で、浅はかで、周囲と一緒に集団ヒステリーに陥っていたようにしか見えない。赤軍って左翼で、うちも左だけど(笑)、先輩(の左翼)がやったことに共感が持てない。理由:馬鹿すぎ。もっとかっこよく抵抗できなかったのか。

よく団塊が「今の若者は無気力でおとなしい」って言うけど、それは団塊がおっさん・おばはんのトシになったから初々しい純な若者がそう見える(笑)。昔と比べて今が頼りないっていうのは事実誤認であって(笑)、今の若者は「孤独に」「自分に引き寄せて」悩んでいる。だから若い左翼は「だめ連」に入ってしまう。
70年代のようにみんなで広場に集まってわあわあ無責任にやるのがいいのか、それとも自分の部屋の中で孤りで考え込んで「感覚にだけ忠実に」他者を必要としないメッセージを発するようになるのがいいのか。

 
 
 
そのとおりですね (ベンチャー業界人)
2009-04-03 21:31:42
>30代です。学生紛争の頃だって当時の若者が本当に何か真剣に考えて行動していたのか否か怪しいですよ(笑)。

仰る通り。
たいした連中じゃない。要は、軍国主義の反動にすぎませんし、しょせん主張は屁理屈の域を出ませんでした。(個別テーマに関する○○闘争とかそういうのは別として)

経済だってフォローアップ経済のほうが簡単な訳で、為替差使ったっていう程度のことです(韓国・インドを見てください)。

僕らは難易度の高い時代と国家に生きています。彼らのように簡単に「敵」を攻撃して自己満足できる世代じゃないんですよ。
 
 
 
Unknown (sion)
2009-04-03 22:54:12
少なくとも言えることは精神的に未熟な団塊世代が若い世代に頭を下げざるを得ない時代がようやく始まるということです。

年齢が上の人間が下の人間に甘ったれた結果の忍耐を強いるというガキと大人が逆転した悪夢の時代が終わりを告げる。

池田さんがこんな愚劣な経験はしなくて済んだことを幸せに思う。

私は大した経験していませんが池田さん以外に尊敬できる大人がいないくらいに吐き気がする大人にであっています。

だから池田さんが日本の宝なんです。
 
 
 
Unknown (TGB)
2009-04-03 23:33:21
どうせ特攻するのはまた若者だけなんですよ…
 
 
 
今昔物語 (四畳半)
2009-04-03 23:50:15
"こうした「日本的」な中間集団の性格は、今も変わらない"
本当にそうですね、今の若い人を見ても当時の若者と全く変りませんね。
時代の現象が違うので、一見今と昔は違うように見えますが、話してみると当時の若者と瓜二つの考えを持っているのがわかります。
>今の若者は「孤独に」「自分に引き寄せて」悩んでいる
これは昔と全く同じです。表に現れる現象が違うように見えますが、中身は全く同じです。
>このまま日本経済は、団塊世代とともに玉砕するのだろうか。
私はこのままでは玉砕するかも?と思ったりします。
なぜなら、今も昔も若者は同じ行動をします。
一つ違うことがあるとすれば、今の若者のほうが選択肢があることです。
その選択肢とは、昔と違い容易に海外で働くことが出来る又は海外で起業できることでしょうか。
私は日本を見捨てます。
最後に当時学生運動をしていた友人は、最後に履き捨てるようにして活動をやめました。
その言葉は「誰がやっても変らない」
私はその友人を四畳半の部屋でボンヤリと眺めていたことを思い出します。
 
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
コメントをするにはログインが必要になります

ログイン   gooIDを取得する
 
この記事のトラックバック Ping-URL
 
http://blog.goo.ne.jp/tbinterface/9ba5e61f7acf3ab901d245c3fcc6fe95/19

ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません
 
・30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております
・このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
 
 
《ボキャ》実録・連合赤軍 2009.4.3 (池田信夫blogを読むためのサブノート)
 (1段落目)若松孝二 1936年4月1日 生まれ。日本の映画監督、映画プロデューサー、脚本家。   (3 段落目)内ゲバ 「内ゲバ」とは、「内部ゲヴァルト」の略。ゲヴァルトとはドイツ語で、Gewalt, die といい、「権力、支配権、暴力」のこと。...