中国共産党の宣伝担当のドン

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中国共産党の宣伝担当のドン・李長春政治局常務委員〔党内序列NO5〕が来日し、大手報道機関14社の首脳と会見した席で、日本の中国報道に対して「良好な世論をつくるように努力してほしい」と発言したことが話題になっています。来日した中国首脳が日本のメディアに直接こうした発言をしたことは過去に例がありません。
李発言の背景は一向に好転しない日本人の対中国不信と反発に対する苛立ちです。

ですが、そもそも李常務委員は江沢民政権後期、党のイデオロギー宣伝機関を指揮して、徹底的な反日キャンペーンを実行した人物であります。
彼に関することでマスコミが指摘していない事実があります。
それは2002年5月に発生した中国・瀋陽における北朝鮮の難民一家「亡命」事件との関連について、です。あの時、亡命劇の一部始終を撮影したビデオ映像を共同通信社が世界に配信し、それによって、大使館を警備していた中国の人民武装警察部隊の無法ぶりや、当時の阿南中国大使の「難民は追い出せ!」との発言があきからになり、日本でも国民の轟々たる非難をあびました。
事件後、中国政府は取材を敢行した共同通信に対して政治的報復を行っています。
記者に対して「報道ビザ」の発給を中止したのです。簡単に説明しておくと、通常外国人が中国国内で取材する場合、記者専用の「取材ビザ」と、私たちフリーランスや雑誌記者が使う「観光ビザ」の2種類があるのですが、前者は中国外務省の新聞処が発行しています。
共同通信社はこれを半年間禁止されたのです。そのため記者は、中国で仕事をする際に、やむを得ず「観光ビザ」で入国し、取材することを余儀なくされたのです。
ですがこれは厳密に言えば違法行為、事実夜中の2時にいきなりホテルの部屋に公安が乗り込んで、連行され、当局の事情聴取を行われた事件も頻発しているのです。

瀋陽事件報道に対する中国当局による政治的報復。このときのキーマンのひとりが現在、来日中の李長春氏なのです。彼は過去、事件の舞台になった瀋陽市の党書記も勤めており、さらに事件の処理についても、党の政治局常務委員として、宣伝担当の最高責任者の立場から、海外のメディア報道に監視の目を光らせていました。共同通信の報道も24時間チェックされていたのです。日本のメディア首脳が会見したのは、こういう人物だったのです。
当然、マスコミ14社のトップはこうした事実を知っていたはずですが、そのことを彼に質し、抗議した「ジャーナリスト」はいませんでした。ジャーナリストと新聞社や通信社、それにテレビ局の社員は決してイコールではありません。お気軽に政治家をバッシングするのも結構ですが、ではお前は本当に言論弾圧に抗して戦ったのかどうか。そう問われたとき、胸をはって回答できたのでしょうか。
政治家がダメだというのなら、マスコミもまた同様です。
李氏は日本の中国報道に対して苛立ちを隠しません。中国政府が対日関係で最大のターゲットにしているのは政治家でも財界でもありません。報道機関なのです。日本人の中国嫌い、警戒感。その理由は中国の行為にあるのではなく、日本の悪意ある報道がもたらしたもの。これが中国政府の認識です。
今回の会談でいずれ、中国批判をダウンさせる報道機関がでるのかどうか。皆さんも注意して観察していただきたい。

中国報道についていえば、外務省出身の評論家・岡本幸夫氏も産経新聞紙上で、「日本には中国嫌いの記事が氾濫している」と書いています。大笑いです。岡本氏はあの田原総一郎の「サンデープロジェクト」で中国側と対談、「中国が戦争賠償金を放棄したことに感謝する」と発言しています。
しかしそうか。
そもそも賠償金は払う必要のないものでしたし、日本はその「代償」として中国向けODAを6兆円も行っています。それはいまも継続中です。
そればかりではない。賠償金の放棄は中国が日本を対ソ統一戦線に参加させるために行った政治的「譲歩」でもあったのです。
そのことは日中正常化以後、執拗なまでに北京政府が日本に対して「覇権反対」を盛り込んだ平和協定の締結を求めてきたことからも明らかです。岡本氏は中国が善意で「戦争賠償金を放棄した」と考えているのでしょうか。
だとすれば、フランシーヌのように「あまりにもおバカさん」。
メディアの勇気のなさと外務省OBの無知蒙昧な対中評価こそ、李長春の内政干渉発言とメダルの表裏の関係なのです。


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