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時効:廃止・延長など見直し4案提起 遡及適用検討--法相勉強会

 ◇廃止、延長、DNA起訴、検察官請求

 森英介法相は3日の閣議後会見で、殺人事件など凶悪・重大事件の公訴時効を見直す勉強会の検討結果を発表した。法改正する場合の方策として、時効の廃止や期間の延長など4案を挙げたが、結論は出さなかった。法改正した場合、改正前に発生した事件へのさかのぼっての適用(遡及(そきゅう)適用)が可能かどうかも含めて検討し、夏ごろまでに新たな方向性を打ち出す。

 勉強会は、法相、副法相、政務官と刑事局長ら法務省幹部で構成。今年1月から早川忠孝政務官を座長とする省内のワーキンググループを中心に検討した。

 制度見直しの必要性については、殺人事件の被害者遺族が廃止などを訴えている点を挙げ「被害者の声や国民の正義観念を十分に踏まえた検討が必要」と指摘。05年施行の刑事訴訟法改正で時効期間が延長されていることから、「現時点で再び改正する必要があるかも検討する」とした。

 新たな方策として、(1)時効の廃止(2)時効期間の延長(3)容疑者が分からなくてもDNA型情報を被告として起訴する制度(4)検察官の請求で停止(延長)する制度--の4案を提示。それぞれに賛否両論を記載した。

 「廃止」について「犯人が時効成立後明らかになったのに処罰できない事態は生じなくなる」と利点を挙げる一方で、捜査機関が人員や証拠を長期間維持できるかなどの問題があるとした。「延長」については「現行制度との違いは比較的少ない」としたが、一定の罪だけを延長した場合、他の時効とのバランスがとれないとした。

 「DNA起訴」は、対象となる事件の範囲が極めて限られると否定的にとらえた。「検察官による停止」は、DNA起訴と同様にDNA情報など確実な証拠がある場合に処罰が可能になるという利点があるが、法定刑に応じて一律に時効期間を定める現制度の考え方と整合しない理論上の問題を指摘した。

 制度見直しの対象は(1)殺人(2)放火などを加えた最高刑が死刑の罪(3)傷害致死や危険運転致死を加えた故意の犯罪で人を死亡させた罪(4)自動車運転過失致死なども含め人を死亡させた罪--を挙げた。【石川淳一】

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 ■ことば

 ◇公訴時効

 犯罪から一定期間が経過した場合に刑事罰が消滅する制度。その後は起訴(公訴提起)されない。時間の経過とともに証拠が散逸することや、処罰感情の低下などが根拠とされる。刑事訴訟法の改正で05年以降、殺人罪は15年から25年に延長された。98~07年(10年間)の時効成立は▽殺人489件▽放火303件▽強盗680件▽強姦(ごうかん)306件。

毎日新聞 2009年4月3日 東京夕刊

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