マイクについての知識はPAのオペレーターだけでなく、歌い手(ステージングに関わる人全て)にとっても必要である。
ここでひとつ、覚えていて欲しいことがある。マイクという物は、万能な物でもないし、頭のいい物でもない。いいマイクさえあれば、思った通りの音が録れると思ったら、大間違いである。要は使う人の知識や経験で全く変わってしまうのである。
マイクについての理解があるだけで実際より上手く聞かせることができるのである。逆に、マイクの使い方が下手な人は、歌をうまく聴かせることができないだけでなく、周りからもあーだこーた言われ、P.A.さんにもよく思われずにいやな思いをすることになる。
◆マイクの種類
マイクには下の表のように色々な種類が存在し、その種類の数だけの音色の違いが存在する。私達が使用するダイナミック型とコンデンサー型の2種類の構造について説明しましょう。
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| ダイナミック型 |
湿気、フカレに強い太くコシのある音 ショックに強い |
| コンデンサー型 | 湿気、フカレに弱い 高音にサスティーンがある 一般に高価である |
| リボン型 | 超軽量である |
| カーボン型 | 電話に使われている |
| クリスタル型 | 何に使われているのだろう? |
◆ダイナミック型
マイクは電気的に見ると、スピーカーと逆の働きをしている。(基本構造は同じである。だからスピーカーに向かって大声で叫ぶと微弱な電気信号が発生する。しかし、マイクをスピーカーの代わりにするのはやめましょう。できなくはないけれどもかなりの確率でとんでしまいます。)
スピーカーは電気信号を音に変換するのに対しマイクは音を電気信号に変換する。そのマイクの音を電気信号に変換する部分の構造を示したのが図1です。
図1ダイナミックマイクの構造 マイクは振動版(ダイアフラム)で音を受けます。材質にはポリエステル・フィルムなどが使用されている。このダイアフラムの直径が小さいと高い周波数(高音)に有利であり、直径が大きいと低い周波数(低音)に有利といわれます。これはスピーカーにも同じことが言えます。ベースアンプやウー
ファーのスピーカーの直径は大きいでしょう。これは振動数の多い高音がダイアフラムにあたると細かく振動するので、直径の大きいダイアフラムダと振動が伝わるのが鈍くなってしまうのです。 このダイアフラムにくっ付いている細い銅線を巻いたのがボイス・コイルです。このボイス・コイルの内側にある円筒形の金属がポール・ピース。そしてポール・ピースの下にあるのがマグネットである。ボイス・コイル、ポール・ピース、マグネットを囲っているのが、金属で出来たヨークと呼ばれるものである。ポール・ピースとヨークはマグネットにより磁力を与えられており、ボイス・コイルはその磁場にさらされている。要するにどうやって音を振動に変換しているかと音波がダイアフラムを振動させ、その振動による力がボイス・コイルに伝わる。ボイス・コイルは磁場にさらされているので電流が発生する。
◆コンデンサー型図2を見てもらえばわかりますが、ダイナミック型との違いはボイス・コイル、ポール・ピースなどがない。つまり根本的に構造が違うのです。振動版に+電子、固定電極(バックプレート)に−電子が帯電している。振動版と固定電極の間には電位差がある。つまり、この部分コンデンサーになっている。音を受けると振動版が上下する。もちろん周波数によって振動版の上下の振幅が異なる。この振動版の上下により、振動板と固定電極との間の電位差が変化する。その変化量が、音声信号となる。振動版に+電子、固定電極に−電子が帯電していると言う事はもちろんそこには電圧が必要となる。つまり、コンデンサー型マイクには電源が必要なのです。たいていのコンデンサー型マイクは±48V電源電圧であり、この電源電圧を成極電圧という。この電源は、ミキサーなどからファンタム電源として送られることが多いでしょう。振動板と固定電極の隙間はわずか数10ミクロンしかないため、小さな電位差変化を取り出すのに高い電源電圧を必要とします。
図2コンデンサーマイクの構造
◆SM58
ボーカルとして2、3回ステージに立ったことがある人ならば、下の写真のマイクを見たことがない人は、ほとんどいないであろう。ってくらいに有名なマイクなんです。このSM58-LCってマイクは。よく「ごっぱー」っていわれるやつです。世界中どこにいってもあると思います。
それでは、マイクの代表として、SM58-LCを例にして、説明していきます。
このマイクは主に手に持って歌うこと(ハンドマイク)を目的に作られたマイクなのである。よくライブで使われるこのマイクは、ほかのマイクに比べてどんな点が優れているのでしょう?それは・・・
ま、こんなことがあげられます。
ライブで使われるマイクは、この3点さえクリアしていれば、おおざっぱに言えばオッケーでしょう。あとは、それぞれの音質(キャラクター)の好みでしょうね。
1.指向性
車通りの多い道路や、パチンコ店、ゲームセンターなど騒がしい所にいるとしよう。で、ぼ〜っとしているときは周りのざわめきを何となく聞いているはずである。そこで友人が来てしゃべり始める。こいつは声のあまり大きくない奴なのだが、あなたはこの友人の声を騒がしい場所でも普通に聞き取ることができる。
このように人間の耳は、ある程度の音の大きさは関係なく、目的の音だけを大きく聞くことができる。ところが残念ながらマイクにはこのような知能はないわけで、周りの騒音であろうと、友人の声だろうと、周りの音楽や話し声などを、単に音として電気信号に変換するだけしかできない。これでは特定の音を録りたい時に不都合が生じる。そこで考え出されたのが、音がマイクに入ってくる方向によって感度の違うマイク、つまり「指向性」をもったマイクだ。
指向性を作っているのは、ほとんどの場合マイクのスリット(穴とかの部分)や、マイク形状なので、ここを塞いでしまったりするとせっかくの指向性マイクが、無指向性になってしまうわけだ。よくマイクの頭を手でくるんで使うボーカリストがいるけど、音響的にみるとあれは大ばか!音の「抜け」が悪くなるに、マイクの指向性がなくなってハウリングしやすくなる。マイクを覆うと他の音が入ってこない感じがするからなんだろうか、プロのミュージシャンでもこういう使い方をする人が多いが、素人がやっているのとは、全く違うのである。プロの場合、ちゃんと音の抜けが悪くならないように持っている上、P.A.さんも、それを承知の上で、チューニングしてあるのである。まあ演出上こういう持ち方をしたいと言われれば、それはそれで仕方ないけど。ちなみにハードコアなんかは、もうそーゆーレベルの話ぢゃなくて、あの抜けの悪い音が音楽(かどうかは別として)の一部だと思っといたほうがいい。
じゃあ、単一指向性とは何か?という話になるが、ある方向からの音に対して最も感度がよい(音を拾いやすい)ことである。さっきも書いたが、例えばステージで5人ならんでで歌っているときに、隣で歌っている人の声を拾ってしまってはたいへんだし、モニターの音を再び拾うとハウリングの原因になってしまう。
下の図3を見てみよう。これは、マイクのカタログや、取扱説明書によく載っている指向性を示した図である。
この図の見方が分からないとどうしようもないので解説しておくとするか・・・。簡単なんだけどな。0°方向が、マイクのグリルの向き。180°方向が、マイクのおしりの方。このようにマイクがおいてあると考えれば、そのマイクは、どのような特性があるか分かるのである。
2.近接効果
比較的小さな音源に、指向性を持ったマイクを近づけると、収音される音は、オフマイク(30センチ以上はなすこと)の時と比べて低域が強調されるという特性がある。これを近接効果という。ドラムなんかをマイクで録ってスピーカから音を出すだ
けで、音が「太く」なるのはこのためだ。逆にハンドボーカル用に設計されたSM-58のようなマイクでは、オンマイクでの使用を基本と考えて、あらかじめ近接効果分の低域をカットしてある。よってこのようなボーカル用に作られたマイクを、オフマイクで使ったりすると、低音のない「かすかす」の音になってしまう。
この事は、ベーシストやパーカッショニストにとって非常に重要である。ベーシストの場合、マイクはできるだけ近づけた方が、低域のバランスが多くなり音が太くなる。また、パーカッショニストはバスドラを出すときは、マイクを近づけた方が重い音が出る。逆にスネアを出すときに近づけすぎると、低域のバランスが多くなり、クリアな感じが無くなってしまう。思うようにいかないことが多いとは思うが、音が気に入らないときには、マイクの位置を変えてみるのがEQでいじるより一番の近道になることもあるので覚えておこう。
3.吹かれ
いわゆる「風」をマイクが「音」と勘違いして、「ぼぼぼ」とか「ぼそぼそ」っといったノイズが出てしまうことだ。野外コンサートなどではよくこの現象が起きる。根本的な解決方法は風を止めるしかないんだが、まあそんな大それた話は、一般庶民には縁もゆかりもない話なので、普通はまずマイクの位置とか方向で回避できないかやってみる。それでも駄目な場合はウインドスクリーンといわれるカバーを、マイクにつける。風のほかにも人間の「ぱぴぷぺぽ」などの声はマイクに強い息がかかるので、この現象が起きる。これを特に『ポップノイズ』といっている。