Print this Post Article Lists Back

平田オリザ教授、「ロボットの演劇」を語る

 「ロボットのせいで俳優らが脅威を感じている。近い将来、失業者になってしまうのではという心配。『ロボット俳優』には長所がたくさんある。何でも言われたとおりにする。『妊娠したので今回の公演は無理』なんてことは言わないではないか」

 大阪大の平田オリザ教授(46)はこう言いながら笑った。劇作家兼演出家でもある同教授は昨年11月、『働く私』という20分程度のロボット演劇を上演した。身長150センチの2台のロボットが俳優として出演し、別の二人の俳優と対話し触れ合う、未来型の演劇だった。同教授は「最後のシーンでロボットが無気力な俳優に対し、『僕たちも夕陽を見に行こう』と言ったとき、多くの観客が泣いた。演劇史上、非常に意味深い日だった」と話した。

 「その瞬間、(事実主義の演劇理論家)スタニスラフスキーは間違っていたと確信した。ロボットに内面はないが、それでもある心理状態を表現し、観客を感動させたからだ。物語の流れの中で、ロボットが感情を呼び起こすことができたという反証だ」

 同教授は、日本で「科学演劇」という新しいジャンルを開拓した演劇家だ。祖父は医師、父親は物理学を専攻したシナリオライターの平田穂生。妻は生物学を専攻した歌手兼舞台女優。同教授は「演出家として、人間の精神的・感情的な側面に関心があった。通常、別の文化というと外国を頭に思い浮かべるが、科学者こそ別の文化を持っている。それを表現するのが作家の仕事」と話す。

 同教授は、斗山アートホールで公演中の演劇『バルカン動物園』の原作者だ。先月31日には、「今なぜ科学演劇なのか?」というフォーラムに参加した。同教授は現在、大阪大コミュニケーションセンターで講義を行っている。「日本では医師や弁護士、科学者といった人たちが一般の人々にアプローチする方法として、コミュニケーションという学問が重要視されている。狂牛病(牛海綿状脳症〈BSE〉)や遺伝子組み換えも、大衆の視点で共有されなければならない知識」と同教授は語る。

 「演出家という職業は直観的で懐疑的だが、俳優の前では常に確信があるように見せなければならない。さまざまな実験を行い、後で理論化するという点では自然科学と似ている」

 どういった演劇が良い演劇かという問いには、「わたしの演劇を見て、悲観する観客と楽観する観客が半々だったらいい。全員に勇気を与えたり、悲しませたりする演劇には興味はない」と語った。

ノートパソコンに保存されている「ロボットの演劇」の1シーンについて説明する平田オリザ教授。同教授は「映画がどんどんコンピューターグラフィックス(CG)に依存しているように、科学の発展によって俳優の概念も変わっていくだろう」と語った。/写真=イ・ジンハン記者

朴敦圭(パク・ドンギュ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る