「実質犯だ」と解釈すればどんどん拡張解釈が許されるってものではない
犯罪を実質犯と形式犯に分けた上で,実質犯については,それが守ろうとする法益を実質的に侵害する行為については,刑罰法規の文言を無視して,これを適用として処罰しても良いとする奇妙な解釈をする方がおられるようです。しかも,この方の見解によると,実質犯か形式犯か,すなわち,刑罰法規の文言を無視してこれを適用して良いかどうかは司法・準司法部門が解釈によって自由に決めることができるとのことのようです。
一般には,実質犯というのは,犯罪が成立するためには法益の侵害または侵害の危険の発生が必要である犯罪をいうのであって,刑罰法規により明確に禁止された行為が行われなくとも,法益の侵害または侵害の危険の発生させる行為に拡張的に適用させることが許される犯罪をいうのではありません。私が刑法を学んでいたころは,「実質犯においては,犯罪が成立するためには法益の侵害または侵害の危険の発生が必要である」という命題から,「実質犯については,その法益の侵害または侵害の危険の発生させる行為に対しては,その刑罰法規による明確に禁止された行為以外の行為に対しても拡張的に適用して良い」とする見解はほぼ存在していなかったのですが,最近は,某法科大学院の一部では違う教え方をしているのかもしれません。
この考え方にたった場合,例えば,著作権侵害罪のような保護法益がはっきりしている犯罪については,著作物等の新たな利活用について著作権者等の許諾なくしてこれを行うことを禁止する新規立法を国会が行わなくとも,捜査機関が法律を拡張的に解釈して(明文の規定では禁止されていない)新たな方法での著作物の利活用を行うものを逮捕起訴し,裁判所が有罪認定することが許されるということになります。普通に考えれば,そんな馬鹿な話があっていいものか!ということになるのですが,その方の見解を批判すると,事務所にまで電話をかけられ,高圧的に削除せよと迫られますので(「その考えは間違っている」という指摘を「お前は嘘をついている」という攻撃と同視されてしまうくらいですし),まあ難儀なことだなあと思います。
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Voici les sites qui parlent de 「実質犯だ」と解釈すればどんどん拡張解釈が許されるってものではない:
» 元検事・モトケンブログによる政治資金規正法の「虚偽記載」の解釈について(一部反論) [個人発明家blog]
民主党議員で弁護士の階猛(しなたけし)氏のブログ「弁護士としての見解-小沢代表秘書問題」に次のような記述がある。 「今回の逮捕・勾留の理由につき、検察は、①政治家の資金管理団体が企業献金を受けた罪、②他人名義でなされる企業献金を受けた罪、③収支報告書の寄付者の欄に虚偽の記載をした罪、という3つの罪の容疑があると説明しています。いずれの罪も、今回の献金が政治団体ではなく企業からのものである場合に成立します。 しかしながら、問題となっている献金は、すべて企業からのものではなく合法とされている政治団体から... [Lire la suite]
Notifié le le 02/04/2009 à 10:19 AM
» 小倉秀夫弁護士に謝罪を求めます。 [モトケンの小倉秀夫ヲッチング]
小倉秀夫弁護士の「むしろ、読者に斟酌される属性をコントロールしたいのでしょう。... [Lire la suite]
Notifié le le 02/04/2009 à 08:49 PM
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