台湾桃園市にある公立の桃園病院で21日、今にも生まれそうな妊婦を追い返すという事件が起こった。受け入れを拒否された女性は、バイクで40分かかる道のりを帰宅後、5分もしない内に浴室で出産した。失血多量で一時意識を失ったが、幸い5歳の娘の呼びかけで目を覚まし、自ら救急車を呼び母子共に一命を取り留めた。
21日午後、出産の兆候を感じた呂さんは子どもをバイクに同乗させて病院を訪れた。しかし、彼女のみすぼらしい出で立ちを見た医師は彼女に学歴を尋ねた上、健康保険がないことが分かると、他の病院へ行くようにと言い放ち、警備員まで呼んで立ち去らせたという。
これに対し病院側は、呂さんはこの病院で産前検診を受けておらず、他の病院でも2度受けただけであり、前回の出産では弛緩出血もしている。当時病院には医師が一人しかいなかったことから、念のため家族に連絡して来てもらうよう言ったところ、彼女が怒って帰ってしまったのだと主張している。
両者の主張に多少の違いはあるものの、出産間近の妊婦をバイクで帰らせたという事実に変わりはなく、この医師の対応は明らかに不適切であったと言える。
現在、台湾の健康保険制度は収入に対しての比率ではなく、職業別で支払い金額が決まる方式をとっており、低所得の人や養う家族の多い人といった、本来補助を受けるべき人には不公平な制度となっている。そのため、保険料が払えず医者にかかれない人も多い。
また、近年台湾でも少子化が深刻な問題となっており、その一番の理由は経済的に子どもを養うのが困難だからとされている。妊娠中や産後に対する会社からの保障はほとんどなく、ひと月の収入に対して、保育園や幼稚園にかかる費用が異様に高い。更に失業率は高まる一方とあっては、経済的な安心感は全く持てない。
そんな中で起こったこの事件、お金はないが子どもは産みたいと思っている人の希望さえ奪ってしまったのではないだろうか。医療制度、健康保険制度について一刻も早い見直しが求められる。
(編集部:片倉愛)
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