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あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ジョン・スミスの消失

やるだけのことはやった。悔いはない。それが俺の率直な感想だ。
もう痛みは感じない。
いくら伝説の使い魔と言っても7万人を相手にするのはやはり無茶だったと言うことだ。
それでも、足止めは出来た。だからきっとルイズたちが逃げるのは間に合う。
今はもう、そう信じるしかない。
多分俺はもうすぐ死ぬだろう。
久しぶりに感じた身体から熱い何かが漏れだして冷えていく感覚は俺に確かな死の予感を感じさせた。
色んな記憶が頭をよぎりだした。これが走馬燈って奴なのか?
不思議と思い出されるのはこの8ヶ月の思い出、この異世界に飛ばされ、使い魔にされてからの記憶ばかりだ。
まあ、向こうにいた頃はごく普通の高校生として暮らしていたわけだからな。
こっちに来てからの刺激的過ぎる毎日に比べれば陰が薄いのも仕方あるまい。

…あ、嫌なことまで思い出しちまった。

ついさっき、ジュリオの野郎にルイズを託して突っ込む寸前、愛する女のために死にに行くのかとか聞かれたときの事が頭をよぎる。
その時は答えなかったが、今なら言える。それは違うと。
もちろんルイズの事を好きか嫌いかで言えば、好きだ。それもかなり上位に来ると言っても良い。
最初はいけすかねえ我が儘娘だと思ったが、感情表現が下手なだけで本当は良い奴なのはすぐに分かった。
それに何より、俺のことを好いてくれているのも分かったしな。

だが、ルイズを死なせないためだけに1人で特攻かましたと言うのは違う。
俺が守りたかったのは、日常の日々だったんだ。
シエスタ、タバサ、ギーシュ、そしてルイズ…この世界に来てから知り合った連中。
この戦争で失うことになってたかも知れない連中。
そいつらを失うのを俺は恐れた。
戦争が始まってから失われた何でもない日々が、二度と帰ってこないような気がして。
…そう、俺はただ守りたかったのだ。何でもない日常の日々。
タバサが黙々と本を読み、シエスタの入れてくれたお茶を飲みながらギーシュとマンネリ化したゲームに興じる。
時々、唐突なルイズの我が儘に振り回されながらも、普通の日々は続いて行く。そんな毎日を取り戻したかった。ただ、それだけなのだ。

…あれ?なんかおかしいな…

「なんだこりゃ?」
俺は目の前に唐突に現れた銀色のそれを見つめた。
それはワイヤーも無しに空中に浮いていた。鏡のようにも見える。
春の深夜、コンビニへの近道をしようとして通ったその道はロクに人の通らない場所だ。
事実辺りには人の気配は無い。
襲ってくる訳でもなく、ただそこにたたずんでいるそれ。
無視しても良かったんだが、何故か俺はそれが気になっていた。
俺の冷静な部分が告げる。放っておけ、と。
こういう訳の分からないものに対処する能力は俺には無いのだ、と。
だが、その鏡は俺を誘惑するように光輝いている。
やがて俺は知らず知らずの内に右手をそれに向かって伸ばし…

左手に走った激痛で我に返った。

その瞬間、揺らぐようにして、それは消える。
そして俺は振り返り、予想通りの顔を見て、言った。
「あれは一体何だったんだ?」
その問いに長門有希は左手に噛みついていた口を離し、いつもの無表情で、一息に答えた。
「…情報統合思念体にも知覚出来ない領域からの存在干渉情報体。
あれに触れた場合、あなたはその領域に強制転移させられる」

驚いたことに、なんとあれはSOS団の団長にしてトラブルメーカー、涼宮ハルヒが関わっていないものだと言う。
情報統合思念体とやらが知覚不能な領域、つまりはこの宇宙の外に位置する場所、平たく言うと異世界。
ハルヒの力すらほとんど及ばないその場所に、俺は1度飛ばされた、らしい。
らしい、と言うのは俺の記憶にはそんな事実は無いからだ。
飛ばされた後、長門は俺の存在情報とやらを辿ることで辛うじて俺の居場所を捕捉していたがすぐにそれも不可能となった。
何でもその異世界にいる有機生命体が俺に情報的干渉とやらを行って存在情報を書き換えてしまい、
この世界に残っていた俺の存在情報から変化したことで長門にも捕捉することが出来なくなってしまったという。
そしてそれから8ヶ月、存在情報が再び元に戻るその時まで、俺は完全に「神隠し」にあっていた、と言うわけだ。

異世界で俺がどんな目に遭っていたのか。知る術はない。長門にも俺がいた異世界の事は分からないし、俺自身もまったく覚えていない。
だが、8ヶ月後、俺の存在情報が元に戻った瞬間からの出来事については分かる。2度目(正確には違うが)だからだ。
それまで8ヶ月間全く俺の足取りをつかめずいらだっていたハルヒは俺を強制的にSOS団の部室へと転移させた。
“キョンは、SOS団の、この場所に帰ってくる”そう願ったのだ。
そして俺は帰ってきた。変わり果てた姿で。
打撲、骨折、すり傷、切り傷、刺し傷、何故か火傷と凍傷まで負った酷い状態だったという。
何があったのかは謎だが、何にせよ、“常識”では決して助けることの出来ない状態である俺を見たとき、ハルヒは再び願った。

俺のいなくならない世界を、8ヶ月前、俺が唐突に消える直前の世界を。

長門が言うには、俺が消える直前、あれが現れた瞬間の俺の存在情報を強制的に書き換えることであれに選ばれないようにしたらしい。
その結果、あれは別の候補者、やっぱりこの地球に住む人間だが、の前に現れてそいつを攫って消滅したと言う。
俺は顔も名前も知らないそいつの幸運を祈った。多分酷い目に会うのは確定なので頑張って貰いたい。
出来れば俺みたいに死にそうにならければ完璧だ。

翌日、いつものように登校した俺に、クラスの連中は一瞬困惑した。
いないのが当たり前だったのだから、当然と言えば当然なのだろう。
もっとも既に記憶も時間もリセットされているのですぐにいつも通りに戻ったが。
とはいえハルヒの奴が突然泣き出すとは思わなかった。
理由は分からないがその涙を見た瞬間、何故かハルヒが外人の子供のように見えた。すぐに元に戻ったが。
かくして、俺の凄いんだか凄くないんだか良く分からない体験は終わり、そして俺はいつもの日々に戻る。

長門が黙々と本を読み、朝比奈さんの入れてくれたお茶を飲みながら古泉とマンネリ化したゲームに興じる。
時々、唐突なハルヒの我が儘に振り回されながらも、普通の日々は続いて行く。ただ、それだけなのだ。

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