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 深刻な危機にあるアメリカ経済を改善するため、オバマ大統領は「グリーン・ニューディール政策」を掲げ、新たな公共事業を通じ最大で500万人規模の雇用を創出するというが、失業者はすでに1500万人に近づこうとしている。社会不安も高まる一方だ。夢のある政策ではあるが、達成は現実にはかなりの困難が予想されている。(バックナンバーはこちら



オバマ政権に早くも危険信号が・・・

 金融危機と景気の急激な冷え込みにより、アメリカ経済は史上最大のピンチを迎えている。就任100日を待たずして、オバマ大統領にとっては早くも危険信号がともり始めたといっても過言ではない。

 世界最大の保険会社アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の2008年の最終損失はほぼ10兆円に達し、それ以前の22年間に生み出した最終利益の合計を上回ってしまった。保険会社でありながら、無謀な投機ビジネスに走ったせいで、長年かけて積み重ねてきた利益が一瞬にして帳消しになってしまい、グループ解体へと繋がったわけである。

 公的資金の注入を受け入れながら幹部社員には破格のボーナスを支給していたことが判明。AIGの経営陣のみならず、そうした杜撰な資金提供にゴーサインを出したガイトナー財務長官や救済計画を承認したオバマ大統領にまで批判の声が上がっている。

 アメリカの主要企業は2008年第4四半期に20兆円近い赤字に飲み込まれた。主要企業の最終赤字は1936年以降で初めてのこと。2009年第1四半期においても大幅な減益が避けられず、収益力の悪化が深刻な社会不安を引き起こしている。

 AIGだけではなく、最大の銀行シティーグループをはじめ、アルミのアルコア、航空機メーカーのボーイング、石油のコノコフィリップス、自動車のGM、オフィス用品のオフィス・デポなど、あらゆる業種でリーディング・カンパニーの業績悪化が相次ぐ。その結果、雇用を失うアメリカ人は毎月60万人を超え、企業も家計も赤字状態となってしまった。フードスタンプと呼ばれる食料品購入券を政府から支給される国民は3200万人に達する。

デフォルトもありえる「超大国の実態」

 実は、赤字転落の憂き目を見ているのはこうした大企業に限らない。2007年11月の時点で、アメリカ政府の抱える累積赤字は54兆ドル(約5300兆円)に達し、米会計検査院は「返済の可能性は限りなくゼロに近い」と財政破綻宣言を行っていた。

 この報告を当時のブッシュ政権は一切無視したものであるが、その後の金融恐慌で事態はさらに悪化を遂げ、自動車のビッグスリーや大手金融機関の救済で財政支出は雪だるま式に増大。2009年1月には累積赤字は65.5兆ドルにまで膨れ上がった。これは約6400兆円という天文学的な数字であり、もはやどんなに逆立ちしても返済は不可能と見られる。

 すでに国家予算の半分が借金の返済(国債の償還)に充てられているアメリカ。これではデフォルトにいつ陥っても不思議ではない。日本、中国、ロシアなどがアメリカのドルや赤字国債を買い支えているお陰で、かろうじて生き延びているというのが超大国の実態である。こうした事態を評してロシアのプーチン首相やブレーンたちは「アメリカは崩壊の瀬戸際に立っている。来年まで持たないだろう。おそらく2009年中にアメリカは6つの自治共和国に分裂する。アラスカ州はロシアに復帰することになる」とまで言い始めた。

 いくらアメリカが借金まみれとはいえ、ロシアの要人が予測するような国家分裂には到らないと思われる。しかし、それに近い深刻な危機に立ち至っていることは否定のしようながない。ホワイトハウスの国家安全保障会議でも「経済危機が深まれば、国内で暴動が多発し、治安維持のために国軍を投入するような事態もありうる」といった議論がなされているという。

 ここまでアメリカ経済がおかしくなってしまった背景にはアメリカ産業の空洞化という問題が深くかかわっている。アウトソーシングという美名の下、アメリカ企業は物を作るという生産現場を次々と海外に移転させてしまった。その結果、アメリカ国内において、働く場所が消滅してしまうという取り返しのつかない状況に陥ってしまったのである。

「一石三鳥」ともいえる解決策

 事態を改善するため、オバマ大統領は「グリーン・ニューディール政策」を掲げ、新たな公共事業を通じ最大で500万人規模の雇用を創出するというが、失業者はすでに1500万人に近づこうとしている。(次ページへ続く)



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オバマ政権に早くも危険信号が・・・

デフォルトもありえる「超大国の実態」

「一石三鳥」ともいえる解決策

オバマ流「グローバル・グリーン・ディール」はアメリカ再生の切り札となるか

肝心の国庫は空っぽ状態

オバマ政策に望みを託すヘッジファンド

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プロフィール
浜田 和幸ハマダ カズユキ

1953年鳥取県生まれ。東京外国語大学中国語科卒業。米国ジョージ・ワシントン大学大学院にて政治学博士号取得。米戦略国際問題研究所、議会調査局等を経て、現在、国際未来科学研究所代表。その国際情報収集能力には定評があり、優れた国際情勢分析で注目されている。主な著書には『「大恐慌」以後の世界』『石油の支配者』『ウォーター・マネー「水資源大国」日本の逆襲』『「国力」会議:保守の底力が日本を一流にする』『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』『ヘッジファンド―世紀末の妖怪』『たかられる大国・日本―中国とアメリカ、その驚くべき“寄生”の手口』『未来ビジネスを読む』、『ハゲタカが嗤った日―リップルウッド=新生銀行の「隠された真実」』などがある。


本記事は、投資や貯蓄などマネーを活用するための情報提供を目的としており、続きを見る


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