きょうの社説 2009年4月2日

◎日銀「北陸短観」 「底打ち」の気配は見えない
 日銀金沢支店が一日発表した三月の「北陸短観」は、目を覆いたくなるような惨状だっ た。特に北陸の製造業の業況判断指数(DI)は十二月調査のマイナス三三から一挙にマイナス六八にまで落ち込み、下落幅は実に三五ポイントに達した。北陸の景気が製造業を中心に未曽有のスピードで悪化したことを物語る。

 先行きの見通しも製造業、非製造業ともに悪化の兆しがあり、「底打ち」の気配はまっ たく見えない。景気後退が今年上半期で収束する状況にはなく、最短でも七−九月期まで長期化する可能性が強まったとみるべきではないか。

 輸出急減を背景に、北陸企業の景況感は歴史的な低水準にまで落ち込んだ。秋口には、 政府の景気対策に後押しされ、持ち直し感が台頭してくることもあり得るが、本格回復に結びつくには、越えねばならぬハードルが三つある。

 一つは、雇用人員判断DIが前回調査から大きく落ち込み、大幅な過剰を示している点 である。特に北陸の製造業のうち、雇用人員が「過剰」と答えた企業から「不足」と答えた企業は、プラス四七に達した。一年前の三月はマイナス五の不足だったから、急激な変化である。これまで慢性的な人手不足だった中小企業にまで雇用の過剰が広がっている可能性がある。雇用環境の悪化は個人消費の一段の低迷につながるだけに大きな不安材料だ。

 二つ目は、金融機関の貸出態度判断DIがより厳しくなり、貸し渋り、貸しはがしの懸 念が強くなっていることだ。金融機関の貸出態度を厳しいと感じる北陸の企業は、七期連続で増加しており、三月調査では、十二月調査のマイナス四からマイナス九まで増えた。全国平均のマイナス一三よりはましな数字とはいえ、企業の資金繰りが改善に向かう道筋は見えていない。

 三つ目は、外需の本格回復が当分は見込めそうもない点である。北陸の製造業は薄型テ レビや携帯電話の電子部品、一般機械などの輸出が主力で、輸出不振は生産低下に直結する。政府の追加経済対策に期待すると同時に、外需頼みの北陸の産業構造を少しずつでも変えていく必要がある。

◎公共事業の執行 地方も前倒しで足並みを
 自民党の日本経済再生戦略会議が打ち出した今年度予算の過去最大級の前倒し執行は、 景気対策にスピード感と厚みを持たせるうえで極めて重要である。

 党内からは「九月までの上半期で八割超の発注」と具体的な目標も出ているが、麻生太 郎首相が編成を指示した今年度第一次補正予算と合わせ、上半期に需要の大きなヤマ場をつくり、雇用創出にもつなげたい。県や各自治体も工事の早期発注や施策の前倒し執行などで、できる限り足並みをそろえてほしい。

 年度替わりに発表された各種経済指標で、企業業績の落ち込みに歯止めがかからず、雇 用情勢も悪化の一途をたどる厳しさが浮き彫りになった。急坂を滑り落ちるような状況に対応するには企業の踏ん張りだけでは限界があり、官の役割はますます重くなっている。

 国や地方の本予算は編成して終わりでなく、不況下では執行にも知恵と工夫がいる。何 より求められるのは迅速さである。前例踏襲のお役所仕事を改め、景気浮揚につながる施策については執行スピードを早めてほしい。定額給付金や高速道路料金割引などが実行された二〇〇八年度二次補正予算に続き、切れ目なく景気を刺激し続けることが大事である。

 道路特定財源の一般財源化に伴い創設された「地域活力基盤創造交付金」など、使途の 詳細が未決定の予算についても早期配分を求めたい。

 国土交通省は直轄国道の見直しで、費用対効果が十分でない十八路線の一時凍結を決め た。対象地域からは反発が出ているが、個別の判断の当否はともかく、いまは限られた財源をいかに有効に使うかが問われている。地域の活性化や経済波及効果を厳密に見極め、優先順位をつけていくことはやむを得ないだろう。

 補正予算も含めた追加経済対策は、従来のような省庁縦割りの積み上げをしていては無 駄なものが入りかねず、財政規模に見合った効果が期待できなくなる。政府が赤字国債の増発に踏み切るからには、役所の利害にとらわれず、メニューを厳選する必要がある。