コラム

2009年04月01日号

【検察と政治】
小沢一郎民主党代表の31日の記者会見、「検察捜査」についての本誌編集長の感想


●小沢氏の検察捜査に関する見解
 民主党の小沢一郎代表は31日の記者会見で、西松建設の違法献金事件をめぐる自らの進退について「次期衆院選がいつか分からないのに返答しようがない」と述べた。
 また、公設第一秘書兼政治資金団体陸山会の会計責任者に関する検察捜査について次のように語った。
「【検察捜査】国民に強制力を持っている機関は、権力の行使に慎重でなければならない。問題になっている政治団体から、自民党議員が献金を受けていることは聞いている。あとは政府、捜査当局の判断だ。」

●検察当局の説明
【谷川次席検事】支報告書へ収の虚偽記載は、国民を欺いて政治的判断をゆがめるものだ。
 政治資金規正法は、政治とカネを国民の不断の監視と批判の下に置き、議会制民主主義の根幹を成す。支報告書へ収の虚偽記載は、国民を欺いて政治的判断をゆがめるものだ。
 ダミーの政治団体を使って、長年にわたり特定の建設業者から多額の寄付を受けてきた事実を国民の目から覆い隠した。規正法の趣旨に照らして、看過できない重大悪質な事案と判断した。

【佐久間特捜部長】我々は政治的意図をもってそうさすることはありえない
 今回の件は西松建設の不正資金を捜査する中で浮上した。捜査の常道に従って捜査し、たまたまこの時期の立件になった。
 重大性、悪質性を考えると、衆院選が秋までにあると考えても放置することはできないと判断した。今月末で時効が完成する部分も(理由の一つに)あった。
 (同様に献金を受けているほかの政治家については)捜査すべきものは捜査するとしか言えない。われわれが政治的意図をもって捜査することはあり得ない。
 小沢氏の聴取についてはコメントできない。
 事件の詳細については公判まで言えない。(公判前の訴訟書類の公開を禁じた)刑事訴訟法に従ったものだ。この時点で国民を満足させる説明はできない。逮捕状の請求や、公判で裁判所のチェックを受ける。そこで説明するのがわれわれの仕事だ。

●本誌編集長が斬る
 私は東京地検特捜部は慎重に捜査したと評価している。特捜部は「今回の件は西松建設の不正資金を捜査する中で浮上した。捜査の常道に従って捜査し、たまたまこの時期の立件になった。」と言っている。いつ浮上したか、どんな捜査の常道に従って捜査したか、は明らかにしていないが、検察側として現段階で可能な限りの説明をしたと評価する。後は検事総長らの指示、了承がなければできない。検察はこの事件の場合、3庁(最高検、東京高検、東京地検)一体が原則であるからだ。

 小沢氏の言い分「権力の行使に慎重でなければならない。」は正論だが、東京地検特捜部のどこが、権力の行使に慎重でなかったのか、少なくとも私には理解できない。
小沢氏の言っておられるのは、防御側から見た論理、こう特捜部が捉えていれば事件にならなかったという側面の主張にすぎない。

 検察側、防御側はともに裁判所のチェックを受けなければ普遍性が出てこないのである。

 いうまでもないが、捕まえる方と捕まる方では百八十度言い分が違う。
 とはいっても、検察は刑事司法の要、当然、厳正公平、不偏不党でなければならない。私はこの50年、検察独自捜査をみてきたが、例外を除き、概ね「公益の代表」、としての役割を果たしてきたと評価している。

 小沢氏は「本件捜査ついて『検察は権力の行使に慎重でなければならないのに、ここが慎重とはいえない』『ここが厳正公平とはいえない』という根拠を示していない。
国民の多くは検察が起訴した人を無罪と主張する小沢氏とその続投を許す民主党に不安を抱いている。検察に対し何をやろうとしているか、が必ずしもはっきりしていないからだ。

 検察に対しても法務大臣を通してだが、指揮権を持つ内閣総理大臣候補として国民に信を問おうとするには『こんな慎重さを欠く検察ではダメ、民主党内閣はこういう慎重な検察に改める』とはっきり国民に示すべきだ。
起訴した検察側の主張には一応の論理性が感じられるが、小沢氏の本件起訴に関する限りだが、『秘書無罪』に論理性が感じられないのは残念でならない。

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