ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン愛媛> 記事

企画特集

【四国医新】

孤立防止へ連携探る(2)

2009年04月02日

写真

男性患者の家族と話す三宅敬二郎医師(左)。男性の使う点滴は帽子掛けにつるされている=高松市内

◇「地域が病院」 の在宅診療

  「熱はどう?」。3月中旬、高松市内のマンションで、三宅敬二郎医師(53) はいつも通りの落ち着いた声で男性(71) に語りかけた。玄関にスロープ、奥の部屋に電動式ベッド。そばに車いすが置いてある。

  男性は2年前、交通事故で大けがをして寝たきりになった。栄養は胃に通したチューブから直接とっている。高熱が出ると肺炎につながりやすい。この日も少し熱があり点滴を施した。

  三宅医師は高松市内で在宅診療専門の「敬二郎クリニック」 を営む。血圧測定機や聴診器を入れたバッグを手に、24時間患者宅に駆け付ける。

  妻(71) と長女(40) と暮らす男性は、ショートステイも利用しながら在宅介護を受けている。妻は「週1回でも病院に連れて行くのは大変。先生が来てくれるけん、家で介護できる」 。長女も「父は家が好きな人やけん」 と笑顔を見せる。

  三宅医師は、家族の不安を和らげ、意思疎通を助けるのも大切な仕事と考えている。患者は約50人、平均年齢は80歳ほどだ。急な連絡も入るため携帯電話を離さない。

  大腸がんを患う別の男性(79) 宅には週3回行く。看護師やリハビリ担当の理学療法士も来る。三宅医師は「病院、施設、在宅医療という選択肢が大切だ。在宅は地域が病院みたいなもの。支える医師が増えないと地域医療は崩壊する」 と話す。
                      ◇

  膨張する医療費。国は入院日数を短縮化し、療養病床の大幅削減を決めた。たんの吸引や胃から直接栄養をとる胃ろうなどの「医療ケア」 が必要な患者も退院を迫られる。だが四国の介護施設は定員の9割が埋まる。24時間往診が可能とされる「在宅療養支援診療所」 は愛媛169、徳島133、香川114、高知40カ所で、在宅診療の態勢も十分ではない。
                       ◇

  最近「介護予防」への関心が高まっている。愛媛県四国中央市豊岡町地区の「いきいき教室」 では、高齢者が一緒に体力測定をしたりボールを使って運動をしたりする。すでに6年目。認知症の進行が遅くなった人もいるという。

  旧伊予三島市の保健師宮内涼子さん(58) =現四国中央市救急医療対策室長=が受けた認知症の相談がきっかけだ。03年度に愛媛大などと行ったアンケートでは同地区など2地区の65歳以上641人のうち183人が超早期認知症だった。宮内さんは「早期予防の大切さを確信した」 。
                       ◇

  高齢者の孤立化を避けなければならない。医療の安全弁を確立するため、医師や行政などと「家族」 、そして「地域」 の連携が一歩一歩進む。

PR情報
朝日新聞購読のご案内

ここから広告です

広告終わり

マイタウン地域情報

ここから広告です

広告終わり