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開業医の「オープン化も」

2009年04月02日

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広島大学医学部長 河野修興さんに聞く

 地域の大学の医師派遣機能が弱まっている。県内で唯一、医師が輩出する広島大学の医学部長兼学長特命地域医療対策室長の河野修興(のぶ・おき)さん(56)に、医療崩壊の実態と地域医療のあり方について聞いた。(辻外記子)

 ▽▽医療崩壊はどんな形で現れていますか。

 80年代に始まった医療費削減政策のもと、多くの病院が赤字を抱え、医師は絶対的に不足している。中でも勤務医は開業などの理由で退職が増え、残る人は過重労働をしています。
 「24時間いつでも診るのは当然」という患者側の医療への過度な期待が「崩壊」への大きな要因です。また04年に初期臨床研修制度が導入され、新卒医師が2年間、地域に出なかったために医師の労働環境が急に悪化し、勤務医の退職がすすんだ。新卒医師は都市圏に集中し、地方の研修医が減りました。

 ▽▽大学はどんな役割を担ってきたのですか。

 医療は社会保障。困った時の支えとして日本には国民皆保険制度があります。医師が倒れた時どうするか。大学は研究中の大学院生の医師を病院に派遣できるのです。大学医局は医師の互助組織として、人事機能を果たしてきた。だが大学自体に医師が残らず、地域の病院への派遣が年々困難になっています。

 ▽▽どの診療科が深刻なのでしょうか。

 まず救急。次に麻酔科、産婦人科、小児科。目立ちませんが外科。広大の場合、10年前の入局数は25人ほどでしたが今は10人ほど。数年後は救急に人を出せなくなるのではと心配です。20年前に50人以上入局者がいた内科は今30人以下。美容整形や皮膚科が増える傾向です。

 ▽▽このままではどうなると予測されますか。

 医師は危険を伴う医療を避け、基礎医学を学ぶ研究者も激減します。バイオ産業が衰退し国の力が弱くなるでしょう。うつ病や自殺者が増え、医療への国民の不満が増すでしょう。

 ▽▽再建への方策は。

 第一に国策として医療費を増やす。一定の能力がある開業医が公的病院で診察する「オープン化」を実現させる。総合医や専門医などの専門医制度を整え、給与などに反映させる。患者の窓口負担を軽減し、一方でコンビニ受診の抑制を図ることが重要でしょう。

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