
生まれ |
非公開 |
子供の頃の夢 |
通訳 |
クラブ活動(中学校) |
音楽部 |
働いている地域 |
神奈川県 |
出身地 |
東京都 |
仕事内容 |
アニメやゲームの歌を歌う |
自己紹介 |
マイペースで楽観主義。でも自分のこだわりの部分に関しては頑固(がんこ)で融通(ゆうずう)がきかない。何に対しても興味をもって楽しむように心がけている。 |

※このページに書いてある内容は取材日(2007年03月09日)時点のものです


アニメ歌手は、アニメに使われる曲を歌うことはもちろん、ゲームで用いられる曲を歌うこともよくあります。他にも、ライブを行ったり、CDを作ったり、時にはアニメやゲームの制作自体に関わる事もありますが、仕事のほとんどは「歌う事」です。曲を自分で作る事もありますし、アニメや音楽の制作会社が作詞家や作曲家の方と作った曲を歌う事もあります。一口にアニメと言っても、童話のようなものもあれば、学校が舞台の話もありますし、その内容はさまざまです。だから、アニメ歌手も、どんなアニメの歌でも歌うわけではなくて、それぞれのアニメ歌手に合ったアニメの歌を歌わせてもらうことになります。アニメ歌手が歌う曲の雰囲気とアニメ作品の雰囲気がぴったり合う事が大切なんですよ。

アニメで用いられる曲も、CDに収録する曲も、歌の録音はスタジオで行います。曲にもよりますが曲を作り始めてから録音して曲が完成するまでに大体2週間くらいかかります。でも、私は2週間ずっとスタジオにいるわけではなくて、歌を録音してもらう1日だけスタジオに行く場合がほとんどです。それまでの間は、アニメ作品を理解するために資料を読んだり、歌う練習をしているんですよ。アニメの曲の多くは、主なメロディー以外にコーラスがあります。コーラスというのは合唱という意味ですが、私の場合は他の人がコーラスを歌うのではなく、メロディーもコーラスも全部自分で歌っています。もちろん一度に一人分の声しか出ないので、何回にも分けてそれぞれのパートの録音を行い、後にコンピューターを使って一度に歌っているように纏めてもらいます。何人分もの声が重なる事によって一人で歌う場合には出せない、ふわーっとした雰囲気になるんですよ。でも何回も歌うので意外と体力が必要なのです。

歌手の仕事は体調管理がとても大切だと思っています。歌手である以上、うまく歌う事はもちろん大切なのですが、もし体調管理をサボって風邪を引いてしまったら思うように声が出なくなって、うまく歌うことができなくなってしまいます。昔、ゲームに用いる曲の歌を録音してもらう時に、インフルエンザにかかって声が出せなくなってしまった事があったんです。録音してもらう日を別の日に変えてもらったんですが、結局、完全に治った状態で歌うことができなかったし、日を変更してもらったので、録音に関わる人や、その曲の完成を待っているゲームを作る人など、多くの人に迷惑をかけてしまいました。このことがあってからこれまで以上に体調管理に気をつけるようになりました。
私は子どもの頃からアニメやゲームが大好きだったので、いつも好きなアニメの歌を歌っていました。そのまま歌う事が趣味になり、大学に通っている時には、知り合いの紹介でゲームやアニメの主題歌を歌う仕事を何回かやらせてもらいました。でも、それだけで暮していけるほどの仕事は無くて、大学を卒業した後は一度普通の会社に就職したんです。でもその会社では、歌うどころか話をする機会もあまり無い仕事で、歌う能力がどんどん衰えてしまったんです。その時、自分の得意な事が衰えていく事にすごく不安を感じました。でも逆に「私は歌うことがとても好きなんだ」と気付いて歌手になろうと決心しました。

心を込めて歌うためには、歌うときにがんばることも大切ですが、アニメやゲームの作品自体を理解する事も大切だと思っています。作品を理解するために、私は作品に関する資料をたくさん読み、その作品の原作があればそれも読むようにしています。そうする事で「ヒロインはこんな気持ちだったのかなぁ」とかその作品についていろいろと考えられるようになるんです。そうやって、他の誰よりも自分がその作品の一番のファンになろうと思って仕事をしています。私がアニメを見る側の立場だったら、その作品の事が心から好きな人にアニメを作って欲しいんですよ。その作品に愛情を持って歌う、その作品が好きという気持ちを前面に出して歌うということが大切だと思っています。

仕事をしていて一番嬉しい瞬間は、歌を聴いた人が歌に対する私の気持ちを感じてくれた時です。私の歌は独立したひとつの歌ではなくて、アニメやゲームの一部分だと思っています。だから、歌う時には何よりも作品の雰囲気に自分の歌がぴったり合うように心がけて歌っています。だから、そのアニメやゲームを好きになった人が「オープニングの曲、アニメにすっごい合ってました!」と言ってもらった時は、私の想いが通じたのだと感じて本当に嬉しかったです。そうやって、アニメやゲームを好きになった方が、私や、私の歌う歌を好きになってくれたことを知ったときは、がんばって良かったなぁと思います。
私はどちらかというとおとなしい子供だったと思います。木登りや鬼ごっこもしましたが、小さい頃からアニメを見たり弟と一緒にゲームをしたりもしていました。あがり症で人前に出るのがすごく苦手だったので、今考えたらアニメ歌手の仕事とは縁遠い子供だったように思います。学校ではあまり目立ちたくなかったので、いつも目立つ子の陰に隠れていました。でも、中学校の時に音楽部に入って、何度も演技をしたり歌を歌っているうちに、だんだんと人前に出ることに慣れてきました。上級生になって下級生を引っ張っていかなくてはいけない立場になると、なんとかリーダー役も務めることができるようになりました。がんばっているうちに、苦手だった事にも慣れて克服できたんですね。

好きな事を続けられるのは本当に幸せな事だと思います。でも、本当に好きな事は簡単に見つかるとは限りませんし、好きな事でも、仕事にできるくらい上手になるのは簡単ではありません。私もそうでしたが、子供の頃から夢に向かって一直線という人ばかりじゃありません。色々なことをやってみて、その経験を自分の中に吸収してください。そうやって好きな事を増やしていった方が人生は豊かになると思うんです。就職する時など、1つ何かを決めなければいけない時がやって来るので、それまでにたくさんの選択肢を持つ事が大切だと思います。
取材・原稿作成:倉田・五木田(インターンスタッフ)