日銀の企業短期経済観測調査(短観)で大企業・製造業の景況感が過去最悪になった。政府・日銀は危機の深刻さを真正面から受け止めて、従来の発想にとらわれない大胆な対応策を検討すべきだ。
日銀短観は景気の先行きについて、企業の見方を集計したものだ。生産水準など現実の経済活動を示す数字ではなく、企業が感じる体感温度といっていい。とはいえ、いずれ設備投資や雇用などに跳ね返る。
調査によると、業況が「良い」とみた企業割合から「悪い」とみた企業割合を引いた差で示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でマイナス五八と前回十二月調査に比べて三四ポイント悪化し、水準でも悪化幅でも過去最悪になった。
とりわけ自動車はマイナス九二、電気機械は同六九、一般機械も同六四と日本経済をけん引してきた輸出産業が総崩れ状態である。大企業・非製造業はマイナス三一、中小企業・製造業は同五七、中小企業・非製造業も同四二と企業規模や業種を問わず、景況感の悪化が浮き彫りになった。
こうした数字について、河村建夫官房長官は「厳しい景気の状況をそのまま反映した」と論評した。だが、政府・日銀には危機を受け止める深刻さがいまひとつ伝わってこない。どこか、少し深刻な不況程度とみているような甘さが残っているのだ。
現状認識が甘ければ当然、対応策も後手に回る。昨年夏に緊急経済対策を打ち出してから、すぐ次の生活対策を迫られ、いままた本年度当初予算が成立したと思ったら、追加経済対策で補正予算の検討に追われている。
昨年九月に「ハチに刺された程度」と語った与謝野馨経済財政担当相の発言に象徴されるような当初の楽観論が尾を引いているのではないか。それでは追加対策をまとめたところで、秋にはまた追加を迫られかねない。政府・日銀は「恐慌の瀬戸際」とみるくらいの危機感で臨むべきだ。
本腰を入れて考えるなら、重要なのは政府と日銀の連携強化だ。米連邦準備制度理事会(FRB)や英イングランド銀行は一足早く、巨額の国債買い切りを決めた。日銀も国債買い切り増額に踏み切ったが、まだ足りない。
「財政と金融の合わせ技」こそが景気対策の常道であるにもかかわらず、いまの当局には連動感が感じられない。中身のある「政府・日銀一体の行動」に向けて緊急協議から始めてはどうか。
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