麻生太郎首相は31日、追加経済対策を4月中旬までにまとめるよう指示した。悪化が続く景気情勢をにらんで首相が機敏に動こうとしているのは評価していい。重要なのは中身である。効果が大きく、将来的に無駄にならない施策に重点を置いた賢い政策選択が望まれる。
麻生首相は記者会見で追加経済対策の目標について、景気の底割れ阻止、雇用確保と国民の痛み緩和、未来の成長力の強化の3つをあげた。追加経済対策の裏付けとなる補正予算の規模については「対策の内容次第で決まる」と述べるにとどめた。
自民党内ではすでに経済再生戦略や金融市場対策をまとめる動きが出ており、これらが追加経済対策のたたき台になるとみられる。
麻生首相が会見で指摘したように、まず優先されるべきは景気の落ち込みに歯止めをかけ、雇用の崩壊を防ぐことだ。
雇用調整助成金の強化でワークシェアリングを促すとともに失業者の就労を支援することは極めて重要だ。2月の失業率は4.4%に上昇したが、雇用の悪化が続けば消費の減少を通じて景気をさらに冷え込ませかねない。企業の資金繰りを支える施策の強化も、倒産増加に伴う景気悪化を防ぐうえで意味がある。
賢い政策選択がとりわけ求められるのは落ち込んだ需要の刺激策だ。
麻生首相は会見で、贈与税の軽減策について「個人の金融資産をどう活用するかは極めて重要」と述べ、前向きに検討する意向を示した。時限的に贈与を促す減税は一考に値する。年度中の税制改正には慎重な声もあるが、有効な税制活用案があれば、実施をためらうべきでない。
首相は太陽光発電や環境にやさしい自動車の普及を後押しする政策にも触れた。低炭素社会への転換を促すと同時に、需要促進にもつながる施策は思い切って導入してもいい。
気をつけなければならないのは、環境保護や地域再生の名の下で対策に旧来型の公共事業が忍び込むことだ。地域が自由に使える給付金の増額も検討されているが、長期的な地域活性化につながる施策に使われなければばらまきになりかねない。
議論が分かれそうなのは、自民党が検討している銀行等保有株式取得機構などによる市場からの株式買い取り案だ。世界的不況の中で、急激な株価下落に伴う信用収縮を防ぐ「最後の手段」を用意しておく意味はある。ただ、株価形成をゆがめかねない劇薬だけに、極力使わずにすむよう、銀行の資本強化などほかの施策を強化することが望ましい。